5 探索
今俺は、自分の目覚めた場所を中心として、【隠密】のスキルを使いながらダンジョンを探索しているところだ。もちろん真横にはフェンリルを配置し、敵襲への対策は万全な状態でだ。
しかし、まだ一つの問題が残っていた。
「靴が... 欲しい」
そう、靴がない。しかも、目が覚める前はベットで寝ていたために、今の俺は靴下すらも履いていなかった。まだ床が石畳でできていて耐えられるが、それでも裸足は冷たくて疲れるし、もしも出口がもっと奥の... それこそ岩肌がむき出しの所にあったとしたら...
考えただけで恐ろしい、足つぼマットレベル99じゃないか。
「なあフェンリル... いや。長いからフェルでいいかな。よしフェル、靴の入った宝箱とかどこにあるかわかるか?」
「グゥル..」
フェンはちょっと残念そうな顔をした後、顔を横に振った。
「まあ、そう上手くはいかないよな」
寂しさと恐怖を雑談によって紛らわしつつ、一本道をひたすら進んでいく。フェルは人の言葉を理解できるほどの知能を持っているようで、唸り声しか出せないけれど反応はしてくれる。それだけで、この薄気味悪いダンジョンに居るという恐怖心は、だいぶんマシになっていた。
そうして洞窟内を探索し始めて30分くらいが経った頃、ギリギリ目視できるくらい遠くに狼がいるのを発見した。
でも、その距離が明らかにおかしい。なぜか200mは離れているはずなのに、はっきりと輪郭が見えている。俺は視力0.1の眼鏡ボーイのはずなのだが?
これはアレか。ステータスにあった五感強化というスキル。
【解析】
⇒ 【種族】 ハイウルフ Lv.158 【Name】 -
【進化数】 0 【状態】 疲労 睡眠 回復
【称号】-
◇ 能力値
HP 712/732 MP 520/820 SP 455/668
筋力 710 魔力 830 耐久 695 敏捷 1056
◇ 耐性
⇒耐性
氷属性耐性(C) Lv.7 物理耐性(C)Lv.8
麻痺耐性(D)Lv.3 毒耐性(D)Lv.1
◇ スキル
・武技スキル
⇒爪術
尖爪(C)Lv.5 硬爪(D)Lv.10
・魔法スキル
⇒水属性
水牢(C)Lv.7 氷槍(D)Lv.16
⇒風属性
ウィンドランス(D)Lv.20
・特殊スキル
⇒パッシブ
超嗅覚(B)Lv.3
魔力強化(C)Lv.8 身体強化(D)Lv.18
⇒アクティブ
回復冬眠(B)Lv.4 魔力集中(C)Lv.6
「あれ? 弱くね?」
正直驚いた。
レベルは俺よりも高いが、スキルだけならレベル的に格下である俺よりも少なく、フェルに比べたら言わずもがな。そもそものレベルに、二倍近くの差があった。
「あれなら俺でも勝てるかな?」
ちょうど狼は疲れて寝ているようで、スキルを使って近づけば、不意打ちで倒せるのでは?という考えが脳裏をよぎる。
歩くだけでドスンドスンと音がなるフェルは、一旦ここで待機していてもらおう。そして、俺は【隠密】スキルを使用して、目の前の狼に接近していく。
一度でも敵としてフェルに覇気を当てられた結果なのか、1メートルの巨体を持つ狼を前にしても恐怖を感じない。
そうして狼の真横まで来たが、起きる気配は全くない。
そのまま剣を両手に持ち腕に力を込めていく。そこで、昨日までではありえないほどの力を手に込めているのがわかった。言うなれば力を出せる上限が上がったような、そんな感じ。
そして、剣を狼の首に向かって振り切った。
ザシュッ...
その一撃は、正確に首へと突き刺さる。狼は一瞬目を開いたが、声を発することもなく光となって消えていった。初めて生き物を殺したというのに、罪悪感や不快感はあまり感じない。拍子抜けだ。
「あっけなかったな」
寝込みを襲ったとはいえ、格上をあっけなく倒してしまった。そして、同時に体の奥から暖かい何かがあふれてくる。
「これは... レベルアップか?」
どうやらその通りのようで、解析してみるとレベルは112になっていた。あと、光となった狼のいたほうを見てみると、大きめのビー玉サイズの魔石と、生肉が一切れ落ちている。
【解析】
⇒ Name ハイウルフの生肉 Rank C
総評 食用に最適な肉
「なるほど、食用か」
今はまだ、この肉を調理できる道具も持っていないし、生肉を食べるほど飢えてもいないのでこのまま置いていこうと考えたが、
「いや待て... この洞窟内でまともな食糧が簡単に手に入るのか?」
頭の中では、自分が飢え死にする光景のイメージが容易に想像出来る。なので、肉は着ていたジャージで包んで持っていくことにした。




