74 師匠パート3の予感
時間も迫ってきているので、さっそく店を出て三階へと向かう。
エスカレーターを上ると、朝はごった返していた人通りは少し落ち着いてきており、スムーズに二階へのエスカレーターまで行くことができ、ライセンスを見せることで警備員さんに問題なく通してもらえたおかげで、約束の時間よりだいぶ早いが会長室についた。
試しにノックをしてみると、中から声が返ってくる。
「どうぞー」
「失礼します」
扉を開けると、対面に置かれたソファーの片方に百武さんが座っており、俺はその反対側へ座るように促される。そうして席に着くと、百武さんはすぐに話を始めた。
「今日話しておきたいのは、学校への編入についてです。編入日は諸々の手続きを含めて、今から二週間後の7月初旬となります。時間などは追って連絡するとして、制服の採寸等はここから徒歩十分くらいの所にある服屋で行えますね」
「ところで.... どこの学校なんですか?」
「あ... 言い忘れてましたね。日本探索者大学付属高校です」
いや、俺がこないだ侵入したところじゃん! まぁ、確かにそこになるだろうなとは思っていたけれども....
「それと、早川さんが編入するクラスは迷宮遭難者の受け入れを行っている特別学級でして、基本的な学習面では他クラスと変わらないのですが、カリキュラムの一部に模擬戦闘やダンジョン探索などの実践が試験的に導入されています。
他にも、入学時点でFランクライセンスが配布され、授業を受けることでEランクに、そしてダンジョン探索で成果を出すことでCランクに達するのが卒業に必要な単位の一つとなっています」
「なるほど...」
「早川さんのことですから、卒業に関しては心配ないのですが.... やはり模擬戦闘などでは実力をセーブしてもらうことになります」
こちらとしても目立つことは本意ではないし、実力を抑えるあてはあるので心配はない。
「わかりました」
「では、後の話は編入当日に担当教員の方から話があると思いますのでそちらに引き継ぎます。ここからは、指名依頼の件ですね」
話もひと段落したところで、百武さんの顔をよく見ると目の周りクマができており、以前に比べてかなり疲れが見え隠れしていた。なんでも、例のオークションの件で四苦八苦しているらしく、武器の流通経路の隠蔽や、巨額で買い取ったハイポーションの件などでかなり手を焼いたらしい。
チマチマと売却を続けるのも面倒なので一気にアイテムを売ってしまったわけだが、そのせいでこんな寝不足状態になってしまった百武さんを見ると少し思うところがある。なので、出来る限り依頼は頑張りたい所存だ。
「今回依頼したいのは、新人教育です」
「........というと?」
「組合でAランクの探索者が新人教育を行うという企画を開く予定だったのですが、それに参加する予定だったAランク探索者との連絡が取れなくなってしまいました。今回の依頼は、その欠員を埋めるという内容です」
「それは..... なんというか、ご愁傷さまです」
「よくあることですし、探索者は死と隣り合わせの職業ですからね。気にしなくていいですよ」
少し気まずい雰囲気になってしまったが、百武さんはすぐに話を切り替え、場の雰囲気を取り成してくれた。
「正確な日程としては3日後の土曜日で、Aランク探索者5名から参加者が指導者を指定するという形式になっています。参加者はレベル10から20限定で、今のところ100人ほどが参加申し込みをしています」
「意外とレベルが低いですね」
「いえいえ、レベル10以上というのは、かなり敷居が高いんですよ」
「そうなんですか?」
「今の探索者の割合としては、1階層のゴブリンを倒せずに辞めていくFランクが半数の5割を占めていて、レベル10相当の10階層を突破できないEランクが3割、10から20階層までに達したDランクが1割、それよりも上位が残り1割といった具合です」
「なるほど...」
「今回の企画は、将来の英傑候補を見つけるという目的も含まれているので、何か光るものがあると思った参加者がいれば教えてもらえると幸いです」
「わかりました」
ここらへんで、今日の話し合いはお開きとなった。それにしても新人教育か.... 戦闘に関することはある程度教えられるか? いや、そもそも教えた経験が無いから何とも言えないな。
........まぁ、百武さんに苦労をかけた分だけ最善を尽くそう。
おもいっつくそ日付をミスってました(修正済み)
探索者ランクのレベル帯
EX 調停者の円卓 レベル250〜または 五十層突破
S 英傑序列入り レベル100〜
A 三十層突破 レベル80以上
B レベル50以上 単独での20階層踏破、または特殊技能アリ
C 一定の依頼達成率 レベル20以上
D 十層突破 魔石の一定量納品 レベル10以上
E 一層突破 レベル2以上
F フリーランク