導入部分
桜舞い散るほんのり暖かな春。ひとたび見渡せば道に沿った桜並木がグレー1色しかないこの道に色を授けて、優しくひらひらとセメント上に寄り添うように花びらが転寝。
この時期は何か。ずばり、入学式である。
この春、新年度の訪れと共に1人の少年が高校へと進学した。特に目立った事もなく、特筆する何かがあるものでも無い。ただただごく普通の男子高校生になろうとしていたのだ。
少年の名前は神野遊。しがない15歳の少年だ。
「今日から高校生かぁ…部活で青春したり可愛い彼女出来たりだとかぁ…」
入学式を執り行う会場である、これから通う高校へ、彩られた景色と同じく軽い足取りで歩いて向かっていた。
「部活はともかくお前には彼女なんて無理だな。部活は当然子犬愛で愛で研究会だろ!」
横で嫌味+変なこと言っている奴は、遊の親友であり、いつまでも良きライバルの犬飼一である。
小学からずっとクラスが一緒で、いよいよ高校すらも一緒となった。腐れ縁と言っても良い。
「そんな部活あってたまるかよ……バカ言ってねぇで早いとこ行こうぜ。初日遅刻は有り得ねぇって」
そう言って2人は桜並木の中に走って行った。
これから起こる日常物語は、2人にとって吉となるか凶となるか。それは作者と神様次第だ。