52 世界最強
「あの、この一位って...」
「隠者の事ですか。この人は日本所属のはずなのに探索者登録もしないでダンジョンに潜っているので、フェイカーかアウトローだって言われてる人ですね。ただ先日の事なんですが、レベル600からいきなり999になってたんで、もうアーティファクトがバグった説が濃厚になってるんです。以前は宇宙人説だのダンジョンマスター説だの、あとは迷宮遭難者だとか、色々な説が出てたんですけどね~」
「なるほど...」
大体自分の置かれた現状は理解できた。
「石山さん、俺のステータスを見てみてください」
「いいんですか?」
体に流れる魔力を緩めて鑑定スキルを受け入れる。大吾は少し黙った後にこう言った。
「アニキィ! 一生ついていきます」
「一応ですが、他言無用でお願いします」
「当たり前ですよ、まぁ言ったって信じてもらえないでしょうがね。これからはタメ口でいいですし、名前も大吾と呼んでください」
「わかり... いや、分かった。大吾は今日から俺の下でレベリングを行うわけだが、レベルは200くらいでいいか?」
「マジすか」
「マジだ、ということでスマホを..」
「はいこちら、最新機種の新品です! SIMカードは無いんですが...」
「そこらへんは大丈夫だ、それとwifiはあるのか?」
「はい、施設全体にフリーwifiが張ってありますんでそれを使ってください。では他の組員にも言い聞かせてきますんで」
そう言うと大吾は部屋を出ていった。
ということで、スマホの初期設定を粗方終えるて、あとにやることは決まっている。
「久しぶりだなマイアカウント!」
その日はそのまますべてソシャゲに消えた。
そして翌日...
応接室から出てきた俺の目の前には大吾がいた。
「朝飯はどうしますか?」
「もう食べたから大丈夫だ。」
「では早速ダンジョンに?!」
「そうするか」
意気揚々と装備を取りに向かった大吾を見送った後、
「あ、忘れてた。すまん」
フェルが市役所の入り口で物凄い顔をしながら立っていた。
「グォ」
「ごめんて」
魔力の供給が薄いせいで不機嫌な顔をしたフェルをなだめて、伏魔殿に入れ終わるころには30分が過ぎており、少ししたら奥から重装備をした大吾が姿を見せた。全身が鉄でできたフルプレートメイルに身を包んだ大吾は随分と暑そうにしており、手に持った大剣は大きすぎて扱いきれていない様子。
「大丈夫か?」
「へ? どういうことですか」
「ちょっと鑑定してもいいか?」
「勿論いいですよ」
[精査]
⇒ 【種族】人間 Lv.37 【Name】 石山大吾
【天職】 重剣士(D) Lv.3 【状態】-
【称号】 探索者(土浦ダンジョン:6階層)
HP 228/228 MP 190/190 SP 217/217
筋力 242 魔力 182 耐久 227 敏捷 210
◇ 耐性
⇒耐性
苦痛耐性(D)Lv.4 恐怖耐性(E)Lv.5
◇ 職業技能
⇒重剣士(D) Lv.3
身体強化(D) Lv.3 ダッシュ(E) Lv.4
大剣術 Lv.2 – スラッシュ(D) Lv.3
◇ スキル
・武技スキル
⇒ 移動術
跳躍(D)Lv.8
・特殊スキル
⇒パッシブ
強者感知(B)Lv.3
⇒アクティブ
闘気自在(S)Lv.1 眼識(C)Lv.11 懐柔(D)Lv.15
⇒ 種別 大剣 Name 黒鉄の大剣 Rank D
材質 黒鉄
耐久度 125/150 補正 攻撃 +75
スキル -
総評 一般的な黒鉄製の大剣
⇒ 種別 全身鎧 Name 鉄の全身鎧 Rank E
材質 鉄
耐久度 31/50 補正 耐久 +10
スキル -
総評 鉄製の鎧
....弱いな
「そんな鉄屑を着るくらいなら何も着ない方がましだ。あとはその大剣、デカすぎて扱えないだろ。これ使え」
と言って取り出したのは、予備として格納庫に入れていた大太刀だ。
少し取り回しのいいサイズで、大剣術のスキルも発動可能なので大剣初心者にもおすすめの一品となっており、星夜月ほどではないものの使えば使う程に強くなるのが特徴だ。
「更に [真銘契約] っと」
⇒ 種別 魔剣 大太刀 Name 不倶戴天 Rank S+ up!
材質 殺生石 暗鉄
耐久度 5500/5500 補正 攻撃 +3000 筋力 +1000
スキル 殺戮応酬(S) 怨念吸収(S)
不壊(A) 血判(B) New!
総評 殺した種族に対しての特効を獲得する魔剣、
更に殺した相手の怨念を吸収し強化される。
またこの剣の刃に2人が血を吸わせ宣誓をすることで、
制約を作ることも可能。
真銘契約
「これで良し」
「すごい剣ですねアニキの武器ですか?」
「俺の武器はもっと強いぞ、これは大吾用だ」
「へぇあ!?」
「死蔵してるし、これくらいなら100本近くあるんだよ」
古代都市階層のゴーレムたちのドロップアイテムは、5割が鉱石、3割が武器や防具、残りが回復薬などだった。
そこで3か月間毎日15時間くらい狩り続けていたおかげで、Sランクの装備は千を優に超えており、ボスからはEXランクの装備もドロップしていた。そしてAランク以下は言わずもがな。
自分用のアイテムや予備だったり、危険すぎるアイテムは誰にも渡すつもりはないが、俺のメインは取り回しのいい短剣などが多いので、これくらいなら手放しても問題はない。
「かっ、家宝にします! あと、改めて一生ついていきます!」
そういって恐る恐る剣を受け取った大吾は、魅入られたように刀身を見つめている。
「はい、じゃあその鎧を脱ごうか」
「え?」
「いや、え?じゃなくてさ。そんなの着けてても重いだけで防御力皆無だから」
百面相のように顔をころころと変える大吾は、遂におかしな質問をし始める。
「ダンジョンに行くんですか?」
「さっきもそう言っただろ」
「鎧もなしに?」
「そんなの着ててもすぐ死ぬぞ」
その俺の発言に怪訝そうな顔をしつつもちゃんと鎧を脱ぐあたり、ある程度こちらを信用してくれているようだ。
「それじゃあ行くぞ」
「今回行くのはどのダンジョンですか?」
「ついてくれば分かる」
そういって手を出すが大吾には伝わらなかったようだ。
「?」
「ちょっと手を握ってくれ」
「はい? わかりました」
握った瞬間に神足通を発動し俺のホームグラウンドダンジョンの前に移動すると、最初は「瞬間移動⁉」と興奮していた大吾は何故か洞窟に目を向けた瞬間気を失ってしまった。
追加情報
フェイカー:探索者登録をする過程で偽装を行い登録した人の事。
アウトロー:探索者として許可を得ずにダンジョンを探索している人の事。
大吾side
手を握った瞬間:周りの景色が変わった! まさか瞬間移動⁉
↓
特級ダンジョンを目視:あ... おかん、親孝行できなくてごめんな...(死)