表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/36

18話


 蒸発した水分は視界を遮る靄に変わる。



 「マナ、離れるな」

 腕の中に引き入れ、相手を迎え撃つ準備を整えた。

 靄を凍らせ、地面に落とすと氷の花咲く地面に降り立ち、微笑む男が現れた。


 「会いたかった」

 

 「私は会いたくなかったがな」

 黄金の髪、翡翠の瞳。

 「お前が魔女になったとは知らなかったな」


 ―――そうと知っていたなら?


 「僕の使い魔になってくれてた?」

 「その前に消していただろうよ」

 高くも無く、低くも無い声は耳から離れない。

 「随分と嫌われちゃってるね」

 寂しいな、なんて言っていはいるがどこまで本気か分からない。

 「それだけのことはしたと思わないか?」

 「君に会いたいが為だけにあれだけしたんだ、少しは靡いてくれてもいい気がするんだけど」

 どこまでも幼い、少年。

 体だけは立派に成長し、背丈は自分を凌ぐ。

 「会いたいが為だけにわざわざ戦争を起こす馬鹿と契約する程退屈してない」


 今はどうか知らないが、とある国の王子だったこの男とはとある国で出遭った。

 その国で遊学中だった少年はその国の軍師として雇われた魔女の使い魔に異常な執着を見せたのだ。

 あの手この手で自分の側にいろとせっつく少年に飽き飽きしていたものの、私本人に言うくらいなら構わないと思っていた。

 ……のだが、当時の契約者のミネルヴァに、自国の父(国王)の名を出して契約の排除を求めて来るようになった。


 当然、断っていたが。


 3年後、帰国したソイツに胸を撫で下ろしたものだったが、その数ヵ月後、とある国に宣戦布告したのだ。

 そこからが面倒な話である。

 国々を転々として、細々と暮らしていたというのに私達が属した国々に宣戦布告するという暴挙。

 無駄に頭の回るその男は私達が行ける場所を狭めていった。


 それに、痺れを切らしたミネルヴァはそれ以上の悪知恵で絶対不可侵の土地を手に入れたのだが。


 簡略化してしまうと私のストーカーということになる。

 「つい最近まで退屈そうだったのに……その腕の中に居る子供が原因なのだろう?」

 歪む顔、光る翡翠はマナを射殺さんとするように鋭い。

 「だったら何だ」

 「気に入らない。飄々としたその仮面を外したくて、追いかけ続けていた女がぽっと出の子供ごときで取られるなんて、ね」

 ピリリとした異様な空気に眉をしかめる。


 「お前、何をした」


 数十年そこらしか生きていない魔女の力にしては視認できる程の濃すぎるそれに背筋が冷える。

 「何って?君と同じことをしただけさ」

 私自身が、そのおぞましさから破棄したものだ。

 それが何故、ここにある。


 「ねぇ、そこに居る君はこの女のどこまで知っている訳?」



12/10/29 改

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ