72 宝くじに当たると人生が終わる
キングと入ったレストランはすごかった。
俺が今まで食べていた自作ダンジョン飯とは比べ物にならない華やかさと味わい深さ。そして高級店らしい接客の丁寧さも相まって、その雰囲気が奥深い味わいを更に引き立たせる。
....うまかった。
そして、後日に組合所有の物件をいくつか紹介してもらい、結果として組合へ徒歩10分ほどのマンションの最上階に入居する運びとなった。なんでも、このマンション周辺が高ランク探索者の居住区となっており、東京ダンジョンが迷宮氾濫などを起こしたときに対処できるようにしているのだとか。
その日のうちに入居も完了し、一国一城の主になった今日この頃。
「はい! ということで、今から会議を始めていきたいと思います」
家を手に入れたはいいものの、一つ問題があった。
「議題は..... 家が狭いことでしょうか?」
「違います。十分広いです」
なんと5LDKに、屋上付き。俺の私室にフェルの部屋にクズノハの部屋を割り当ててもまだ余っており、更に憧れのゲーム専用部屋や、武器の工房なんかも作れる。リビングも広々としていてキッチンも多機能なため、文句などあるはずがない。
「ズバリ、吾輩のスマホとパソコンが無いことだ」
「....違うかな?」
「では家具ではないでしょうか」
「正解」
そう、家具がない。エアコンやトイレなどの業者が必要な物は粗方揃っているが、料理器具や机や椅子などが無い状態で住んでいるのはどうかと思う。
「という事で、今から家電、料理器具、家具などの諸々を買いに行きます」
「ふむ、行ってらっしゃいだな」
「右に同じです」
「お前ら二人、本当息ぴったりだな」
「「そんなわけがないだろう」でしょう」
やっぱり息ぴったりだ。
「私はお供しますよ」
「ガウ!」
「いや、逆にフェルとクズノハはダメだ。それと二人は来なくてもいいけど、あとで文句は受け付けないからな」
「....では、吾輩はパソコンを所望するぞ」
「良い紅茶とお茶菓子を買ってもらえるのであれば着いていきましょう」
「............まぁ、良いか。二人とも服は変えられるよな? そんなタキシードとドレスみたいなのじゃコスプレみたいで目立つ」
そう言うと二人は服を作り替えた。バロムはスーツを少しカジュアルにしたような服装で、アネモイは落ち着いた色合いのワンピース姿になっている。
「よし、出発しようか」
「高性能パソコンが吾輩を待っている!」
「お昼ご飯はすたーばっくすという所がいいです」
「はいはい」
「いってらっしゃいませー」
「ガウゥ!」
という事で、まず来たのは家電量販店。
ここでは電子レンジやドライヤーや冷蔵庫など、とにかくいろいろと買っておいた。買った品をそのまま格納庫に突っ込んでいると、それを見ていた店員さんがおすすめの品としてテレビや洗濯機を紹介してきて、促されるまま買ってしまったことは割愛しておく。
また、その二階にはパソコンショップがあり、バロムの暴走を抑えつつ二台分のパソコン部品を店員さんと相談しつつ買い揃えていった。バロムが金に糸目をつけないと言い放った結果、100万が二台で計200万円。店員さんも心なしか生き生きとしているように見え、バロムは梱包した部品たちに頬ずりをしていた。
「んおぉぉぉ、帰ったら早速これでいろいろなゲームをプレイして... アニメも見なければな!」
「よし、次は....」
「銀座、という所に行きましょう」
「えぇ.....」
「行きましょう」
「はぁ、分かったよ」
アネモイの圧に負けて銀座に行くことになった。アネモイは権能をフルに使ってここら一体を見渡したらしく、なんともお高そうな店に堂々と入っていく。
俺もしぶしぶ入ってみると、店内の壁には所狭しと茶葉の瓶が並んでおり、アネモイは店員さんを一人捕まえるとおすすめの茶葉を聞きまくり始め、俺とバロムは二人そろって店の端のカウンターのような場所で紅茶とケーキを食べていた。
それから待つこと3時間....
「満足です」
大量の茶葉と茶器を買い込んだアネモイは、つやつやとした表情で店を後にした。
その後は家の途中のショッピングモールで食料品や食器であったり、あとは服や下着を買い揃え、クローゼットやカーペットなども買っておく。とりあえず目についた物を買っていき、家に必要なものを一通り買い揃えたころにはすでに日が落ちていた。
「はー.... 疲れた」
そうして帰宅した後。そこからはバロムに急かされてパソコンの組み立てが始まった。苦節3時間、やっとの思いで二台のPCを完成させる頃には12時を回っており、部屋のレイアウトは次の日に回す羽目になった。今日だけで出費が500万円超、だがこれでもまだ口座に入ったお金の1%にも満たないのだから恐ろしい。
このままだと身を持ち崩しそうだ、主にこの二人のせいで。