71 住所不定の大富豪
GW中は毎日連載したい所存... ガンバルヨ?
「では、一旦場所を移しましょうか」
そう言った百武さんのあとに続いて部屋を出ると、もう一度最初の部屋に案内されてそこで金のライセンスを渡された。
「これがAランクのライセンスですか?」
「はい。一応説明しておくと、ライセンスにはEXからFまでのランクがあり、上から黒、赤、金、銀、銅、となっており、それより下は白で統一されています。」
S ランク以外は宝箱の配色と同じような色合いになっているようだ。ということは、世界のどこかにEXランクの宝箱を開けた事のある人がいるのかもしれない。
「早川さんは現在どちらにお住まいですか?」
「えーっと.... 住所不定ですね」
「であれば新居をお探ししましょう、組合では探索者向けの不動産も取り扱っているんですよ」
「いいんですか? ありがとうございます」
何から何まで至れり尽くせりだ。
「家賃はライセンスからの引き落としにするとして... 入居費用は掛かってしまいますが、予算はどれくらいありますか?」
「あ...」
「では武器の内一つ個人的に売却するのはどうでしょうか?
少し安くはなってしまいますが、オークションは最低でも一か月後になってしますし、ハイポーションも物が物なので正式な売却まで少し時間が掛かります。なので即金での支払いが良いのであれば、そちらの方がおすすめです」
「なるほど、ではそれでお願いします」
「であれば買取金額はこれくらいでどうでしょうか?」
そう言って提示された金額は50億円。大吾から入って来る額と同額だ。
.......俺は即決した。
「ではそれも契約書に加えて... これでいかがでしょうか」
そういって渡された絶対契約書の効果を精査で確認した後に契約を締結すると、その契約書はスキルスクロールのように燃え上がり、ダンジョンボスだった天使の持つデバフを薄めたような感覚がした。
「これで契約は完了です」
「ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
その後はライセンスの使用方法や内見の日程を決めるとお開きになる..... しかし、ここでキングが口を開いた。
「見損なったぞモモタケ。
お前こうなるのが分かってて初めからオークションの部分を二つだけにしてたな? それにAランクの武器は未だに世界で数個しか確認されていない。本当ならお前が全財産出しても買えないはずだ」
「ちょっとした配慮だよ。結果としてwin-winだ」
たしかに、希少価値も含めるとこの値段は破格なのかもしれない。そもそもAランクのアイテムは60階層相当のドロップアイテムであり、現状そこまで深くダンジョンに潜れるのは俺とキングの二人だけ。他に手に入れるなら高ランクの宝箱を引くしかない。
....だが、今回の売却はこちらとしてもそこまで損には感じていないので、特に思うところはない。なので、表面上は何事も無いように振舞ってはいるが、キングの纏う覇気によって冷や汗を流している百武さんに助け舟を出しておく。
「まぁ、俺も騙されたとは思っていないし、特に気にしてないよ」
「マコトがそういうならいいが、モモタケ。マコトは俺の戦友であり恩人であり親友だ。くれぐれも変なことはするなよ?」
「......分かっているさ。英傑上位、それも世界一位を騙すほど馬鹿じゃない」
二人の間にはまだ剣呑な空気が残っていたが、キングはすぐに手を叩いてその雰囲気を吹き飛ばした。
「よし! これで今回の要件は終わった。マコト、この後時間あるか?」
「あるけど... 何かあるのか?」
「なぁに、ちょっと一緒に飯でも行かないかってことだ」
時間は既に5時を過ぎており、昼飯も抜いていたのでちょうどいい。
「いいね」
「だろ?」
「であれば横の建物の五階にあるレストランがおすすめだ。本来は完全予約制だが、お詫びとして私の権限でねじ込んでおこう」
百武さんが紹介したのは、最近オープンしたというダンジョン産の食材をメインとした料理を提供する三ツ星レストランだった。
「気が利くじゃないか」
「俺、マナーとかにわかだけど大丈夫なのか?」
「そんなことは気にしなくても大丈夫ですよ。その代わりにキング、あとで宣伝よろしく」
「おう、じゃあ行こうか」
「了解。 あと、百武さん。今日はありがとうございました」
「ええ、どうぞこれからも探索者組合を御贔屓に」
〇コースメニュー
アミューズの盛り合わせ
季節のスープ
迷宮産小麦の焼き立てパン
森林階層野菜のプロヴァンス風
18階層の鮮魚 シェフの気まぐれ
ミノタウロス肉のステーキ 赤ワイン仕立て
マーダーモウのミルクケーキ アイスを添えて
コーヒー または 紅茶