68 時差って知ってる?
丸一時間ほど話すと、そろそろ日が落ちるころという事で解散となった。
キングからは飯でも食っていかないかと誘われたが、リア充の間に挟まって食事は今のメンタルではきついので、さりげなく断って日本に帰ることにした。
入替転移によって、日本の探索者組合に残してきた式神と位置を入れ替える。すべてのMPを使ってしまったのですごく気持ち悪いが、それも自動回復のおかげですぐに良くなった。
さて、三日後までどうするか.....
まずは、飯だな。
だが、取り敢えずは今のダサいファッションをどうにかしなければ、そもそも飯屋に入れない。
今の俺の格好は上下ジャージを基本に、下半身は探索者らしいレギンス。上半身は少し血の滲んだ外套を着ており、右腰には刀、左には般若面と銃をひっさげた、完全な犯罪者スタイルだった。
ここは探索者協会であり、それも建物の裏手なのでそこまで目立ってはいないが、この格好で市街に出れば、通報待ったなしだろう。
とりあえず、武器類は全て格納庫に突っ込んで、龍血の聖骸布も折りたたんで入れておく。レギンスと般若面もしまうと、これで完全に.... 深夜に近所のコンビニへ酒を買いに行くおっさん風ファッションの出来上がりだ。
.....レベルも上がって無駄な脂肪が減ったり、骨格が最適化されることで、前よりはかなりイケメンになったと思うのだが、ネット上にあふれている探索者のビフォーアフター系投稿と比べると、自分自身あまり変わっていないように見える。
「はぁ..... 軍資金はっと」
財布を漁ると、一万円札が.... いち、に、さん、よん.... 計四万円だ。ネカフェに3日泊まるとして一日....三千円くらいか? ×3で九千、余裕をもって一万はネカフェ代と考えて、もしもに備えてあと一万円も取っておく。残りは二万円か.... 豪遊できるな。
スマホで近くの飯屋を検索すると、丁度ここから少し離れた場所に回転寿司の店があるようだ。久しぶりだし、今日は奮発して大トロでも頼もうか!
と、思っていた時が俺にもありました。
「閉まっとるやんけ!」
そう、現在の時刻は朝の8時。飯屋なんてやっているわけがなかった。
「この時間帯に空いてる飯屋なんてあるのか?」
......ないな。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ..........」
今の俺の舌は完全に寿司を味わう専用の舌になってしまっていて、健康的な朝食を宣伝文句にしている定食屋の飯は.... おいしいだろうがちょっと食べる気にはなれない。
「どうすっかなぁ」
考えた結果、どうせ今の俺はレベル999で飯を食わなくても空腹はそこまで感じない。なので、夕方までネカフェで時間をつぶすことにした。