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螺旋  作者: 悠羽
3/8

第三話 介入

今日は、

 立ち止まらなかった。



 目を覚ました瞬間、

 時計を見ない。


 日付も、

 確認しない。



 どうせ、

 同じだ。



 私は、

 家を出る時間を

 三分早めた。


 コーヒーは、

 飲まない。



 駅前の道も、

 いつもとは

 違う側を歩く。



 事故の場所を、

 避けるためじゃない。


 事故を、

 避けさせるためだ。



 横断歩道の手前。


 昨日と同じ時間。



 私は、

 そこに立っていた。



 視界の端で、

 人影が動く。


 スーツ姿の男性。


 昨日とも、

 一昨日とも

 違う人。



 彼が、

 前に出ようとする。



「待って」



 声が出た。



 彼が、

 振り返る。


 不思議そうな顔。



「信号、

 まだですよ」



 私は、

 それだけ言った。


 理由は、

 言わない。



 男性は、

 一瞬迷ってから

 足を止めた。



 胸が、

 大きく鳴る。



 変えた。



 私は、

 初めて

 確信した。



 信号が、

 青に変わる。



 人の流れが、

 一斉に動く。



 その瞬間だった。



 背後から、

 強い力が

 ぶつかってきた。



 誰かが、

 転ぶ。


 悲鳴。



 私は、

 振り返った。



 倒れていたのは、

 さっきの男性では

 なかった。



 若い女性。


 スマートフォンを

 見たまま

 歩いていた。



 彼女は、

 道路側に

 よろめく。



 エンジン音。



 ブレーキ。



 間に合わない。



 音が、

 重なった。



 私は、

 目を閉じた。



 ——死なない。



 分かってしまう。



 救急車。


 人だかり。


 時間は、

 やはり

 進む。



 私は、

 立ち尽くしていた。



 助けたはずだった。


 止めたはずだった。



 それでも、

 事故は

 起きた。



 違う人に。



 会社へ向かう電車。


 今日は、

 二分遅れ。



 一分、

 短い。



 私は、

 その違いに

 なぜか

 安堵していた。



 世界は、

 完全に

 決まっているわけじゃない。



 でも、

 自由でもない。



 夜。


 ベッドに

 横になる。



 私は、

 考え続けた。



 もし、

 全部を

 止められないなら。



 もし、

 誰かが

 必ず

 倒れるなら。



 私は、

 何を

 選べばいい。



 目を閉じる。



 眠りに

 落ちる直前、

 ふと

 思った。



 この世界は、

 私が

 中心じゃない。



 それなのに、

 私だけが

 知っている。



 それは、

 罰なのか。



 それとも、

 試されているのか。



 答えは、

 まだ

 出なかった。



 ただ、

 分かったことがある。



 私は、

 もう

 見ないふりは

 できない。


第四話:温度

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