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8話



 「……どうした、答えられない程の強制力を持った術士には思えなかったが」

 後ろの魔はかなりの実力者で召喚にも莫大な魔を必要とする上にこうして人の世に留まらせ続けるのにもかなりの魔を消費する。

 「まぁ、それなりにマズイことにも手、出してるみたいだしな」

 一般的に美しい造りをしている為に、どのような表情も様になるのだが今の感情を一言にすれば、

 「それはよっぽどのことだということか」

 歪み、そのもの。


 「俺達を召喚し続けて魔力の枯渇がない奴なんて化け物だ」

 それをミネルヴァは平然とやってのけたから考えてこなかったが確かに。

 「一応は上級だしな」

 「一応じゃないし、俺達の力は特級ものだぞ」

 それゆえに引き留めるのは難しく、必要な時に呼び出すのが基本だ。


 「それで?あの子に危害を加えるのはアイツの命令か?」


 唐突に二人の間にヒヤリとした冷気が走る。

 「そんなに熱を上げてるのか」

 「そんな冗談じゃ誤魔化される気にもならん。なんだ、それともお前ともあろうものが、あやつごときに後れを取ったか?」

 契約主同士の制約は力の天秤の傾きによる……ようは押し負けたのかという皮肉。

 「……あんな外道と比べるな」

 外道、という言葉と共にギロリとこちらを睨む。

 警戒はしていたがコイツがここまで嫌悪を露わにするのは珍しい。

 総じて長い時を生きる魔は気が長い。

 死を知らない私達は脅威にさらされることも無ければ、多少のことなら許せる。

 かえって、歓迎するかもしれない。

 彼らは皆、退屈しているから。

 

 「雛を守る親鳥のようだな」


 あの女に本能を利用されて良いように使われているだけではないか、と目の前の男はは不服そうだが、私も暇を持て余した口だ。

 そして、現状に満足している。

 「その通りかもしれんが、そんな経験も一度くらいは面白い」

 「俺にはよく分からん」

 私は昔から酔狂が過ぎるとも言われている。

 「では、それが普通というものなのだろう」

 彼は私のことを500年もの間、人間界に縛られた上にその息子にまで縛られていると思っているのだろう。

 ようは、私の為に誰かと契約したと考えている。

 なら、今の私を見てどう思うだろうか。

 「こき使われてるのかも、なんて思った俺が馬鹿だった」

 「そうだろうね?」

 これで、契約破棄ができれば穏便に事が済むだろう。

 ―――契約は、守られなくてはならない

 力の上下があり、主従関係があろうとも互いが平等でなければならない。

 つまりは彼とその誰かの利害の一致が無ければ無効とすることができる筈だ。

 進んで私とやり合おうなんて考える相手ではないと確信している。

 いつだって、私には甘い男だ。


 「だって、こんなにも異端だとは思わねぇじゃんか、自分のい」


 「ウピスから離れろ」

 和解目前と言うところに目に入ったのは先程山を下って行った筈の少年。

 彼の周りには濃い魔が渦巻いていた。




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