81 脳内反省会
このエピソードの後書きには挿絵があります。
自分で世界観をイメージしてみるのが小説の醍醐味の一つだと思うので、イメージと違うみたいなことを避けたい人は、ページ右上の『表示調整』から、
『挿絵を表示中』をクリックして『挿絵を表示』に変更すれば、挿絵が表示されなくなります。
*個人的に、今回のキャラデザは人によって好みが分かれると思います。
「これで免許皆伝ですかね」
「えぁ! いつのまに...」
「.....ボス戦の後も気を抜いてはいけませんよ」
特に足音を消したり、虚影を使ったわけでもないのに、気づかなかったのはマイナスポイントだな....
「まぁ、もう三時になりそうですし、ここらでお開きにしましょうか」
「今日はありがとうございました。早川先生を選択してよかったです!」
「そう言ってもらえると教えた甲斐がありましたね」
今回は因幡さんに戦闘だけをしてもらい、俺は魔石集めに専念していたため、取り分は九対一にすることにした。あとは、ドロップアイテムが出ればよかったのだが、低階層なだけあってドロップアイテムはゼロ。15階層ボスですらドロップしないのは流石に運が悪い気がする。
「あ、そうだ。これはお返ししますね」
そう言って差し出されたのは俺が貸した短剣だった。
「.....いや、それは因幡さんが持っておいてください」
「ぇ!?」
流石にこんなCランクの武器をプレゼントすることが馬鹿なことくらいは俺でもわかる。しかし、俺には武器が因幡さんを選んだことが見えていた。
武器に選ばれる。これは端的に言うと、武器の魔力が使い手に馴染むという事だ。
そもそも魔力を宿した武器には、剣魂のスキルも持つ星月夜ほどではないにせよ、意志のような物が存在している。それらは武器の持つ魔力回路に存在し、適性を持つ持ち主を気に入ると魔力のパスを繋げることがあった。
そして、そのパスがつながることで武器の能力値を100%引き出すことが可能になる訳だが、今の因幡さんはそのパスがつながりかけている状態になっている。しかし、本来は武器とのパスが見え始めるまでには1か月以上が必要だ。
たとえば、今俺が装備している流血の聖骸布などは既にパスが完全につながっているが、神の呪縛や天輪の楔とは未だにパスの兆しすら見えていない。当然ランクが高ければその分パスは繋がりにくいのだが、それにしたって6時間くらいでパスがつながるのは異常なことだ。
俺の持つ真銘契約を使えば、適性のある武器と強制的にパスをつなぎ、さらに持ち主の魔力を元に武器がスキルを獲得できたりするが、因幡さんにはそのようなスキルが無いので、純粋に適性がとんでもないのだろう。
せっかく自分に合う武器に出会ったのだ。引き離すのもなんだし、武器も死蔵されるよりは使われた方がいい。それに.....
今の俺の頭の中に渦巻く罪悪感。
ただ一つ言わせてくれ.... ダンジョンでミニスカはダメだろ!
ま、言ったらセクハラになりそうなので言わないけど....
とにかく、俺は今日精神的には犯罪者になってしまったことを少しでもうやむやにするために、この武器をプレゼントすることにした。
という事で....
【真銘契約】
因幡さんと武器にできたパスの兆しを強固にし、武器の格が上昇する。
【精査】
⇒ 種別 魔法武器 短剣 Name 心毒剣 Rank A+
材質 毒丹 魔鉄 耐久度 4000/4000
補正 攻撃 +1000 魔力 +1000
スキル 心毒(EX) 毒素付与(B) 補充(D)
総評 毒素をまとった短剣であり、その毒は魂を蝕む。
毒を吸収することで耐久度を回復することが可能。
真銘契約
.......................は?
うーーーーんっと..... なるほどね、天運か? それとも適性故に?
CランクからA+まで.... 意味が分からない。今までは+が付くか、よくて一段階上昇くらいだったのに。
何にしても、これを見られるのはまずいな....
真銘契約で帰属状態になっているとはいえど、殺して奪おうとする輩もいるかもしれないし。
ならば...
「因幡さん、一瞬だけ短剣を貸してくれませんか?」
「もちろんですよ」
受け取った短剣を右手に持ち、もう片手で格納庫からいつかにネックレスから抜き取った隠蔽のスキルの宿ったミスリル塊を取り出して、魔改造で移植する。完全にパスがつながったせいですさまじく移植が難しいが、繊細な魔力操作によってギリギリ成功した。
「ふぅ.... お返しします。あと、この武器を人前で使う時は隠匿スキルを使っておいてください。絶対ですよ」
「わかりました!」
「その短剣は差し上げるので、これからも探索を頑張ってくださいね」
「はい! 家宝にします!」
そのままダンジョンを出て魔石の清算が済んだ後にその場で解散となる。ちなみに、魔石は最終的に俺9の因幡さん1の割合で分配する流れとなった。壊れた短剣を買いなおさなくていいのかと聞いたが、さすがにこんなに凄いものを貰ってしまったので、ということらしい。ありがたく受け取っておくことにした。
そして、最後に...
「早川先生! LINEはやってますか?」
「え? あ、はい」
「交換してもらっていいでしょうか?」
「!? も、もちろん!」
今まで俺のLINEは、むさ苦しいおっさんが1、2、3、といった割合だったのに、急に女性比率が25%に増加した。