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20話

※はマナ視点です



 「今なら私の手で殺してやってもかまわないぞ、マナの精神を返しさえすれば」

 本当であれば、今すぐにでも刺し殺してやりたい。

 「やっぱり始祖には分かるか、この魔術も」

 ――――始祖、もう何千年の時間が経っており、人間には(・・・・)知る者がいない筈の言葉。

 「お前、一体何をしたんだ」

 「お楽しみ、さ」




 「今度は何をしでかししたんですか……」

 今まで独り言としか取れなかった声がいましがた現れた二人にかけられる。

 「いやだなぁ、✗✗✗。僕らを何だと思ってるの」

 「ただ加えた力が逸れて別の器具に当たっただけだ、失敗ではない」

 「それこの間も言ってましたよね」

 いつか事故に巻き込まれて死ぬ前に遺書書いておかないと、などと呟く自分の口。

 そんな言葉から気安さを感じる―――先程からの行動からして誰かの立場にいる、という感覚がしてきた。

 「でも、結構おもしろい結果が出たよ」

 片手を差し出し、閉じ、開いた次の瞬間に現れたのは、

 「氷?」

 不思議そうな声に、にんまりと双子は笑う。

 「俺たちは失敗なんかしてないぜ?」

 「まぁ、事故と言ってしまえばそこまでだが」

 ウピスは手を裏返し、甲を差し出した。

 「陣が焼き付いて……!」

 昔、魔術は無から有を生むことはできないのが原則で、取りだすにはそれを表す陣を描かなくてはならなかったと聞いている。

 存在するものの形を変えて使用するのがタイムラグの少ない、一般的なものだったという。

 「これぞ――」




 「人間でありながら人間を超えた初めての人間」

 「今では普通のことだ」

 火の無い所から火を取りだすなんてこと、今であれば契約なしでもできる。

 動揺を見せれば新たな材料を与えることになるのだ、といい聞かせ無難な答えを返す。

 「あれ、君にしては珍しいね。動揺しすぎて聞き逃したかな」




 「人間でありながら人間を超えた初めての人間(・・)

 人間、と確かに聞いた。

 ウピスが、人間。オウムのように繰り返す中でやはり受け入れにくい。

 「これで足がかりが一つできたんじゃねー?」

 「だな。魔術の軽量化、術の安定、発動時間の短縮が確認できた」

 これで他国何て一網打尽だな、と誰かがうれしそうに語った。

 茫然とした俺一人を置いて周りは賑やかになる。

 文章が正しく聞こえない。

 聞こえているのに、頭に入ってくるのは単語ばかり。

 戦争・劣勢・新兵器・実験

 そして、

 「人間兵器」

 という非人道的な言葉。

 それを嬉しそうに語る顔、顔、顔。

 「これは、どういうことなんだ!?」

 叫んでも誰にも届かない。

 「ウピス、お前のことなんて何一つ、何一つだって俺は知らないっ」


 一番聞きたくて、一番聞いては困らせてしまうことだって分かっている。


 「俺はお前の何なんだ!」

 俺にとって、大事な人はお前だけで。

 お前が俺の世界で。

 その世界はあまりにも大きい。

 笑う彼女が遠くて、滲んで見える。

 





12/10/29 改

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