23話
ウピス視点から※印でマナ視点になります
「マナ?」
マナの腹越しに呪印の刻まれた腕がうっすらと見える。
腕の中にある確かな温もりはそよかぜで霧散しそうだ。
「僕達とその子、結構似てるんだよね」
私にとっては唐突に、それでも表情は狙ったように語り始める。
「おかげでシンクロも早い」
「……何が言いたい」
頬に伸ばされる手を震える手で掴む。
「この手を拒めなくなるってことさ」
―――彼を含む僕なら。
「もうすぐだ」
魔女でも人間でもない男に今では知る人間のいない私の過去、奪われた精神と薄れていく体。
「お前、マナを取り込む気か」
「名案でしょ?」
魔女、と言うよりは自分と同じ匂いがするのは、
「同じ土俵に上ったと言ったな」
「言ったね」
魔になったということ。
それだけじゃない、ということ。
私の過去を知る者は人間にはいない。
すなわち、始祖たる自分と同じ時間を生きた魔から情報を得た筈だ。
「誰だ」
それだけで理解したらしく、笑う。
「さぁ。ただ、君に近しい人だね……その人が僕の一部だって聞いたら、僕のこと、振り払えないかな?」
話が繋がった。
「過去と魔になる方法、それを取り込んで手に入れたんだな」
※
「所長!」
「……お前か」
振り返ったその人の元にカツカツと音を立て近寄る。
「アンタ、どういうつもりですか!?」
掴み掛られてもその首は力なく垂れたままで、その様子に万策尽きているのだと感じた。
「どうしてなんだ、いつものアンタなら首根っこ掴んででも連れ去るくらいするだろ!」
散々、叫んだ。滅多に流さない涙だって流した。
「どうして、あの人なんだ」
他にもいるじゃないか。此処にも、居るのに。
「それを、アイツは望まなかった」
俺の考えを読んだかのように答えを返す。
頭にウピスと違うゴツゴツした手が置かれる。
「大丈夫だ、アイツは戻ってくる」
12/11/5 改