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93 おっさんがMVP

ダンジョン内に転移してすぐに、七光りは一人で30階層の黒門の方を目指して歩き出した。


多分こいつも迷宮病なのだろう。親の金で買った装備でここまでゴリ押してきて、10層と20層のボスも余裕で勝てたからと高を括っているのが、その態度からにじみ出ている。


だが、先人の知恵(探索者wiki)によると10階層と20階層のボスは、その推奨レベルがそれぞれ”ソロで” Lv.10と Lv.40。しかし30階層の推奨レベルはパーティーでLv.70相当らしい。


数値だけ見れば行けそうに感じるが、そもそも連携のままならないパーティーは烏合の衆と変わらないし、むしろボス一体を全員で狙う場合は、ゲームとかとは違ってフレンドリーファイアにも注意が必要だ。


取り敢えず、まずは話の通じそうな八重樫さんと因幡さんに現状の戦闘スタイルを聞いて、連携のすり合わせをしていかなければ...



何はともあれ、既にダンジョンに入ってしまっているのだ。警戒を怠らずに、実戦で最適化していくのがいいだろう。


「二時の方向から四足歩行のモンスターが来ます」


前方斜め右からモンスターの気配。


「まずはおじさんに任せてください。お互いの手の内はある程度把握しておいた方がいいでしょう」


そういった八重樫さんは背中に背負った盾と剣を装備して、俺と因幡さんの前に躍り出た。


「ふんッ」


飛び出してきた狼型モンスターを盾で受け止め、八重樫さんは更に追撃を放つ。


【シールドバッシュ】!


盾の攻撃スキルのようで、狼型モンスターはその背後の木に叩きつけられ、そこにすかさず八重樫さんの剣が突き刺さる。


斬撃強化(シャープエッジ)】【乱れ突き】


剣術スキルの威力を強化するスキルと、昔俺が使っていた五月雨の剣術版のようなスキルを使い、八重樫さんは的確にモンスターの足、首、心臓を狙っていた。


典型的なバランスタイプの前衛で、基本に忠実でもある。なかなかの熟練者だ。


そうして体勢が崩れて瀕死のモンスターにとどめを刺した八重樫さんは、ドロップした魔石を腰の袋に入れてこちらに戻って来た。


「どうだったでしょうか?」


「前衛の戦士系ですね。なかなか安定した戦い方でしたし、これなら安心して背中を預けられそうです」


「スキルの操作がスゴイですね!」


「ありがとうございます」


良い感じに雰囲気が和んできたところで、続けてモンスターが接近してくる。しかし、今回は因幡さんも気づけたようだ。


「! 10時の方向からも来ました。今度は私の番ですかね」



彼女はどうやら新しい短剣を手に入れたようで、その手には二つの短剣が握られていた。しかもその剣には魔力が宿っており、多分だがDランク相当の魔力武器(マナアイテム)


そう簡単に買える代物でもないので、どうやら持ち前の幸運が上手く作用したようだ。




そして、因幡さんは頭上の木の枝まで跳躍し、モンスターが顔を見せた所で急降下。


【不意討】...


そのまま首を貫いて、一撃でモンスターを倒し切っていた。


「おぉ、腕が上がってる」


「鮮やかですね、斥候系でしょうか? 不遇と聞きましたが... こういう縦横無尽な戦い方ができればかなり強いんですね」


「いやぁ、それほどでも.... あるかもしれませんね!」



そして、次は必然的に俺の番だろう。


丁度いいことに先行していた七光りが、モンスター複数体にタコ殴りにされていることを気配から察していた俺は、すぐさまその場所まで移動する。


そして因幡さんと八重樫さんが追い付いてきたところで、さっそく手の内を見せることにした。


【魔力剛糸】


俺の本気での戦闘スタイルは、基本的に剣と魔法を使い分けるハイブリット型となっている。しかし、それはあくまで最も突破力に優れた... つまり、ダメージを多く与えられる戦法にすぎない。


レベル999のスキルの多様さをもってすれば、その他にもいろいろな戦術が俺にはある。


そして、今回俺がメインで使っていくのは、隠者(本気)の戦闘スタイルではなく、以前から構想していたAランク探索者としての糸と影魔法だ。


【虚影】【網糸結界】


まずは、軽い虚影で周囲の茂みに姿を隠しておく。


次はSPの使用を最低限に抑えた網糸結界により、周囲に群れている狼型モンスターの足を絡め取る。そして、さらにその糸を起点にスキルを発動。


武器糸技(スレッドアーツ)・剣界】


糸から放たれた無数の斬撃が、絡め取られたモンスターたちの体を撫で斬りにしていく。


そうして、ものの10秒で周囲のモンスターは全滅した。


「これが早川さんの本気ですか.... えげつないですね」


「術師系なのか? この糸は... 魔法? いや、スキルの詮索はご法度ですね。早川さんは、糸を利用した中、遠距離タイプといった所でしょう。これは援護が期待できそうです」


「任せといてください」




そんなこんなで、そのまま30分ほど密林を歩いていると、黒門が目に入った。


しかし、以前もいたボスモンスターの姿は見えず、例の看板がそこにあるだけだった。


「前のパーティーがボスを倒した後のようですね。では、看板の後ろを見れば... ありました」


八重樫さんの言う通りに看板の後ろを見ると、そこにはバインダーが取り付けられている。中を見ると、最新の筆跡は今から1時間ほど前のものとなっていた。


「一時間前なら既に通過した後だと思うので、少し休んだら30階層に入りましょう。特にボスしかいない30階層はリポップも早いので、問題ないですよ」


「なるほど」


「いやー、役に立てているようで何よりです」



....このパーティー内で、一番の功労者は八重樫さんな気がする。


〇 スキル解説コーナー


武器糸技(スレッドアーツ)


糸闘術のAランクスキルで、他系統の武技を糸で放つことが可能になる。

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― 新着の感想 ―
スレッドアーツ強いなぁ… 実際の性能はわからんけど、例え劣化コピーみたいな感じだとしても糸から他武器の技を放てるのは戦略の幅が広がりますし暗殺じみた使い方すら可能ですね スレッドアーツの為に色々な武…
七光オヂはどうなったのだろう?転移結晶使ったのだろうか?
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