62 盗聴器は破壊せよ
時間がたつのは早いもので、初日はゲームをしたり配信を見たりしているだけで過ぎ去り、飛行機に乗った後はネットが切れて抜け出そうか迷ったものの、魔闘法の練習をしているうちにいつの間にか飛行機を経由して国を渡り会合当日になっていた。
俺今不法入国してる....
とかそんな思考は半年間のバイオレンスな迷宮生活で消え去っており、逆に初海外に少し期待している自分がいる。そして大吾はというと朝昼晩に高級料理のフルコースを堪能しており、随分と豪勢な生活をしているが、本人曰くおっかなびっくりで夜もあまり寝れないらしい。
まぁ、そんなことは置いておいて。やってまいりましたニューヨーク。
大吾の目の前には専属の案内人がおり、後ろには日本政府が付けた外交官が佇んでいる。
「初めまして、ここでは貴方様の事を"サード"と呼ばせていただきます。そして私は今回の案内役を務めさてていただきますジェームズと申します。会話に関してはこちらの通訳スキルの付与されたアイテムをお使いください」
そういって渡されたアイテムを一応だが鑑定すると、案の定変なスキルが付いていた。
⇒ 種別 マナアイテム ネックレス Name 翻訳の首飾り Rank C
材質 魔石 魔鉄 耐久度 651/760
補正 -
スキル 翻訳(C) ( 隠蔽(B) 盗聴(C) )
総評 全ての言語を翻訳できるアイテム、
隠蔽スキルにより機能の一部が隠蔽されている。
『盗聴のスキルがくっついてるぞ』
『! マジですか』
『あぁ、盗聴スキルだけ破壊することもできるが』
『お願いします』
『じゃあそれをポケットに入れてくれ』
影を通って指をポケットの中に出してネックレスに触れて、スキル 魔改造により隠蔽と盗聴のスキルを引き剝がす。一応このスキルは役に立つかもしれないので、ミスリルの塊に仮移植して保存しておくことにした。
「あちらに見える天空城こそが世界最強の探索者、覇王キングが攻略し自らの居城とした世界唯一の天空型フィールドダンジョンです。あの城が調停者の円卓の開催地で、移動にはニューヨーク探索者組合の最上階にある転移水晶を使います」
一通り話し終えた案内役は入場は2時間後だと伝えると座席に座った。
『なんかしょっぱなから不安になってきましたね~』
『がんばれ、何かあっても俺が守れるだろうし』
『お、俺にそっちの気はないんですが』
『やっぱり半殺しくらいまでは控えていようかな』
『冗談ですやん! ハハハ....』
『俺の50億のために頑張ってくれ』
『わざわざ言い直す必要ありました?』
◇スキル解説コーナー
魔改造(EX)
装備に刻まれている武器スキルは魔力回路という魔力の線で成り立っている。このスキルは元々主人公が剣の鞘を作る過程で発見した魔力の線を切らないように加工してスキルを残す技術の発展版で、己の魔力で魔力回路を包み込み素材から剥離しほかの装備に移植することができる。