57 金には勝てない二人
◇ side 大吾
令状という単語に少し... いやかなり動揺してしまった自分が今となっては恥ずかしい。
実際問題、俺がダンジョンに探索者登録をせずに潜ってるという法的根拠は存在していない。俺の事を探し出した方法にしたって何かしらのスキルによるものなので、今の法律からするとその法的根拠は無いに等しいからだ。
むしろ相手が法治国家の大本の犬である分、無法者を相手にするよか随分やりやすい。であればこの提案はうまみの全くないただの依頼に過ぎないし、どうせ茨城県のほぼすべての地域は避難勧告により無人の無法地帯と化しているから移転先には困らない、あとは何とかして例のスキルの対策を考える必要があるが...
今はあまり思いつかないものの、最悪全員で遭難者として探索者登録した後に、新規にできるという探索者組合のクランシステムを利用して組を復活させればいい。だが、一方で気になるのは今回の定期便についてだ。
俺らのシマも特定できる程の感知系スキルなんてそうそうあるもんじゃない、はずだ。であれば連絡係が吐いた可能性の方が幾分か高い。アイツらレベル上げて調子乗ってたしな... 検問で引っかかったらサツ相手でもすぐにおっぱじめそうだ。
アニキを東京まで送るなら、ちゃんと保護されたという名目で入らないと面倒なことになるだろうし、次回の定期便までお預けになりそうだ、申し訳ないな。
そんな逡巡により訪れた沈黙を破って相羽さんが口を開いた。
「今回の褒賞としてこちらから用意できる金額はこちらになります」
ちらっと視界の端で紙切れを捉えるとそこには0が一、二、三.....
「やります!」
しかし差し出された一枚の小切手、これを見た瞬間俺の理性は吹き飛んだ。0が10個並んだその数字は、元々そこら辺のチンピラと同程度でたまたま初期スキルの恩恵でお山の大将を張れていた俺にはまさに猛毒に等しい。
気づいた時にはそんな言葉が口から洩れていた。
◇ ◇ ◇ ◇ side 主人公
「何言ってんだアイツ、正気か?」
なんでそんな直ぐにあのうさん臭い話に乗っかるのか...結局二人は更に話を詰めているようでその会話も聞こえてくる。
「ご協力ありがとうございます、では出発はいつになさいますか?」
「準備したらすぐ行きましょう! それと何人か連れて行きたいんですが」
「申し訳ありませんが同行者はお連れできません」
「え? あ..」
露骨にテンションが下がってるな。同行者って俺の事連れて行こうとしてただろ、あいつ。まぁ確かに助かるけど断られてるじゃん。
「分かり、ました...」
「では準備が出来たら声を掛けてください」
そう言うと三人は車に戻っていく、そして大吾はすぐに自室に戻り荷物をまとめ始めた。
「大吾?」
すぐに影から出て大吾に声を掛けると大吾は開口一番話を始めた。
「アニキ、ちょっとお願いが...」
「途中までは隠れてついていきたいんだが」
「そう言わずに、ね? 旅は道連れ世は情けってやつです、それに身元保証人がいた方がいいですよ~」
「え~」
「半分でどうですか?」
「つまり?」
「50億です」
.....しょうがないなぁ~