表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/119

73 武器屋は男のロマン

家にネットが開通してから早や二日。


俺達5人は三者三様な生活を送っており、バロムはゲーム三昧。アネモイは紅茶とお菓子を手にドラマを見漁っている。


しかし、問題もあった。


それは、フェルとクズノハの魔力問題だ。フェルは召喚を維持するのに魔力供給が必要で、ダンジョン内では運気調息を貸与することでデメリットを相殺していたが、魔力が特に薄いここら辺では魔力を取り込めずに伏魔殿で過ごすことになっており、クズノハも魔力でできた体を維持できないため、同じように伏魔殿で缶詰め状態になっている。


本人たちはあまり気にしていないが、できれば外でも自由に活動できるようにしたいので、俺は日々試行錯誤を繰り返しているといった今日この頃....






ピロリン ピロリン......



「ん? なんだ?」


ちょっと一息ついたタイミングで着信のような音が聞こえてきた。音の(みなもと)をさがすと、どうやらそれは机の上に置いていたライセンスからだった。ピカピカと点滅しており、その存在を主張している。


ライセンスを耳にあてると通話が可能という、ついこないだにネットで身に着けた知識の通りにしてみると、そこから百武さんの声が聞こえてきた。


「編入の件でお話がありまして、直近で空いている時間とかあったりしませんか?」


「ありがとうございます。ちょうど今日の午後は開いてますが」


「では午後2時ごろにこないだの部屋まで来てください。入るときはライセンスを警備員に見せるようお願いします」


「はい」


通話が切れると同時に光っていたライセンスが光を失った。今の時間は.... スマホを見ると午前10時、昨日の夜からFPSに熱中してオールしているわけだが、レベル999の体には何の影響もないのですぐに外出することにした。


なんでも、探索者組合の地下には様々な店が入っており、そこで探索者用品や安価なダンジョン料理の提供など、まるでショッピングモールのような施設になっているらしい。








三日ぶりに来た探索者組合は、今日も今日とて活気に満ちていた。


横並びになったカウンターには長蛇の列ができており、受付が終わった人は更にダンジョンへ入場する列へと向かっている。そして俺はというと、そんな人たちを尻目に人気(ひとけ)のないエスカレーターへ向かった。


エスカレーターを降りると、そこには所狭しと店が入っており、ダンジョン食品直売場やアイテムショップなど、様々な看板が掛けられている。いろいろな店がひしめいている中で、ひときわ大きなブースにはアイテムショップの文字、あそこが今日のお目当ての場所だ。


今は懐に余裕があるので、あまり目立たない装備も買っておきたいところだ。


何というか... 今保管している装備は大体がBランクを越えており、そのせいか無駄に装飾が豪華なものになっているので、人前で堂々と装備するのは憚られる。かと言って、ステータス補正もないような市販品の装備だと、少し早く走るだけでアニメのように吹き飛んでしまうし、モンスターの攻撃を受ければ一瞬で素っ裸だ。なので、最低限D... いや、Eランクくらいの物は欲しいところ...





「おぉ」


中に入ると早速目に入ったのは、木刀から魔鉄の武器まで、様々な装備がショーケースに並べられている光景だ。その光景にちょっとした高揚感を覚え、長い間そこら辺をふらふらしていると後ろから声をかけられた。


「おい、そこの坊主。ライセンスは持ってんのか?」


その野太い声の主は、スキンヘッドのおっさんだった。


「刃の付いた武器は研修を受けた上で2階層に到達したEランクからだぞ? F(フリー)ランクには販売不可になってるんだ」


「あー はい」


ライセンスを見せると、スキンヘッド店員はそれをまじまじと見る。それから店の奥に引っ込んだかと思うと、バーコードスキャナのような機械を持ってきてそれをライセンスにかざし始めた。


「マジモンだなこりゃ..... いやはや失礼した。 それにしてもその年でAランクたぁ、随分とやり手のようだな。 とにかく、お前さんならここのどんな品でも販売可能だぜ」


「それはよかったです」


「おう。おれはここの店長をしている郷田将司(ごうだ まさし)、一応Bランク探索者だ。探してる商品があれば何でも聞いてくれ」


「早川誠です、よろしくお願いします。っと、丁度良かった。この.... 探索者用スマホっていうのをさがしているんですが」


そういって、大吾にもらった普通のスマホにその販売サイトを表示する。そこに映っているのは一般的な物よりもゴツい見た目をしており、説明の欄には様々な耐久性を持っており、更に探索者の活動に耐えられる高性能スマホと書かれていた。探索者総合情報サイトでは、ビギナー探索者がまず用意するものとして真っ先にコレが挙げられるほどにポピュラーなものだとか。


「あぁ、それか。じゃあ奥に来てくれ」


そう言って案内されたのは、とても殺風景な部屋だった。


「探索者用スマホはライセンスと紐付けすれば、面倒な手続きだったりを自動でやってくれたり、あとはランクによっていろいろな機能が解放されたりもするっつう便利なヤツでな。ほら、この裏にライセンス専用のカードスキャナがあるだろ? ここにライセンスを差し込めば、自動で初期設定が完了するんだ。ちなみに、差し込んだ時点で料金が支払われるから、差し込んだ後に返品とかは不可だ」


そう言われて、一応もう一度確認してからライセンスを差し込んでみると、スマホが音と共に起動して、俺のライセンス情報が表示された。


「確認が終わったら下のボタンを押して、これでもう使用可能だ。ちなみに今使っているパソコンとケーブルで接続すれば引継ぎもやってくれる。あとは、初めから入っているこの"DunApp"が、いろんな探索者としての諸々が処理できるツールだな」


確認してみると、ライセンスに入れた電子マネーでの決算処理や、依頼リストだったり、色々な項目があった。


「ってことで毎度あり! まだ他に何か見ていくか?」


壁にかかった時計を見ると、既に時刻は1時半。随分と長い時間ショーケース周りを眺めていたらしい。


「この後予定があるので、また今度買い物に来ます」


「そうか、また来いよ~」

あ! 装備買うの忘れた...





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ