66 実は(笑)は強かった
「あえて手を出さなかったが、どうだった?」
やはりというべきか、あの(笑)を止めなかったのは大吾の実力を図るためだったらしい。俺が手助けしてしまったのが少し気になるが...
まぁ、大吾が自分で戦う時はもっと泥仕合を繰り広げるだろうが、別に勝てない相手だったというわけではないのでよしとしておこう、うん。
「へ? あ... ま まぁ、余裕でしたよ」
「だろうな」
大吾も上手く誤魔化せたので終わり良ければ総て良しだ。
『これからは耐久系のスキルに頼りっきりの泥仕合戦法じゃなくて、鏡刃とかを使いこなせるようにしてもっと消耗の少ない戦い方を身につけろよ』
『はい、身に沁みました』
大吾の声もかなり芯の入った本気の声だとうかがえる。これなら手本... になったかは怪しいが、戦った甲斐はあったというものだ。
「てことで、新入りの大吾だ。異名はあとで決めるとして... 承認する奴は全員挙手!」
「異名決めるって、参加するの前提じゃない」
その場にいた(笑)と俺以外の全員が手を挙げると、キングは満足そうに椅子に座り今度は大吾に謝辞を述べた。
「大吾、今回は試すようなことして悪かったな。そこの馬鹿が暴走したからなのはそうだが止めなかったし。だが、馬鹿をいくら殴っても問題はないんだが再起不能にはしないでくれると助かる」
「はい、一応こんなのでも調停者の円卓の一人として平和の為の抑止力になっていますからね。戦えなくなったりしたら混乱が起きるでしょうし、こんな状態のヤツに私情で手をあげたりはしませんよ」
「感謝する」
一旦大吾のお披露目? みたいなことはここで終わり、またキングが司会進行を始めた。
(笑)は、キングが召喚しただろう火の精霊の持つ担架に乗せられて運ばれていった。
「改めて本題に入ろう。今回は以前の会議でも出ていた、わざわざここまで来るのがめんどくさいという嘆願についてだ。」
キングはそう言うとイベントリから透明な結晶を十個取り出した。
「これは俺がこないだとってきた通信結晶という物だ。オンライン会議とかだと盗聴の恐れがあるからな。全員に渡すから毎月の初めに定例会議を行うことにする、ただ、周囲に盗聴器とかあれば意味ないからそこらへんは注意しといてくれ」
全員に結晶がいきわたるとキングが解散と言い、すると一人、また一人と席を立ち、この部屋を出て行ってしまい、そうして残ったのはキングと大吾のみとなった。
..... え? 早くね?
と、そう思ったがこれはこれでキングと話すチャンスができた。
「では私も...『待った』」
[酔生夢死]
そのまま大吾は膝から崩れ落ちていびきをかき始める。
[空間封鎖]
「大吾!? 何が起きた!」
そこで俺はおもむろに影から姿を現した。
「へ?」
「久しぶりだな、キング」