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blue spring  作者: スカフィ
14/20

☆14☆

暗闇の中からゆっくりと明かりが差してくる…。


「…………う…うう」



「気がついた?拓郎君…今ね、御飯作ってるから待ってて…」


俺はまだ痺れが残ってる身体を動かそうとしたが、思うように動かない。


「……俺は…気を失ってたのか…?」


「…ごめんね。手荒な事して…

でもこうしなきゃ女のあたしには押さえる事無理だもの…」


「…ん?…あれ!?」


よくみるとロープで手足を縛られ、鎖で繋がられていた。


「おいっ…!美代子!これはどういう事だ!?」


大声で美代子に怒鳴りつけた…。


「決まってるじゃない。逃げられない様にしたまでよ。当然の事でしょ?

あなたをここまで呼ぶ為にどうしようかと考えてたけど、

けんじ君の携帯で簡単にワナにハマッてくれたんだもの。

けんじ君には感謝しなきゃね…」


「いいからこれを解けよっ!美代子!」


「はぁ〜い。出来たわよ〜♪拓郎君の好きな焼肉よー。うふ」


美代子は御膳にたくさんの料理を乗せて持って来た。


「おかわりはいくらでもあるからどんどん食べてよ!

もちろん、あたしが食べさせてあげるからねー」


「これを解けよ!」


まるで俺の声が聞こえないかのように美代子は箸を取る。


「はい、あ〜ん…」


美代子は御飯と肉を一緒に俺の口へ運んで来た。


ムカついてる俺は それを拒んだ…。

それでも美代子は無理矢理にそれを俺の口へねじ込んだ。


「うぐぐぅ…ぐぅ」


「ほらぁ、ちゃんと食べなきゃ…成長期なんだからね…」


続けて次の一口分箸を持って来る。


「いらない…!」


「だめよ…」


「食欲がないっ!!」


俺がそう言うと美代子は箸を置き、

素手でごはんと肉を取り俺の口へねじ込んだ…!


「うぅぅっ…ぐうぅ」


「おいしい?おいしいよね?」


美代子はやさしい口調で問い続ける。


「…う…ぐぐ…」


「かわいい!拓郎くぅん…きゃはは…」


こうして俺は無理やり全部食わされた。




それからあっという間に翌日となった。


美代子は俺をここに監禁してるにも関わらず、

平気な顔をして学校に行っていなかった。


(今、何時だろう?)


俺は部屋を見渡した…。

一応、鎖で繋がれ体中ロープで縛られてるとはいえ、

なんとか移動はできる状態なのでイモ虫みたいに動きながら時計を探した…。


(あった…。…昼12時かぁ…丸一日は経ってるな…親は心配してんだろうなぁ…はあ…)


…一応、俺なりに大声を出したり、わざと大きな音をたてたりして

隣の人や近所の人達に聞こえる様にしたが何も反応がない…。


…っていうかこのアパートの隣で工事が始まっていて、俺の声なんてそこで揉み消されてるようだった。



カーン…カーン…


 ガチャッ。


「ただいまぁー…。あーもう!隣の工事がうるさいわよ!ふぅ…。

あ・そうそう!学校でけんじ君に続いて拓郎君まで行方不明になって大騒動よ…

これでバレるのも時間の問題かしら?」


「………。」


「あ・もう少し待って…今から口のガムテープ取ってあげるからさ。」


そういって美代子は俺の口にしてたガムテームをゆっくり剥がしたと思うなり“ぶちゅっ”とキスをした!


びっくりした俺は離れようとしたが体が言う事をきくはずもなく為すがままだった…!



「ねえ…今日何で早く学校終わったと思う?

さっきも話したようにあなたとそこにいるけんじ君がいなくなったから

緊急集会やら何たらで学校にマスコミが集まり始めたからなの…。

もう大変なのよ…!でも早く帰れて良かった!あたしまで学校に来なくなったらヤバイよね…?」


「…でも、いずれバレるぜ…。」


「そうね…そうかもね。時間の問題ね。どっちが先かって事よね…?」


「どっち!?−って何が?」


俺がそう聞くと美代子は立ち上がり


「…ねぇ!そろそろお昼にしようか!そうしよ…。今つくるね」


「…美代子…お前…ここで姉さんと暮らしてんじゃないのか?」


「よくわかるわね?今は地方に仕事で行ってるの…だからしばらくはいないわよ。」


「……お前…俺をどうするつもりよ…」


「……どうって?」


「…だから…」



トントントン…



「俺を殺すつもりなのか…!?」


俺は大声で美代子に向かって叫んだ。


…ジュゥゥゥゥ…


美代子は俺の大声など気にせずに肉と野菜を炒めていた…。


「聞いてるのか!俺を殺すつもりなのかと聞いてるんだよ!!」


俺はまたありったけの声量で叫んだ…。

美代子は無表情で振り向くと


「そんな大声出したって誰も来ないわよ…。あ・御飯は大盛り?」


「どういう事だよ!?」


「…あのねー、このアパート数日後には取り壊されるのよ…。だからもう誰も住んでないの…」


「俺達だけ!?」


美代子は御飯やおかずを運んで来た。


「そ。たくさん食べてよー。時間もないんだし…。」


「時間って…?」


「…ここが壊される前にあたし達死ぬの…」

「死ぬ?」


「そうよ。だってこのまま生きててもしょうがないでしょ?あたし一人で死ぬのはイヤよー。」


「待てよ!ホンキなのか!?」


「…本気よ。前から決めてた事なの…。はい、あ〜んして…」


「…いらない…」


「もういい加減にしてよ!あたしがどんだけ一生懸命これ作ったと思ってんの!このままじゃ美代子が可哀相よ…!」


「死ぬって聞いて食欲あるかよ!」


「いいえ!絶対食べてもらうわ!美代子の為にも…」


「美代子はお前だろ!」


「………。」


「…な…何だよっ!」


「ふふ…あはははは…」


突然、美代子は笑い出すので


俺はあっけにとられていた…。



「あはははは…」


「…?…美代子…」


「ごめん…ごめんね…拓郎君…うひひ…あたし…美代子じゃないの…あははは…」


「…?…え?」


「…あたし…美代子の姉の…美佐子なの」

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