移動魔法(ルーナ)を頼んだら幼女(ルーナ)を渡された
あの某国民的RPG最高ですよね。最近5をずっとやってます
「お前に異世界への転生権を授けよう。一つだけ、旅を楽にするための力をやろう」
真っ白な空間で、偉そうな神様がそう言った。
俺は歓喜した。異世界転生といえば、広大な世界をあちこち旅するのが醍醐味だ。だが、徒歩や馬車での長距離移動は絶対にダルい。だから、貰うべき能力は最初から決まっていた。あの国民的RPG『ドラグオンクエスト』の、一度行った街へ一瞬でひとっ飛びできる超便利呪文だ。天井があると頭を打つあれだ。
「神様! 少しでも旅を楽にしたいんだ。俺に『ルーナ』の魔法をくれ!」
「ほう、そんなもので良いのか? よかろう、快諾してやる。新しい世界を楽しめよ」
神様はニヤリと意味深に笑い、パチンと指を鳴らした。
視界が光に包まれる。一瞬で行きたい場所へワープできる最強の移動手段を手に入れた。これで俺の異世界大冒険は勝ち組確定、イージーモードだ!
♢♢♢
次に目を覚ますと、俺はどこまでも続く美しい緑の草原に立っていた。
心地よい風が吹き抜ける。これぞ異世界。さあ、さっそく手に入れた移動魔法を試してみるか。まだ街に行っていないから、この場所を登録する感じになるのだろうか。
「よし……『ルーナ』!」
呪文を唱えるように、力強くその名前を叫んでみた。
しかし、魔力が湧き上がる感覚もなければ、体が浮き上がる気配もない。代わりに、背後から小さく、たどたどしい声が聞こえた。
「……あの、おにーさん?」
ビクッとして振り返る。
そこにいたのは───
栗色の髪をふわふわと揺らした、年齢は7歳そこそこ。小学校1年生くらいだろうか。サイズが合っていない大きめの服を着た、どう見ても一般人以下のステータスしかなさそうな、純粋無垢そうな『女の子』が一人、不安そうに俺を見上げていた。
「え?」
「あの……ここ、どこですか? ルーナ、お家にいたはずなのに……」
「お前……誰だよ!?」
「ルーナです! おにーさんは、だあれ?」
嫌な予感がして、俺は脳内でシステム画面を開いた。そこには冷酷な現実が記載されていた。
【パーティメンバー】
1番目:俺(冒険者・LV1)
2番目:ルーナ(幼女・LV1)
※常時固定。パーティ解散不可。
「おい、待て。嘘だろ」
脳裏をよぎる、さっきの神様のニヤリ顔。
俺が頼んだのは移動魔法の『ルーナ』。だが、神様がパーティメンバーに強制加入させたのは、ルーナという名前の、この無力で可愛い女の子だったのだ。システム画面には『パーティ解散不可』の文字が赤々と光っている。どこへ行こうが、誰に頼もうが、このパーティをバラす手段は存在しない。
「え……嘘、こいつとずっと一緒……? 結婚できる年齢でもないし、戦力になるわけもない。っていうか、俺がこの子をここで育てなきゃいけないの……!?」
俺の頭の中で、きらびやかな冒険者ライフの計画がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。チート能力で無双するはずが、いきなり異世界でワンオペ育児スタートである。こんなに純粋で可愛い子供相手に、邪険にすることなんてできるわけがない。
♢♢♢
「はぁ……。とにかく、情報収集のために近くに見える村へ行こう」
(まあ、孤児院かどっかに預ければいいか………)
俺は深呼吸をして、まずは歩き出すことにした。
だが、7歳児というのは本当に目が離せない生き物だった。
「わあ、おっきいチョウチョさん! 待ってー!」
「おいルーナ、勝手に走るな! はぐれるぞ!」
俺の警告も届かず、ルーナは綺麗な蝶々を追いかけて草原の奥へとトコトコ走っていく。そして歩き始めてわずか3分後、彼女は背の高い草むらの向こうへと完全に姿を消した。
「あ、やべ。見失っ――」
俺が焦って探しに行こうとした、その瞬間だった。
「ふぇぇ……おにーさん、どこー!?」
背後から、いきなり声がした。
ガバッと振り返ると、さっきまで遥か彼方の草むらに消えたはずのルーナが、なぜか俺のすぐ後ろに立っていた。エフェクトも音もなく、当たり前のように、唐突にそこに存在していた。
「え? お前、いつの間に後ろに……」
「わからないのぅ……。チョウチョさんを追いかけて走ってたら、急におにーさんの後ろにいたの」
そこで俺は、このパーティ結成の本当の恐怖を理解した。
これはドラグオンクエストの、あの仕様だ。
洞窟や街のマップで、先頭のキャラクターと後ろの仲間が地形に引っかかって画面外に離れてしまったとき、一定の距離に達した瞬間、後ろの仲間が不自然に「スッ……」と先頭の後ろへ強制ワープして追いついてくる、あのシステム的な挙動。
つまりこの子は、俺と物理的な距離が離れると、パーティメンバーの強制引力によって、自動的に俺の真後ろにパッと現れてついてくるのだ。
置いていくこともできなければ、離れて戦うことも絶対にできない。
ちょっと目を離せば勝手に迷子になって、俺の後ろに強制ポップする。こんな状態では危険なダンジョンなんて連れて行けるわけがない。
俺に許されたのは、この村の周辺で、彼女が危ない目に遭わないよう手を繋ぎ、のんびり見守りながら暮らすスローライフだけ。
俺は青空を見上げ、完全に詰んだ我が身を嘆きながら、全霊の力を込めて叫んだ。
「神様のバカヤロー――!!」
(完)
……はい、というわけで今回は紳士の皆様からしたら羨ましい……のですかね?
ド◯クエやってたら唐突に思いつきまして書きました。
私は大ファンなのでまあ、許してもらえる……はず
と、言うわけでコメント、評価、ブクマよろしくお願いします




