55 相談とは...?
例のレベル上げから五日後。あれから俺は毎日惰眠をむさぼるつもりだったものの、なんやかんやダンジョン内の習慣のおかげで早寝早起きを自然と行い、モンスターを狩らないと体がうずうずしてしまったので、結局は周囲のモンスターを掃討する日々を送っていた。
だが、1時間ほど市役所の周囲を周遊しているだけであとはゲームしかしていないので、実質ニートと言える最高の生活を手に入れている。
その中でも意外だったのは、大吾の部下たちは面倒見の良い奴が多く、一緒に飯を食ってモンスターを狩っているだけで自然と打ち解けることもできた事だ。
初めは某第一村人をイメージして警戒もしていたが、そいつは「カタギに手ェ出してんじゃねぇぞ!」と、強面の村田さんにしめられていた。
ちなみに村田さん、顔に似合わずV豚兼プリキュアガチ勢であり、趣味の面で結構語ることができたのはここだけの秘密だ。
そして朝飯をちょうど平らげたところで、大吾がやってきた。
「アニキ、ちょっと相談なんですが... せっかくランクが高いのに使い道のよくわからないスキルがあって、そのスキルの使い方について何か知っていることはないかと聞きに来たんです」
「特段やることもないし、いいぞ」
「あざっす」
話を聞いてみると大吾が言っていたのはSランクのスキル、闘気自在のことらしい。そこで「自在」という単語について、俺は自身の持つ魔力自在のことを思い浮かべた。
「闘気... これは何なんだ?」
その問いに大吾は少しの間を置いて答える。
「これは何というか.... そうですね体の中のあったかいモヤみたいな物ですかね。このスキルを使ってそのモヤを一点に集中させてその部分を強化するんです」
体の中のモヤ、確かに俺が初めてMPを操作した時の感覚もそう表現できる。ということはまさか闘気というのはMPと対極をなすSPのことではなかろうか。
「試しに闘気を俺の体に流してみてくれないか?」
「それって大丈夫なんですか?」
「俺のHPは7000超えてんだぞ?」
「絶対大丈夫ですね、やってみます」
座禅を組んで両手を繋ぎ、少し目を閉じていると手のひらに何か熱いものを感じる。そしてソレは少しづつではあるが腕を通り、体全体を循環し最終的にはそのまま消えていった。
MPとは違い引っ掛かりを覚えることもなく、ゆっくりと浸透していくような感覚.... 回復や身体強化に多く使われるからだろうか。
そして大吾のSPと融和して揺れ動く自身のSPの感覚.....
.....これを感じたかった!
手をすぐに放して、そのSPを動かし始める。
没入を使いつつSPを操作しようと奮闘していると、初めて30分ほどで最初はただゆらゆらと動くだけだったSPがだんだん体の中で循環し始め、次第に自分の意志に感応して動き始めた。
「ウッし! 成功!」
「何がですか?」
いつの間にかソファーでスマホをいじっていた大吾が声をかけてきた。
「体内のSPの操作だ」
「?」
分かっていなさそうな大吾は置いておいて、改めてSPを観察してみると魔力よりよほど扱いやすい力と言えるだろう。体内を自由自在に動き周り、他人のSPともすぐに融和する。
試しに全身にSPを循環させその流れを高速化すると、魔闘法には新たなスキルが追加されていた。
「全身にSPを循環させているから闘気脈動とか」
握りこぶしにはいつもの5割増しくらい力が籠められ、その強化倍率はかなりいいことが伺える。そしてよく見てみると、魔闘法の魔力自在は魂魄自在に変わっていた。
「魂」は、人の精神をつかさどる気。 「魄」は、人の肉体をつかさどる気。