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28話



 望んでいなかった答えに足元が崩れおちる気がした。

 それでは、何か。

 長い間、彼は私に嘘をつき続けていたということか。

 長い間、私は同僚達の恨みに見て見ぬふりをして穏やかな日々を望み、享受してきた訳か。

 「そっか」

 知らなかった、というのは嘘だろう。

 それだけのことはしているのだから。

 それをひた隠しにしただろう人を思う。

 別にアンタが悪い訳じゃない。

 だから、謝罪の言葉はいらない。

 許しが欲しくて言ってるんじゃないのも知っている。

 ただ、引っかかりが現実になっただけだ。




 「悪趣味な」




 俺の前を漂い、誘導する火の玉に吐き捨てる。

 「最初から誘導するならするで別の方法を選べ」

 火の玉の意図に気付いたのはつい先程だ。

 あまりにもしつこい追い立てに数度望まぬ道に入ったが、そこに障害物は無く。

 足を止め、まじまじと観察したソレは誰かを彷彿とさせるアイスブルー。

 思わず零す悪態に額を小突かれたのは二回や三回では無い。

 『出来るならやっている』と抗議しているような気がする。

 おそらく、何か理由があるのだろう。

 「気に食わないのはお互い様なんだろうな」

 俺を案内するという事態に焦りは募る。


 光が見えたのは曲がった角を数えるのをやめ、方向が分からなくなってしばらくのことだった。

 青い炎が照らす廊下にオレンジが混ざる。

 その中でふわり、と揺れる白衣の裾が見えた。

 ゆらり、鋭く光る落雷に照らされて影が揺らぐ。

 体勢を崩し、倒れ込んだウピスを見て、心臓が痛いほどに体を打つ。

 ひらり、とゆっくりとした動きに合わせて白衣の裾が揺れる。

 立ち上がりはしたものの、その様子は誰かが支えなければ不安定で危なっかしい。

 ふわり、と垂らした髪が流れる。

 モスグリーンの瞳と確かに目が合った。


 「――――――」


 あと数メートル、口の動く様子がよ認める距離。

 それなのに光を塞ぐ壁が出来ていく。

 走りっぱなしで限界を迎えている足にさらに鞭を打っても、それを上回るスピードで壁は織られていった。

 振り上げた腕を力の限り壁に振り下ろすが、柔らかな弾力が拳を拒絶する。

 「くそ!何でだよ!」

 いつかは自分を守るために蒔かれたものの完成品が、皮肉にも今、障害として目の前に現れた。







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