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70 俺、大富豪になるわ

「あー.... しんど」


まさかEXランクのスキルである虚影を破れるスキルを持っているやつが、それも都合よくあの場にいるなんて思いもしなかった。EXスキルを破れるのは同じEXスキルだけなので、彼女がつかった破魔というスキルもそのランクのはずだ。EXスキル持ちって日本国内に8人しかいないと言われているらしいのに... 


というか、あの破魔って龍血の聖骸布(外套)のスキルと同じやつだよな... ランクは同じEXなのに俺の外套は自分へのスキル無効化だけで、あの娘のスキルの方は他人のバフまで剥がせるとか、性能違いすぎるだろ。





まあ、後悔しても仕方ないし、逃げきれはしたので、もう考えるのは辞めることにした。


そうしてスマホを見ると、既に時刻は正午を回っている。一応、待ち合わせの時間ぴったりだったのですぐに屋上から飛び降りて着地すると、遠目から見てもわかるガタイのいい男が一人見えた。


「待たせたか?」


「全然!」


サングラスと帽子はしているものの、固めた金髪と筋骨隆々な体躯はものすごく目立っているし、実質的な世界最強として写真がネットの海にあふれているのによくもまぁバレないものだ。


「大丈夫なのか? 立場とか」


「おん? あ、そうだな。ちゃんと気を付けてはいるんだ」


そういってキングが見せてきたのは、人差し指にはめられた指輪だった。微かに魔力の気配を感じる.... いや、これは隠蔽されているのか?


「ちょっと見てみてもいいか?」


「いいぞ?」


快く許可をくれたので、さっそく鑑定してみる。


【精査】




⇒ 種別 マジックアイテム 指輪  Name 義賊の指輪  Rank A


  材質 魔水晶 魔鉄  耐久度 781 / 790


  補正 敏捷 +500 魔力 +400


  スキル 認識遷移(S)


  総評 周囲からの認識を他へと向けることが可能な指輪





「すごいな、これ」



この認識遷移という武器スキルは一見すると俺の虚影の下位互換に見えるが、これはアクティブスキルではなくパッシブスキル。つまりは常時発動が可能な隠密能力という事だ。


確かにこれがあれば感知系のEXランクスキル持ちがいない限り、そうそう身元がばれることはないだろう。


「場所は三階だ」


そのままキングの後をついていくと、そこはやはり前に大吾が案内された重厚感のある扉の前だった。そして、その部屋にいるのは日本探索者組合会長であり、”律令”とも呼ばれる百武さんだ。


「初めまして、私は日本探索者組合の会長を務める百武勇仁だ」


「早川誠です、よろしくお願いします」


あの時とあいさつ自体はそこまで変わらない。


「こいつはな? 一か月くらい前にあった大規模討伐戦一緒に戦ったヤツで、まあまあ強い方だ」


「この私ですらまあまあとは... 流石は世界最強の探索者だな」


「だから俺は最強じゃないって」


「はいはい。で、今回はどんな要件だい? 見た所、彼は高校生くらいに見えるけど、用件は彼に関することだろう?」


「その通りだ」


「ちょっとステータスを見せてもらってもいいかい?」


「まぁ、いいですけど」


全身を覗かれるような魔力と反発する魔力を制御して鑑定を受け入れる。やはりこの感覚は好きになれない。


「レベル80!? 日本にこんな人材はいなかったはず.... まさか迷宮遭難者か?」


しかし、その百武さんの言葉にキングは素っ頓狂な声を上げた。


「え? どういうことだ???」


そういえば... 今朝にかけておいた虚飾の効果を解除し忘れていたなと、今更になって思い出した。



「あ、俺のスキルの効果だな。解除しておく」


虚飾を解除してもう一度覗いてくる魔力を受け入れると、百武さんは神妙な面持ちをしている。


隠者(ハーミット)......」


「そういうことだ」


「マジで面識があったとはな....」


「俺が嘘ついたことあったか?」


「アメリカンジョークだと思うだろ、普通」


今度こそきちんと俺のステータスが見えたらしい。だが、この人は信用できるのかは少し気になる所だ。


「キング、今更だが百武さんは信用できるのか?」


その質問にキングはすぐに答えを返した。


「保険は用意してある」


「そうか、なら安心だ」





「という事で、早川さん。今回の用件を聞きましょうか」


......高校編入の件と、探索者のライセンスとか、色々あるがまずは一番重要なことからだ。


「一つ目は、迷宮遭難者として探索者登録をさせてもらいたいです。で、遭難したダンジョンは近所の手ごろな.... 四級の土浦ダンジョンあたりにしておいてください」


「一応聞いておきますが、本当の場所は何処です?」


「茨城ダンジョンです」


「特級ですか...」


  「マコトのことで驚くのはまだまだここからだぜ」


「....つまりは自身が隠者であることを隠しておきたいという事でいいですね」


「はい」


  「え? 無視するの?」


百武さんは少し悩んだような様子を見せた後にその要件を受け入れてくれた。


「私個人の権限で、Aランクの特別ライセンスを用意します。これは私の担当する関東圏全域のダンジョンのみしか探索できませんが、普通ライセンスに必須の国主体の審査が不要となります。これならば早川さんの隠者であることを隠したいという点を叶えつつ、探索者としてのある程度の自由度を担保できます。

 しかし特別枠とは言えど、Aランクの義務である強制依頼があるという点だけは覚えておいて下さい」


「わかりました」


持ってないと不便だろうという事で、今日のうちにAランクライセンスを発行してくれるになった。なんでも、ライセンスがないと本来は探索者組合に出入りできないのだとか。 .....俺は今まで塀を超えて外に出ていたので、一度も正規の方法でここを出入りしていなかったことが判明した。


「あとは、探索者高校への編入をお願いしたいです」


「なるほど、それに関しては逆にありがたいですね。元々、学生の迷宮遭難者でかつレベルが高い場合は、カウンセリングや力の使い方を教えるためにも、探索者高校への入学が義務になっているんですよ」


「はい、わざわざ中卒で探索者専業になるのもアレですし」


「わかりました。申請しておきましょう」



という事で、とりあえず重要な用件は済んだわけだが...




「まだ大事なことが残ってるだろ?」


さっきからヤジを飛ばしているキングは真剣な顔をしてそんなことを言ってきた。


「あれだよ。アイテムの買い取り」


「あ、確かに」


その会話を聞いた百武さんは先ほどまでの少し苦い表情を一転させて期待を込めた視線をこちらに送り始めた。


「こう見えても私はアイテム鑑定士の資格も持っていまして、この場で鑑定してしまいましょうか?」


「おさまらないと思いますけど」


「! まさか収納系スキルをお持ちですか? 特級ダンジョンのドロップアイテム、それも最下層まで攻略済みならばこんな場所には収まりきらないでしょうね.... では別室に案内しましょう」


そうして案内されたのは地下一階にある巨大倉庫のさらに奥、何重もの防壁を備え付けられた金庫のような部屋だった。


「では、ここに売却予定のアイテムを出していってください」


....どんなアイテムを売却すればいいのか。キング曰く、たかだかCランクのアイテムでもものすごい値が付くとか。だが、Cランク以下のアイテムは、本当に必要な効果を持つものだけを残して鋳つぶし、リボルバーの素材などに再利用しまっている。


「現在、需要が大きいのはポーションなどの回復薬ですね。特にハイポーションなどがあれば高額で買い取らせていただきます」


「お! ちょうどいいです」


「どうやらハイポーションを複数お持ちのようですね」


格納庫から、常備しているハイポーション数百本をどんどん取り出して机の上に置いていく。その光景を見た百武さんは、顔を青ざめさせながらも素早くポーションの群れを後ろの棚に並べて行った。


十、二十、三十、四十、



「もう十分です! これ以上は無理ですからぁ!」


そうして四十本を突破したころで百武さんは、流れ作業でハイポーションを取り出す俺を静止した。


「じゃあ次はこれですかね」


そうして俺は、次に武器を三本取り出した。


「あ..... ああぁ?」


取り出したのは、Aランクの杖と槍、そしてBランクの大楯だ。Sランク以上のアイテムはコレクションのために売りはしないが、俺の使わないようなAランク装備は伏魔殿の肥やしになっていたのでこの機会に売り払っておきたかった。


「これ以上は、あがががががが」


「ブッハハハハハッ! 組合は破産だなぁ!」


「オークションで出せばぁっ....」


「あと、アクセサリーの装備なんだけど...」


「お! そっちは俺が買うぜ。金はライセンス経由で支払おう。ほれ、鑑定」


「え...Aランク!?」


百武さんはもう動かなくなった。


「俺が選んだキングにジャストな効果を持ってるやつだ。んー、一億円でいいぞ」


「さすがに安いし... 色を付けまくって買うわ」


「毎度あり、まぁもらえる分はもらっておくが、無理はするなよ。紹介料だと思ってもらってくれ、それくらいならいくらでもあるしな」


そんなこんなで何個かのアクセサリーをキング相手に捌いていると、いつのまにやら復活していた百武さんが書類を作っていた。


「こちら、キングさんから頂いた絶対制約書(ギアススクロール)で書いた今回の取引の書類です」


これがキングの言っていた保険だろう。


「効果は、お互いにある程度釣り合う対価を提示する事で、強制力のある契約を締結出来る... と言ったところです」


軽く目を通すと、内容は俺の情報の秘匿にプラスして初めに伝えた用件についても載っており、さらに今回組合に売る予定だった三つの武器の内二つがオークションにかけられるという内容が書かれていた。


なんとその開始価格はいち、じゅう、ひゃく、せん、まん................................................................................









「これでいいでしょうか?」


「はい! もちろん!」


この日、俺の金銭感覚は木っ端みじんになった。

◯ スキル解説コーナー


虚影


自身の存在を虚ろにするスキル。軽く使えば存在感や気配、認識を無くすことができ、強く使えば現実との乖離による攻撃無効化が行える。



破魔


全てのスキル効果を解除することができる。


ハイポーション 100万円


Bランク武器 億越え


Aランク武器 青天井

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― 新着の感想 ―
まぁピエログリフにも名前は出てなくても、こういう人が居るよって出てるんだし、隠す意味はよくわかんないけど、それだけ強いならアレやってコレやってって頼まれてばかりで自分のやりたい事やれなくなるの嫌だから…
学校に入学したい理由が分からない Lv999が桁が違うくらい格下相手に何を学びたいの? だいぶノリで生きてそうな主人公だけど、俺ツエーさせたい作者の都合で入学したいってキャラに言わせたんだろなぁとしか…
自分のレベルやらを、隠す方が面倒事が多くなると言う事に、なんで分からんのかねぇ?
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