表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
螺旋  作者: 悠羽
2/8

第二話 確認

目を覚ました。


 時計は、

 七時四十二分。



 嫌な予感が、

 先に来た。



 スマートフォンを取る。


 日付を見る。



 ——四月十七日。



 一瞬、

 画面が壊れているのかと思った。


 再起動する。


 もう一度見る。



 四月十七日。



 息を、

 吐いた。



 偶然だ。


 何かの不具合だ。


 そういうことは、

 たまにある。



 昨日と同じように、

 コーヒーを淹れる。


 苦い。


 砂糖は、

 入れない。



 カップの欠けた部分に、

 指が触れる。


 その感触まで、

 同じだった。



 玄関を出る。


 向かいの家の犬が、

 吠える。



 心臓が、

 一拍、

 遅れる。



 駅までの道。


 信号は、

 赤。



 ——次は、

 青。



 やめろ。


 考えるな。



 それでも、

 信号は

 予想通りに

 切り替わった。



 私は、

 横断歩道の手前で

 立ち止まった。



 昨日、

 事故が起きた場所。


 同じ時間。



 腕時計を見る。



 八時三分。



 胸が、

 強く鳴った。



 何も起きなかったら、

 笑い話で終わる。


 自意識過剰だったと、

 それでいい。



 エンジン音。



 私は、

 顔を上げた。



 ブレーキ。


 クラクション。


 鈍い音。



 同じだった。



 倒れたのは、

 昨日とは

 少し違う人だった。


 服装も、

 年齢も、

 違う。



 でも、

 場所と、

 音と、

 流れは

 同じ。



 ——死なない。



 また、

 分かってしまう。



 私は、

 拳を

 強く握った。



 知らなければよかった。


 確認しなければよかった。



 救急車。


 人だかり。


 時間は、

 また

 進む。



 駅のホーム。


 電車は、

 三分遅れ。



 昨日と、

 同じ。



 私は、

 初めて

 怖くなった。



 これは、

 夢じゃない。


 偶然でもない。



 じゃあ、

 何だ。



 会社に着く。


 同じ挨拶。


 同じ席。



 でも、

 一つだけ

 違うことがあった。



「昨日さ」



 同僚が、

 話しかけてきた。



「駅前で事故あったらしいね」



 昨日は、

 そんなこと

 言われなかった。



 小さな違い。


 でも、

 確かに違う。



 私は、

 ようやく

 理解し始めた。



 同じ日だ。



 でも、

 同じ世界じゃない。



 夜。


 ベッドに横になる。



 眠るのが、

 怖かった。



 目を閉じれば、

 また

 朝になる。



 七時四十二分。


 四月十七日。



 そう思うと、

 喉が

 乾いた。



 それでも、

 眠りは

 容赦なく

 落ちてくる。



 意識が、

 沈む。



 最後に、

 私は

 願ってしまった。



 どうか、

 明日は

 違う日であってほしい。



 その願いは、

 静かに

 裏切られる。


第三話:介入

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ