第二話 確認
目を覚ました。
時計は、
七時四十二分。
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嫌な予感が、
先に来た。
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スマートフォンを取る。
日付を見る。
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——四月十七日。
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一瞬、
画面が壊れているのかと思った。
再起動する。
もう一度見る。
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四月十七日。
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息を、
吐いた。
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偶然だ。
何かの不具合だ。
そういうことは、
たまにある。
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昨日と同じように、
コーヒーを淹れる。
苦い。
砂糖は、
入れない。
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カップの欠けた部分に、
指が触れる。
その感触まで、
同じだった。
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玄関を出る。
向かいの家の犬が、
吠える。
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心臓が、
一拍、
遅れる。
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駅までの道。
信号は、
赤。
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——次は、
青。
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やめろ。
考えるな。
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それでも、
信号は
予想通りに
切り替わった。
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私は、
横断歩道の手前で
立ち止まった。
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昨日、
事故が起きた場所。
同じ時間。
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腕時計を見る。
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八時三分。
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胸が、
強く鳴った。
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何も起きなかったら、
笑い話で終わる。
自意識過剰だったと、
それでいい。
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エンジン音。
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私は、
顔を上げた。
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ブレーキ。
クラクション。
鈍い音。
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同じだった。
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倒れたのは、
昨日とは
少し違う人だった。
服装も、
年齢も、
違う。
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でも、
場所と、
音と、
流れは
同じ。
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——死なない。
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また、
分かってしまう。
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私は、
拳を
強く握った。
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知らなければよかった。
確認しなければよかった。
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救急車。
人だかり。
時間は、
また
進む。
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駅のホーム。
電車は、
三分遅れ。
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昨日と、
同じ。
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私は、
初めて
怖くなった。
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これは、
夢じゃない。
偶然でもない。
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じゃあ、
何だ。
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会社に着く。
同じ挨拶。
同じ席。
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でも、
一つだけ
違うことがあった。
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「昨日さ」
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同僚が、
話しかけてきた。
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「駅前で事故あったらしいね」
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昨日は、
そんなこと
言われなかった。
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小さな違い。
でも、
確かに違う。
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私は、
ようやく
理解し始めた。
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同じ日だ。
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でも、
同じ世界じゃない。
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夜。
ベッドに横になる。
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眠るのが、
怖かった。
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目を閉じれば、
また
朝になる。
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七時四十二分。
四月十七日。
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そう思うと、
喉が
乾いた。
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それでも、
眠りは
容赦なく
落ちてくる。
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意識が、
沈む。
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最後に、
私は
願ってしまった。
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どうか、
明日は
違う日であってほしい。
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その願いは、
静かに
裏切られる。
第三話:介入




