~プロローグ~
はるか昔。神の落とし子が地上を統べる時代、その始まりのこと。
初めに天の使いは地上に祝福を満たした。すると、幽冥は競るように輪廻を繋いで運命を封じた。三界は神亡くすも、終わりない楽園を得た。
されど、世界に座するものは一つと無く、ただ無垢なるは星となり、穢慾は淵源へと還る。
故に世界に未来はなく、ただ昏い夜明けを待ち続ける。祝福は偽光と陰り、死に欠けた命は地上を彷徨った。
人々は膨れる穢れを貴血で慰めた。
いつしか天には星が満ち、地には屍堆く、源は滞る。
そして、大罪の夜が訪れる。遂に慈雨と奇跡の秘宝が天に根付いたのだ。
天使は華やかに空を駆けた。地上は宴に騒いだ。悪魔は厳かに首を垂れた。
しかし、陰謀に宝は奪われ、遥かに沈む。浚えど器は黒く焼けつき輝きを失った。
争いに決別は成され、宝は時の闇に葬られた。
天界と冥界が分かたれて幾星霜。無き器はひとり六道を巡り、悠久を経て月虹に成る。
けれど、世界は神を求めて止まず、遺した骸の血肉を糧に罪火を熾す。
今日、呪いは起こされた。間も無く世界は劫火に包まれる。
もはや、大願は壊れた。皆の者、神殺しの時だ。
人の子よ、導きのままに贖罪の剣を掲げよ。器が黒星と至らぬ間に、災禍の芽を擦り潰せ。さすれば、運命の楔は砕かれ、世界は再び始まろう。