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17話



 「とんでもないデマだった」

 後から追い付いてきた二人もソファに腰かけ、紅茶を啜る。

 「危うく殺すところだった、というか、15年前なら出会い頭にドカンだ」





 歪んだ空間から二人が顔を出すと同時に兄の手から奪い取るようにマナを引き寄せる。

 「触れるな」

 信用ならない、というのがその場の判断だった。

 「この子に傷一つでも付けたら殺す」

 魔女の血を啜り、力を蓄える魔女に、その使い魔(兄含む)に囲まれた状況で安心しろというのが無理だろう。


 全員が席に着いた所で、男の真意を聞こうと視線をやる。

 「で、確認するが。貴様、病に侵されているな?」

 男は紅茶で舌を湿らせ、目を伏せた。

 「えぇ、かなり厄介な」


 「はっきり言わせてもらうが、寿命が尽きている」


 この男は死者なのだ、本当ならば。

 それが生きて、目の前で話している。

 「知っています」

 「魔女の血を啜るというのは、それが目的か」

 意味ありげな笑みに溜息をつく。

 魔女は人間でありながら時に反するもの。

 それの源を体内に引き入れれば魔との契約ができるだけでなく、魔女にならずとも延命できる……かなりのリスクがあるが。

 それはまた別の機会として、だ。

 「はい。魔女から少しずつ頂いて命を繋いできたのですが……」

 状況を見れば他の魔女を当たらなくてはならない状況になったということだろう。

 「断られたか」

 「はい」

 魔女は気紛れだ。長寿、というよりも時の流れに影響されない魔女は退屈し切っている。

 力を持った古株の魔女なんかはその傾向が顕著に表れる。

 「言っとくが、マナは魔女じゃない」

 歪んだ男の顔から目を逸らしてしまいたかった。


 「アポロン、あんなデタラメ言ったのは何故だ」

 あの男に危険思想は無い。

 確かに頂けない趣味ではあるが、全ては子供可愛さの行動だったではないか。

 子を一人残していくことに対する不安から、その前に死ぬことのない(・・・・・・・)保護者を見つけることが目的であった。(勿論自分が生きて、守ることを第一に考えていたようだが)

 マナが対象であったのは腹立たしいが強制ではなく、あくまで頼む形の話であった所には好感を持てなくもない。


 どちらかというと、自分の兄の方に悪意があったように思えた。


 マナの姿を背に隠し、何か不穏な動きでもしたら締めあげられるよう戦闘態勢をとる。

 「ちょ、ちょっと待て。別に喧嘩売ろうってわけじゃねーって」

 髪逆立てて獣か、お前は!とか何とか叫んでいたが、懲らしめてやった。

 「アイツじゃねーんだよ、俺が言いたいのは!」

 朝露だけではなく草花、ありとあらゆる水分を持つものがが一瞬にして蒸発する。

 「まずい」

 「何か、来る?」





12/10/29 改


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