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blue spring  作者: スカフィ
13/20

☆13☆

(これが美代子の部屋…?)


俺の鼓動は高まっていく。


(けんじ!どこにいるんだ…)


美代子の部屋や美代子のお姉さんの部屋を探したが、けんじの姿がない…。


(そうだ…電話をしてみよう…)


俺はけんじの携帯へ電話したが、出る気配がない。

…もしかすると気絶でもしてるんじゃないかと不安になり、あせる。


(ん?何か音がするぞ…)


耳を澄ますと確かに

“ごぉぉーっ”って地面に少し響く重い音がした…。


(何の音だ!?こっちからか?)


台所に行くと俺は「ぎょっ」とした…。


そこには大きな冷蔵庫が…。



「な・なんでこんなでかい冷蔵庫が…」




「あたしん家が肉屋してるからよ…」


後ろから声がした…。

俺はゆっくりと振り返る…。

美代子が立っていた…。


「実家で古くなった冷蔵庫を新しいのに換える時あたしがもらったの…。

見てみて…ここに普段使ってる冷蔵庫があるの…」


美代子はスタスタと小さい冷蔵庫の元へ歩いた…。

そしてドアを開けコーラを取り出した…。


「拓郎君も飲む?」


「…な・なんでお前…学校にいるんじゃなかったのか…?」


美代子はコーラをおいしそうにグビグビ飲み始めた。


「ぷはーっ!やっぱコーラは最高だわ!

これを一気に飲む快感はやめられないったらありゃしない!」


「…聞いてるのか?」


「わかってるわよ。もう一度けんじ君に電話をかけてみてよ。」


「は!?なんで?」


「いいから!ヴェッ〜!」


美代子はげっぷしながらどなってた…。


「…わかったよ」


“ピッ”


“プルルル…”


「え!?」


「うふふふ…」


笑いながら美代子はけんじの携帯をポケットから取り出した…。


「あのメールはあたしが送ったの…うふ」


「……じゃあ…けんじは?あいつはどこにいる?美代子!」


「あなたのうしろよ…うしろ…」


「え…!?」



俺は一瞬固まった。

そしてゆっくりと振り返る。


(俺のうしろ?…いや、そんなはずはない…俺のうしろは冷蔵庫だ…

そんなトコ入ったら…俺達人間は死んでしまう…)




「………はっ…はあっ」


俺は少しずつ体の角度を変えていく。

そして同時に体が震え出して来てるのがわかる…。


「……はあ…はあ…」


息だって苦しい…頭の中まで脈の振動が伝わる。

俺はちょうど巨大な冷蔵庫と向き合う形になった。


「…くく…何してんの?早く開けなさいよ!」


美代子が笑いをこらえながら怒鳴ってる…。


俺はそっとレバーを掴み、引っ張った。




「うわああぁぁぁ〜っ!!!!!」




俺はその場に腰を抜かした。


「けんじ……?」


冷蔵庫の中でうっすらと目を開けながら

座ってるとも立ってるとも言えない微妙な体勢で…

まるで彼だけが時間が止まったかのように

彼は冷たく固まっていた。


「言っとくけど、あたしがけんじ君を殺したんじゃないわよ。

彼は自分で勝手に死んだの…」


「…ウソだ!お前が殺ったんだろ!?」


俺は反射的に叫んでいた。


「違うわよ。だいたい勝手に人の家に上がって

人の部屋あさって勝手に死んで迷惑してるのはこっちよ!」


美代子は冷静に溜息混じりに言い返す。


「…そ・そんな事信じられない!」


「とにかく…状況を話するから聞いて−…






『ホラッ!俺を警察に突きだせよ…。

包丁なんかしまってさ。俺は乱暴なんかしないよ』


そう言ったかと思うとけんじ君あたしの包丁が恐かったのか、

あたしから包丁をスキを見て奪おうとしたの…


「ちょっ…やめてよ!痛い…!痛い!」


『うるさい!俺を殺す気だろ!?』


けんじ君はあたしから包丁を奪い、

あたしを掴んでこの冷蔵庫に入れようとしたの…!

あたしは必死に抵抗したわ……だって仮にも不法侵入した男よ!

何されるかわからない…腕を思い切り振り払ったの…

そしたら…あたしはバランスを崩して、

その拍子にけんじ君は自分が冷蔵庫の中に入ったの…

あたしはそのまま倒れ気を失ったの……。



…−気が付いた時には朝になっていて…

あたしはてっきりけんじ君は逃げたとばかり思ってたの…。

でも、おかしいの…靴が片方落ちてたの…冷蔵庫の前に…。

これってまさか…と思って冷蔵庫を開けたら…けんじ君がこの姿に…。

きっと、彼が中に入った振動でドアも閉まったのね…

中からは開けられない旧式タイプの冷蔵庫だし…

冷蔵庫って言っても中の温度は−24℃だし…

あたしは気失ってて気づかなかった…。だから死んだのよ。

事故なのよ!あたしは不法侵入した男を正当防衛しただけなのよ…!」


美代子は震えた声でそう言った…。


「…じ、じゃあなんで…すぐに警察に通報しなかったんだ…

何故このままの状態に…」


美代子は俺を見た…。


「言えるワケないじゃない…だってまだ…まだ復讐は終わってないんだもの…!

やっとその時が来たのに…」


「復讐…?」


美代子はゆっくり微笑んでいた…。


「…拓郎君…好きよ…」


そう言って美代子は俺に近づいた…右手には何かを持っていた…


「お・おい…!うぎゃあぁぁぁ〜っ!!」


俺は体に強いシビレを感じて一気に記憶が無くなった…。


「ごめんね…これ、スタンガンなの…」


薄れて行く意識に聞こえた美代子の言葉だった…。


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