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1日目

乙女ちっくな攻と神経質なちょっとやんでれな攻と普通の少年の話になる予定です。

その日は平日で、特に何の予定もない日だった。

携帯のアラームを止めて、ベットからのそのそと起き上がる。身支度をして部屋から出た。リビングに行く前に、でかい音をたてて弟の部屋の扉を開ける。案の定目覚時計が鳴り響くなか眠り続ける弟を叩き起こす。これをしないと紫穂さんの機嫌が最上級に悪くなるから。まだ寝ぼけている弟をひきずりながらリビングに下りるのが俺の朝の始まりだった。


リビングへ続くドアを開けた瞬間、違和感を感じた。いつもなら慌しく走り回りながら、朝の食卓を整えてくれる紫穂さんが食卓の席につき、組んだ両手の上に頭をうなだれさせている。紫穂さんを励ます様に肩に手をやる、父さんの穏やかな表情には少し陰りを感じた。

「楸霖」

なにかあったのかと尋ねる前に、紫穂さんが俺の名前を呼び、座れと促す。寝ぼけ眼の弟も席につき、空気の重さは桁違いだが何時もの家族の食卓が完成した。

「あのね、楸霖」

何時も自信に溢れた紫穂さんには珍しい、暗い声だった。

「貴方の父親が、死んだの」

告げられた言葉はこうだった。完璧に目が覚めた弟と、俺は顔を見合わせた。そして、今俺たちの目の前にいるのは幻覚かなんかなのかという目で、紫穂さんの隣りにいる、優しい顔立ちの俺たちの父親を見た。

「え、じゃあこの父さんおばけなの」

弟が俺も考えていた事を父さんを指差しながら言い切った。その瞬間、紫穂さんの鉄拳がとんだ。拳と頭が触れ会い、良い音が鳴る。

「誰が誠一さんの話をしたのよ。縁起でもない事言うんじゃないわよ」

母さんひでぇと頭を押さえる弟。父さんは困った様に微笑んでいる。

「楸霖、あんたもアホな事考えたんじゃないでしょうね?」

俺はぶんぶんと首を横に振りなから、弟と身を寄せ会い縮こまった。今日の紫穂さんはいつもの倍ほど手が早く横暴だ。

「楸霖、あんたの血縁上の父親よ。葛西蒼也が死んだの」

それで、やっと事情が解った。

「え、あの人死んじゃったの?なんで?」

俺が言えたのはこれだけ。感じたのは悲しみでも喜びでもなく、少しの驚きだけだった。



「なー兄ちゃん」

コンビニの前でパンを頬張りながら、シュウが尋ねる。動揺しているらしい紫穂さんは朝食どころではなく、俺たち兄弟は父さんに朝食を買うようおこずかいをもらったのだ。

「カサイソウヤって誰?」

心底不思議そうな弟。確かにあの後の会話は、葛西蒼也が誰なのか知らなければちんぷんかんぷんだったろう。

「紫穂さんの前の旦那さん。つまり俺の本当の父親の人」

本当の、の所で違和感を感じ、直にその正体に気付いた。紫穂さんは葛西蒼也さんを語る時、絶対に‘本当の’という形容詞を使おうとはしないのだ。そんな事を考えていて、弟の変化に気がつかなかった。

「母さんバツイチなの?つーか俺たち父さんの子じゃないの?」

驚きに目を見開いて詰め寄るシュウに眩暈がした。

「あのな、」

この話題が出る度にシュウは驚いたり焦ったり忙しい。

「毎年夏休みに、島根に誰の墓参りに行くんだよ」

「俺のかーちゃん」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「あ」

「…」

「そっか、そーだった!」

忘れてたー!と照れくさそうに笑うシュウ。シュウが保育園に通う前の話だし、俺たち兄弟と父さんはなぜか似ているから、普段は忘れているのは仕方がない事なのかもしれない。でもそろそろ覚えていいんじゃないだろうか。


ぱっと見普通の家族に見えるうちの家族は、実はちょっと複雑だ。

我らが母さん紫穂さんと先ほど亡くなったと聞いた葛西蒼也の間に俺、楸霖が生まれた。そして俺達の父さん、誠一さんと誠一さんの前の奥さん寿実さんの間に弟のシュウ、秋一は生まれた。そしてそして、奥さんが秋一を産んですぐに亡くなった誠一さんと、憎悪するまでに仲が険悪になったため離婚した紫穂さんが結婚して、今の俺たちの家族が出来た。

俺たち兄弟は血の繋がりが全くないし、片方の親とも血が繋がっていないのだ。しかし、再婚は俺もシュウも覚えていないかなり昔の話のため、普段は忘れられている事実なのだ。その上、父さんと俺とシュウは顔も雰囲気もそっくりで、血の繋がりが無いと言った方が驚かれるぐらいなのだ。

「覚えろよ…」

「だってさぁ、普段あんま関係ないし」

「…まぁなー」

困るのは血液型をつっこまれた時ぐらいだ。

「兄ちゃん反応めちゃくちゃ薄かったね」

「だって俺、一回ぐらいしかあったことないもん」

「そっかー」

弟の反応もめちゃくちゃ薄かった。

幼い時別れたきりの葛西蒼也さんとは、小六か中一ぐらいの時に一度だけ会って、当たり障りのない会話をした事があるだけだ。それ以前も以降も特に関わりは無い。それに父親と言われてすぐさま思い浮かぶのは父さん、誠一さんだ。

しばらく、シュウとコンビニの前の低い柵に腰掛けていた。ぼんやりと記憶の中の葛西蒼也さんに思いを馳せる。シュウは隣りでひたすら食べていた。



「シュウ、シュウ君おはよう。珍しいね」





初めて投稿しました。勝手がわからないので、何か不備があったらすいません…。のんびりつづきます。

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