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87 俺はまだ本気を出していない..... (恥)

闘気脈動による筋力 敏捷 耐久の強化により、体感では能力値200といったところ。元が10かそこらなのだから、強化倍率としてはかなりのものだ。まぁ、能力値7000を強化すると精々が1万に届く位になってしまうのだが。


何はともあれ、これで勝負の土俵に立つことができた。


そして、迫る木剣を俺は横に弾く。


「うぉ!」


しかし、その剣は流れるように突きへと変換され、腹に狙いを定められる。


(なるほど)


放たれた攻撃を大きく避け、続けてその隙を突いて首を狙う。しかし、その攻撃は綺麗に受け流された。


違和感のない受け流しとでもいうべきか.... 受け止められるのではなく流されるという感覚は今まであまり感じたことのないものであり、かなり調子が崩される。神足通があれば即座に体勢を立て直せるのだが、今はそれもない。


そして受け流しから続いて突きが放たれる。


首を傾けつつ首筋を木剣で守り、突きを受け流すが、俺自身は余り攻撃を受けるタイプではないので、今のステータスでは少し手が痺れてしまう。


....せっかく影法師で鏡刃のスキルをストックしていたので、もう少し使い慣れておけばよかったな。




だが、防ぐのが苦手ならば得意分野で勝負をすればいい。


手の痺れも闘気の流れで押し流され、すぐさま無防備になった先生の背中へと連撃を放つ。剣界のような異次元の連撃でこそないものの、昔使っていた五月雨くらいはキレのある連撃だ。


しかし、その連撃は放たれる直前、初速の段階で木剣により止められ、そのまま鍔迫り合いに持ち込まれる。


型..... ”結技”というのが予想以上に厄介だ。いうなれば完成された安定感があるといえばいいのだろうか?


俺自身、対人戦闘は人型ゴーレム相手に積んでいるので、ある程度は通用するという自負はあるし、実際に先生より劣る能力値でも戦いの土俵に上がれている。しかし俺の培ってきた、いわば直感的な剣術は安定性のある型を破れる程の突破力を持っていなかった。





.....だが、押し通す!




俺は蹴りを放ち距離を取ろうとするが、それを察知した先生は先んじて距離を取る。当たれば儲けものといったくらいなので問題は無いし、それによりできた一瞬の間が大切だ。


そのまま全身の筋肉を弛緩させ、脚に力を入れる。そして、腰を捻ることでその力を最大限に剣へと伝え、闘気の脈動とタイミングを合わせて突を放つ。体勢は体内の闘気が流れる経路を一直線に並べる形を取り、それによって全ての質量を剣へと伝えることが出来るのだ。


それは天穿を再現したような剣撃ではあるが、もちろんスキルを使った訳でも、闘気を放出したわけでも無いので、威力は常識の域を出ていない。しかし、他のスキルと一元化できるほどに理解を深めたスキルの再現は、守りを突破するのに十分な威力を持っていた。


目論見通り、その突きは先生の手にある木剣を弾き、更に突き進む。


切っ先は反対方向を向いており、突きは不可能。斬撃、連撃、受け流し、いずれも既に間に合わない。








「がッ..... はァっ!?」






突如、全身に循環させていた闘気の流れが乱れ、強化が途切れた。そして衝撃が走る。


何が起こったのか、理解できない。



そのまま俺の意識は落ちていった。








◇ Side 先生



とんでもない化け物がいたものだ... と、そう思わずにはいられない。


今目の前で倒れているのは編入生の..... 名前は分からないが、ものすごく強い奴だ。


そもそも剣術の土台が完成されているのもそうだし、最後に見せた剣技。あれは既にスキルとして成立する程の域に至っていた。私が勝てた要因は、完成された型の有無だろう。


.....あの一撃を前にして、私は一瞬だけ死を意識するほどに肝が冷え、口伝(くでん)の一つを出してしまった。確かにスキルでは無いものの、アレは本来常人に振るうべきではない(わざ)。報告したら処罰は免れそうにないな。


だが、一応手加減.... というか、最後に少し力を抜いたのだが、彼は気絶してしまっている。そんなに当たり所がよかったのか? と、少し疑問に思うが、取り敢えず保健室に運ばなければなるまい。


だが、その前に....


手にしたのはレベルを測定する器具。


探索者組合などの資金が潤沢にある機関にしか買えないアーティファクトとは違い、こちらは対象の肌に押し当てることで大まかな耐久の能力値を試算し、そこから推定レベルを出せるという優れもので、庶民でも手軽に買うことができる。


そしてこれの良い所は、偽装系のスキルが通用しないことだ。能力値を強化できるスキルで結果が変わってしまうが、偽装系のスキルは効果を発揮しないため、意識を失った相手に使えばほぼ確実にレベルがわかるのだ。


あれほどの戦闘技能を持ち、私と立ち会える彼のレベルはどれくらいのモノか.... もしも何かがあれば、上に報告も必要になってくる。





ピピピピ.... ピピピピ....


しかし予想と違い、出た結果は思いもよらぬ数値だった。



「耐久23? 推定レベル5~10だと!?」



あれほど私と張り合えてレベル10かそこらはあり得ない.... ステータスの偏りが激しかったのか? それとも何かしらのデバフスキル? だが.... 少なくともフェイカーの可能性は消えたな。それに、気絶した理由も耐久が低いからなのだろう。



少し違和感が残るが...


「やっぱり気になるな、調べておくか」


そう独りごちつつ、周囲の手が止まっている生徒達へと発破をかける。



「各自模擬戦を続けるように!」


そう指示を出した後に、私は床でのびている編入生を米俵のように担ぎ、保健室へと運び込んだ。

先生(御剣 美琴)


所属:???


レベル:84





主人公のお家芸:気絶

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