13話
※からマナ視点です
「しかし、早いに越したことはない」
一人なら自分以外のものを全て消せば済むが、その中のひとつだけを守るというのは実に非効率的なのである。
それならば、と考えた所で思考は中断させられる。
「何を考えているかは分からないけど、ソレは却下」
いつ見てもその子供の瞳には驚かされる。
深海のように読めないと思えば、しけた海のような荒々しさを連想させる。
「何も聞かずに判断するのはよくないよ、マナ」
そんな私の言葉にすげなく返す少年は私の提案――するつもりもなかったが――を拒絶する。
この子は15年、という短い時間で私の何を読み取っているのか私には理解できない。
けれど、ひとつ確信できる。
何があろうと、今私が考え付いた最良の方法に人のココロというものを武器に抗うのだ。
※
マナはいつだって思う。
彼女が何を考えているか分からない。
けれど、彼女は一人それを片付けることを考えていることは確かだった。
生憎、自分が足手まといになっている、と感じるくらいには成長している。
思い返すはそれまでやってきた数々の悪戯。
それらが人の視線をこんなにも集めると考え付かなかった、あの頃の自分を呪い殺したい。
ただ、少し困らせたかっただけ。それだけだったのだ。
自分とは違うものであると言い聞かせてくる彼女は確かに、大きく考え方が違っていた。
大人というものは常に理性的で穏やか、それが普通なのかもしれない。
しかし、幼心に表情を変えることのない彼女には普通の大人とは違和感と不安を感じていた。
それが初めて崩れたのが5歳の時。俺が図体のでかい男に縛り上げられた状態で対面した時だ。
最初は言いつけを守らなかったが為の罪悪感と嫌われてしまうのではないかという恐怖。
勿論、これからどうなるのだろうという不安はあったけれどそれ以上に嫌われることを恐れて塔を登ることが苦痛だった。
『お前は大人しくていい子だな』
その言葉は俺を安心させる効果を持つ言葉だった。
側に居てもいいのだと思わせてくれていた。が、その時に浮かんだその言葉は、
『大人しくていい子でなければいらない』と意味しているように感じて。
塔で対面したその時の顔は、怒り。
自分に向けられているようで、これ以上嫌われたくない一心で涙を堪えていた。
それが、男達を追い払った後に怪我を彼女自身に移し(俺の遊び道具は魔術の本であったので知っていた)優しく抱きしめられた。
それがどれ程、俺の心を救ってくれたのか彼女は知るまい。
いい子でなくても、見捨てたりはしなかった、自分の母でもないのに。
憎まれても仕方ない自分を抱きしめるその手が温かくて、我儘になった。
もっと、かまって欲しい。自分だけを見て欲しい、なんて。
困らせれば怒られて、怒られたら反省して、それを見たウピスが仕方ないと溜息をつく。
その一連の流れには自分しかいない。
ウピスは俺の特別だ。
だから、『一人で』なんて言わないで――――――。
12/10/25 改