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24話

※マナ視点

☆ウピス視点


 ☆

 「教えた奴はいない筈だが」

 悪さの為に真似する馬鹿者がいないと言いきれない。

 自分と渡り合う力を持つ兄にしか伝えていなかった。

 しかもそれが全てではない。

 ……あれだけ嫌っていた人物に彼が知っていることを話したりするだろうか?

 それならば、誰が?



 ※

 「どうしてそんなことが言えるんだ……!」

 渦を巻く感情が、まだぶつけ足りない、砕いてしまいたいと体内でのたうちまわる。

 「たく、どうしてお前は細部まで聞きたがる?それとも何だ、テメーはアイツに首ったけって訳か」

 右から左へと流れた音を、もう一度飲み込む。

 体中に音が走り抜け、音が言葉へと変換され、カチリとどこかのスイッチを押した。

 急速に世界が眩しい程の色を放ちだし、理解する。

 「そうですよ、俺は、好きだから」

 掴んだままの襟をこちらに引き寄せ、睨みつけた。

 「ずっと側にいたいと、失いたくないと―――」

 言い淀む、その言葉さえ押さえられずに零れ落ちる。

 「共に生きていたいと、望んでしまうんだ」

 声に出して、ようやく自分の気持ちを体の中に収め、手を下ろす。

 「よくもまぁ、シスコンの俺にそんなこと言ってくれたな」

 襟首を掴まれ、引き摺られる。

 大人しくそのままでいると、所長は急に立ち止る。


 「いつまで引き摺られているつもりだ」


 冷ややかな声に慌てて立ち上がり自分の足で歩く。

 目の前にはこの研究室にしては珍しい鍵付きのラボ。

 どうやら、そこが目的地らしい。

 中に入っていくその人に続き、鍵をかける。


 「これから話す内容は他言無用だ」


 言葉を発する前に始末するから、と表情は朗らかに、しかし不機嫌極まりない空気を漂わせる。

 「あいつが死ぬなんてことはあり得ない」

 自信に満ちた言葉の数々。

 いつもの実験のように話すその姿に日常の一コマを繰り広げているように錯覚してしまう。

 それでも、今し方思いを認知した相手との永遠の別れという悪夢を追い払うことができない。


 「信じてないな、お前」

 「そう言って何度ラボを木っ端微塵にしたか覚えてますか?」


 信じろというのが無理な話だ。

 「そんなこと言ったって、心臓止まってんだから仕方ねーだろ」

 「……今何つった」

 「だから、アイツの心臓は30分前に止まった」

 ―――既に死んでる奴を、どうしろってんだ。


 思わず、癖で匂いを探すと、微かではあるが感じる。

 鍵をあける動作がもどかしい。

 制止を振り払い、扉を叩きつけるように開くと後ろから何かに追われているかのように駆ける。

 「嘘だろ?」



 ☆

 「立ち直りが早いね」

 「伊達に何千年の時を生きてないからな」

 「で?答えは出たのかな?」

 師が生徒に答えを聞くような余裕の口調に、鼻で笑ってやる。

 「この子の命の方が大事でな」

 答えは目の前にあるのだから。






12/11/5 改

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