78 短剣講座・初級編
Xなるものを始めてみました。暗黙の了解的なやつが全く分からんので、なんかやらかしてたらバカヤローと感想をお願いします。
【精査】
⇒ 【種族】ワイルドボア Lv.20 【Name】 -
【進化数】0 【状態】-
【称号】 -
◇ 能力値
HP 132/132 MP 72/72 SP 92/92
筋力 150 魔力 83 耐久 132 敏捷 118
◇ 耐性
⇒耐性
衝撃耐性(E)Lv.6
◇ 種族スキル
野生の直感(C)Lv.3 外皮強化(D)Lv.6
◇ スキル
・武技スキル
⇒ 移動術
俊足(D)Lv.2 突進(D)Lv.5
レベルに比べて筋力が飛びぬけて高いが、代わりに魔力系の能力値は軒並み低い。しかし、そもそも魔力を使うスキルを持っていないので、弱点といえる弱点ではないな。だが、因幡さんが勝てない相手では無い。
更に細かく精査すると...
⇒ 【種族】ワイルドボア Lv.20 【Name】 -
◇ 能力値
知力 5 幸運 11 技量1 精神18
◇ 総評
突進攻撃を主体とした戦闘スタイルを取る。
とても弱い。
ちなみに、この四つの能力値は上限が100であり、細かく精査するとこんな情報が出てくる。
知力 思考領域の広さ
幸運 運命に干渉する力
技量 スキルを含めない技術の水準
精神 精神強度
そして、俺の能力値はこんな感じだ。
◇ 能力値
知力 46 幸運 100 技量 ERROR 精神 100
半年間もの間、寝るとき以外はほとんど戦闘する毎日を送ったおかげで精神と技量はカンストしており、特に技量は魔闘法の分も含まれているのか、表記がおかしくなっている。そして、幸運もいつの間にかカンストしていた。知力に関しては...
多分平均くらいだ。きっと....
これらの能力値はレベルアップでは一切上昇せず、地道に鍛える他に上げる手段がない。なので、最近は寄生してレベルを上げたやつを見分ける指標にもなっているらしい。ちなみに大吾は俺の指導の甲斐あって、技量は60で精神は80ほどと、たった一週間の特訓の割にはかなり鍛え上げられていた。
「さっそくお相手が来ましたよ」
そう言うと同時に、茂みからイノシシが顔を出した。
「!....」
因幡さんは少し驚いた様子を見せた物の、慣れた手つきで短剣を鞘から抜いて眼前に構えた。見た所、自身の戦闘スタイルは確立できているように思える。
しかし、そんな考えは次の瞬間に吹き飛んだ。
「やぁぁぁぁああああ!」
なんと、彼女はグレイトボアに向かって正面から突っ込んでいった。対して、グレイトボアは突進のスキルを発動して距離を一瞬で詰めてくる。
【魔力剛糸】【糸繰人形】
俺は少しあっけに取られてしまったものの、両者が激突する直前にすぐさまスキルで拘束したことで、なんとか大惨事は防ぐことができた。
「んきゃん!」
「ブモォォオオオオオオ!」
.....なんかものすごい犯罪臭のする、あられもない姿になっていた因幡さんからすぐに糸を外しておく。本人はよくわかっていない様子だが、はたから見れば多分.... 俺は手から出した糸で女性を絡め取ったHENTAIに見えたことだろう。
....今見た光景は、心の中にしまっておくことにした。
気を取り直して....
「因幡さん、なんで真正面から突っ込んでいったんですか?」
「えーっと...」
「.....イノシシの攻撃と言ったら何を思い浮かべますか?」
「うーん... 突進?」
「そうですね。突進してくる相手に正面から突撃したらどうなると思います?」
「ぶつかります!」
「そして、吹っ飛ばされますね」
「...は!?」
これは重症だ。
「せっかく相手の手の内がある程度把握できているんですから、それを逆手にとって弱点を突くのが斥候職の戦い方ですよ? あのワイルドボアは獣型モンスターなので知力が低いですし、レベルも低いので特殊なスキルを持っている可能性も低い。なので、例えば突進してきたらそれを横に回避して攻撃とか... そういうちょっとした工夫が大事ですよ」
「わかりました!」
反応は元気いっぱいなんだが.... なんというか、不穏だ。
ワイルドボアを絡め取っている糸を解くと、随分と興奮しているのか、すぐに因幡さんに向かってもう一度突進をしてきた。その攻撃に対し因幡さんは助言通りに横へと避けて、すれ違いざまに短剣の一撃を加える。言われたことをすぐに実行できるくらいには筋が良い。しかし威力が足りないのか、あまり深い傷は与えられていない。
そこでもう一度ワイルドボアを拘束する。
「因幡さん、短剣はいつも両手で握っているんですか?」
「? はい。こうしないと攻撃が効きにくくて... 攻撃スキルがあればいいんですがね」
「短剣はグリップが短いので、両手で握っていても力が伝わりにくいんです。むしろ可動域が減ったり、振りにくくなったりして逆効果なので、片手の方がいいですし、あとは両手で二刀流とか... 小盾を持つとかでもいいですね」
「う~ん.... でも攻撃力が...」
「急所を狙ってますか?」
「へ?」
「そもそも、短剣は細かい傷を蓄積する武器ですし、取り回しがいい分急所を狙いやすいので、きちんと急所を狙っていくべきですよ。たとえば... こめかみや眉間が効果的ですかね。今みたいに横に避けるなら、特にこめかみがいいでしょう」
「へ~ そうなんですね!」
他にも、あの暴君のような毒だったりのスキルがあれば短剣のスタイルは効果的だ。攻撃回数に応じて毒を蓄積できるだろうし.... もしもあいつの戦闘スタイルがそんな感じで完成されていたら、大吾のスキル縛りで戦っていたので負けてたかもしれないな。
「とりあえず..... これを使ってみてください」
そう言って取り出したのは、今考えていた暴君を見た後に武器を整理していて見つけた短剣だ。
⇒ 種別 魔力武器 短剣 Name 魔毒の短剣 Rank C
材質 毒丹 魔鉄 耐久度 1500/1500
補正 攻撃 +400
スキル 毒素付与(B) 補充(D)
総評 毒素をまとった短剣であり、
毒を吸収することで耐久度を回復することが可能。
「これは?」
「傷をつけると毒を付与できる短剣です」
「!? 魔力武器ってことですか?」
「そうですね」
「Aランクってすごいんですねぇ... ありがたくお借りします」
そして、傷を受けて更に激昂した状態のワイルドボアを解放すると、因幡さんはその突進をひらりとよけ、その首筋に切れ込みを二筋つける。
「どりゃあ!」
そこから更に跳躍で距離を詰め、振り返ったばかりのワイルドボアの眉間に短剣を突き刺した。かなり深く刺さった短剣を抜いて因幡さんが距離を取ると、ワイルドボアはそのまま泡を吹いて倒れ、光の粒子となって消えていった。
「おお!」
短剣の扱いが別人のように変わった.... 特に右と左の切り替えが上手い。それに、短剣の可動域をフルに生かして、更に刺突と斬撃をうまく使い分け出来ている。これで二刀流が初めてなのだから、間違いなく才能があるな。あと.... 多少は武器の性能もあるが、因幡さんのステータスではそこまで武器のステータスを出し切れないので、Eランク程度の武器でもやっていけるだろう。
「やりました~!」
「良いですね、これからは短剣の二刀流でやっていくことをお勧めしますよ」
「はい! 今までは貯金が無くて装備を揃えるのもためらっていたんですけど... こんなに変わるなら、多少無理してでも短剣をもう一本買った方がよさそうですね!」
「.....そんなに貯金が厳しいんですか?」
10階層付近でとれる魔石であれば、ある程度は余裕を持てるほどに稼げるはずだ。なんといっても、今の時代はダンジョンバブル真っ盛りであり、ワイルドボアが落とした魔石の買い取り価格が五千円ほど、低く見積もって10分に一体としても一時間で3万円は稼げるくらいだ。安全マージンを取って、一日三時間で9万円.... パーティーだったとしてもかなりの日給になるだろう。
「実は... 今までのパーティーでは、配分が悪くて...」
「あ... まさか一割だったり?」
「そうです」
あの三人衆はたしか3時間で15個くらいしか取れていなかった。つまり一日で七万五千円.... それの一割なわけだから、七千五百円..... 命を賭ける仕事の割にはめちゃくちゃ安いし、田舎ならともかく都会じゃ生活できないだろ。
ぶっちゃけ少し前の因幡さんとあの三人衆には、モンスターへの対処はともかくとして、技量にそこまで差は無かったのだが....
俺がものすごく渋い顔をしていると、まるでフォローするかのように因幡さんはこんなことを言った。
「まぁ... 斥候職は一割が基本ですからね、私は10階層まで潜れているので稼げている方ですよ」
斥候職は一割が基本.....!? いや冷遇されすぎだろ!
内心でかなりの衝撃を受けている俺に対し、因幡さんは何てことないように、むしろうずうずとした様子で手の中の短剣で手慰みに空を切っている。本人もかなりしっくり来たらしいく、これで戦闘スタイルは大体固まったので実戦訓練に移れそうだ。
◇ Side 大吾
ヒぇッ なんだか悪寒が....
〇 スキル解説コーナー
魔力剛糸
魔力糸に魔力を流すことで自在な操作と強度の向上を行うスキル。糸の両端を手元に持っておいて魔力を循環させることで、魔力の消費を最低限に抑えられる。
糸繰人形
糸を絡めた対象を自在に操るスキル。自分より魔力がかなり低い相手を自在に操ることができ、同じ水準でも動きを妨害できるが、筋力が高い相手だと引き千切られることもある。
ちなみに....
英傑序列内に斥候系の天職持ちは1%未満らしい...