84 法律 > Lv.999
ブックマーク 喜び Lv.1
評価 喜び Lv.2
感想 歓喜
レビュー 狂喜乱舞
↑
作者の反応
リビングに出ると、朝っぱらからアネモイは寝っ転がって紅茶片手にドラマを見ている。その姿はさながら午後に仕事を終えてくつろぐ主婦のようだ。まぁ、こいつはただ食っちゃ寝しているだけだが.... それとは対照的に、バロムは一日中ある研鑽を積んでいた.... ゲームだけど。
結論、二人ともニート。
俺はそんな二人を尻目に、玄関へと向かった。
「ふぅ.... いい朝だなぁ」
昔っから思うのだが、天気がいい日は心も晴れやかな気分になる。逆に、曇りや雨の日は少し憂鬱な気分になるのだ。ダンジョンの天気は常に固定で、60階層までは晴天が続いていたのだが、それ以降は古代都市階層で暗雲が立ち込める天気が3か月近く続いたため、その感覚が余計顕著に感じられる。
せっかく天気もいいので、いつものように瞬間移動していくのではなく、歩いて探索者組合まで向かうことにした。
「お、そっか。赤信号...」
ランニングは家の真横にある公園で行っていたため、赤信号で待つのも久しぶりだ。ピッポー ピッポーという電子音も、久しぶりに聞くと少し懐かしく感じられる。
「こんなところにラーメン屋が... 今度みんなで来ようかな いや、でもフェルとクズノハが仲間外れになっちゃうしなぁ」
フェルとクズノハが伏魔殿から出られないという致命的な弱点を解決する方法は、未だ見つけられていない。フェルには何かしらの魔力補給方法、クズノハにはダンジョン外で魔力の体を維持する方法が必要なわけだが、俺が魔力を供給し続ける以外の方法は無いし、ダンジョン周辺以外の場所では魔力の消費が激しすぎて、その方法も現実的ではなかった。
それに外で自由に活動するなら、二人が人間の姿になれるスキルみたいなものを獲得しなければならない。そういう効果を持ったアイテムでもいいのだが、そんなに都合のいい効果を持つアイテムはドロップアイテムの山を漁っても見つけられなかったし...
そう少し頭を悩ませているうちに、いつの間にか俺は探索者組合の正面に立っていた。
なので、一旦思考を中断し、ダンジョンモードに切り替える。
人混みに沿ってビルに入ると、その流れのままカウンターに並ぶことができる。昨日に比べて人の量が少なく感じられるのは、今の時刻が8時半だからだろう。列に並んで10分もしない内に探索届を出すことができ、その後のダンジョンへの列も、同じくらいの時間しかかからなかった。
勿論、今日はソロでの探索だ。
「よし、さっそく使ってみようか」
格納庫にしまっていた式剣に触れ、まずは一つ目のスキルを使う。
【複製量産】
式剣に触れた手とは反対の手にはミスリルの塊が握られており、それらはスキルによって式剣と寸分も違わない形に変化する。そして、ここからがこの剣の真骨頂だ。
【生写し】
【眷属創生・擬人式】
原本の式剣による”生写し”によって、複製された式剣の劣化が完全に抑えられる。そして式神化されたことにより、飛行能力を得て自立行動も可能になった。
その数五本。
しかし、結果的に俺の魔力は500くらいしか消費されておらず、式神なので継続的な魔力消費こそあるものの、擬人式はかなり燃費がいいので、自動回復による魔力の回復が消費量を上回っている。それに、いざとなれば空気中の魔力を取り込んで回復も可能だ。
天眼通を使い続けるよりも圧倒的に燃費がいいので、これなら普段のダンジョン攻略でも使っていけるだろう。
「よし、じゃあ ”次階層への門を探せ”」
命令を受けた五本の式剣は、すぐさま上空へと飛び去った。これくらいのスピードならすぐに見つかるはずだ。
........
そうして待つこと5分、やはり式剣はあっさりと黒門を見つけ出した。
【没入】
黒門を見つけた式剣に没入すると、黒門の周辺に陣取った27階層ボスの姿が見える。周囲に人影は見えないので、サクッと狩るとしよう。
「”ボスに突っ込め”」
そう命令すると、式剣は躊躇なくボスに向かって加速していく。そして、その刃が首に迫った瞬間...
【神足通】
式剣と自分の位置を入れ替え、馬のようなボスモンスターの背に着地する。その衝撃で馬はこちらに気づいて振り落とそうと動くが、俺はその前にその首を刈り取った。
【手刀・発頸剣】
馬の首が重力に従いドスンと地面に落ちる。そして、すぐにその体も光の粒子になって消えていった。
「....発頸剣も式剣も、使い勝手は上々。ただまぁ、さっきの場面は天命殺でよかったかな」
何はともあれ、今日の成果はなかなかに良いものだった。探索の最後に【制限解除】と【一投入魂】についても試してみようか。
これでダンジョン探索も捗るだろう。
.....そう思っていた時期が、俺にもありました。
「何これ?」
俺はあれからスルスルと攻略を進めていき、30分程度で30階層への黒門を見つけていた。
しかし、その開けた場所には大きな看板が立てられている。
内容は、
『 -注意- 迷宮法に基づき、30階層の探索はパーティーで行うこと。また、事前に申請を行い、転移結晶の貸出を義務とする。 探索者組合』
といったもの。そして看板の上の方には、こちらを見つめている監視カメラが鎮座している。
「マジかよ....」
小心者な俺には法律を破るほどの勇気はない。だが、パーティーを組むというのもかなり面倒くさい。
....こう思ってしまうのは、初パーティーがあの三人衆だったからだろうか?
「そんなしょうもない理由で百武さんに頼むのもアレだし...」
結局、俺はそのままダンジョンから帰ることにした。明日はついに学校の編入日。寝坊はしないと思うが、一応早めに寝ておこう。
2章 帰還編はここで終了。 次からは3章『学校編』が始まります。
〇 スキル解説コーナー
【複製量産】
触れた武器を魔力によって複製することができるスキル。
複製することでコピー品のステータスは劣化するが、元になった武器の素材を持っていれば劣化をある程度抑えることができ、必要魔力量も激減する。