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19話

※からはマナ視点です


 「どこまで?」

 「聞くな、呑まれるぞ」

 アイツの無駄に回る頭は口とセットだ。

 一度耳を傾けたが最後、言葉の波に絡め取られる。


 「知りたいでしょう?彼女が何者なのか、今までどんな時代を生き、どんな禁忌を犯したか」


 「聞くな」

 自分の声に動揺が走っているのが分かる。

 平静を保とうとして失敗した、隠そうとした感情が表に出る。

 「彼女、自分のことは話さないから。これを逃せばもう機会は無いだろうね」

 知る筈がないと思う半分、過去を塗りつぶす方法は無い訳で。

 知らなくていいことだ、と言葉を漏らす中で、心では知らないまま(・・・・・・)で、二人で今までと同じ穏やかな時間を過ごしたかった。

 「僕は知ってるよ?」

 私の動揺を楽しんでいる癖に視線の的はマナ。

 声を聞かせまいとマナの頭を抱え込む。

 「君も知りたいんじゃない?」

 頭の中で警告音が鳴り響く。

 拒絶反応と同調して、力が零れだす。

 「君は僕と同じ眼をしている―――」

 体から溢れた力が不快物質を排除しようと矢のように男に向かう。

 突き刺さる寸前、抱きしめる体が軽くなった。


 「僕の勝ちだ」




 ※

 「ここは、どこだ?」

 いつの間にか知らない建物の中に居た。

 声をかけるのも戸惑う程に慌ただしく走り回る白衣を着た人達が行き来する廊下には紙の束が積み重なり、また所々土砂崩れが起こっている。

 踏んではまずいと思いながらも体は勝手に書類を踏ん付けながら廊下を行ったり来たりを繰り返す。

 声を掛けようにも意思と反して意味の分からない言葉を一人吐き続けて、しばらく。


 ぴたり

 空気が固まる――これは比喩でも何でもない――ぴたりと足を止め白衣達含む俺はそこらにある紙のひとつを掴み、勢いよく。破り捨てた。

 途端に吹雪が巻き起こり、壁が凍り始める。

 どうやら先程の紙は破ることで魔術を防ぐ効果があるらしい。


 吹雪が収まった頃、「またか」「今度は何をしたんだろうな」などと囁かれるなか、事が起こった(部屋)からひと組の男女が出てきた。

 「ごめんごめん、みんな無事?」

 「日頃の行いのせいで周りが物怖じしなくなった気がするな」

 金茶の髪を揃いのリボンで編んだよく似た双子に直感した。

 「…ウピス」





 力無く凭れかかるマナを支える。

 「邪魔者は消えたよ」

 冷水に浸かったかのように冷えていく指先。

 大量の矢に囲まれた男は状況をものともせず微笑む。

 「僕を殺したくてたまらないんだろうね?」

 やってみれば良いじゃないか、そう笑うのはできないことを分かっているからだ。


 「初めてだね」


 体温が失われていく体がフラッシュバックを引き起こす。

 「僕だけに感情を向けてくれる日が来るなんて」

 「向けられて喜べるなら貴様はキチガイだな」

 「たとえ憎悪としても、無関心でいられた頃よりは前進だ」

 この殺伐とした空気にあてられても笑って返すこの男を理解できない。

 「君の関心は人と関係ないところだろうから、僕の気持ちが分からなくたって仕方ないさ」

 だから、これも分からないだろう?とわざとらしく肩を落とす。


 「君になら殺されてもいいと思う僕の気持ちなんて」





12/10/29 改

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