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21話

※からはマナ視点です



 「君、僕が知らないと思って高括ってるでしょ」

 楽しげに笑うその男の真意は読み取れない。

 「ねぇ?せっかく二人きりなんだから、話でもしようよ」

 ふわり笑う男は先程の狂気を収め、傷付くのも気にせずこちらへやってくる。


 気の遠くなる時間で感情など抜け落ちる。


 私も、兄も、他の魔達と変わらない。

 ただ、流れに任せて、娯楽を求める。それが、長い時を得た者たちの辿り着く所。

 なのに、怖い。

 「寄るな」

 足は動かず、私の声は揺れていた。




 ※

 どうやら、足がかりを得たらしい研究員(白衣の人々、では何というか誤解を招く)達は自らの体に複数の陣を刻みこんでいった。

 精々、一人に対し二つか三つ体のどこかに刻んだようだ。


 それをあの双子は軽く飛び越す。


 「所長、アンタら幾つ目ですか」


 所長であるアポロンと副所長であるウピスが毎度のこと派手な爆発を起こし、建物を揺らすしても、周りはそれぞれの持つ陣で自身の身は確保するので「あぁ、派手にやってるな」ぐらいにしか思っていない。

 誰かの体の動きに慣れてきた俺も、此処のことが分かってきた。


 ここはどうやら研究者気質の小さな国家であること。

 此処はそんな国の中心部に数ある研究所の第3号館であるらしい。

 数字の若い順からエリートが振り分けられるらしく、此処の研究員たちの成績は中々のもので、最近の陣を刻むという新しい方法を見つけてからというものの上を追い落とさんとする勢いである、と耳にした。


 「幾つだったかな」

 「ちゃんと数えておけ、だらしがない」

 隣にいるアポロンを片割れがジトリとした目で見ながら、18個目だと答える。


 「しっかり数えて報告書を出さないと援助が得られないんだから」


 3号館の人間を養えるか養えないかの重要材料だぞ、という言葉。

 一家の長のような物言いに、現代のウピスと自分を思い出す。


 昔は、こんな風だったのか。


 遠い、とばかり思っていた存在を誰かの体の中で過ごしていく程に薄れていく。

 「俺はいないのに、な」

 縮まっていない距離を錯覚しそうになる。


 ふつり、と場面が途切れると紙屑散らかる廊下は大きなホールになっていた。


 「なぁ、お前ら、健康診断どうだったよ?」

 「何だか、かなり精密な検査でしたね」


 身長体重、身体年齢……などの諸々はピリピリした環境で行われた。


 「当然だ。私達が直々に上層部に頼んだんだから」

 いつもなら、受けない輩が多い(受ければ皆、仕事中毒でベッドに括り付けられるに違いないからである)研究員達に強制執行された裏にはウピス達の依頼があったらしい。


 「頼んだ?体の不調を訴える者がいるのですか?」

 尋ねると、少し言い淀んで、

 「……研究員の半数近くがな」

 そう言った。

 視線を揺らすその姿から、俺と同様に気が付いたのかもしれない。

 「まさか、副所長も、ですか?」

 「明日には出せるそうだ。今日はゆっくり休めと皆に伝えてくれ」

 それだけ言うと、アポロンを残して一人いなくなった。







12/11/5

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