46 目には目を歯には歯を、チートにはチートを
「グゲィヤヤヤヤやヤヤァァァァァァ」
尻尾を切り落とされた衝撃による驚愕が風から伝わってくるが、こちらからしても驚きだ。
何故って? そりゃぁ体を半分に切り落とされたのに生きているからだ。
既にMPも尽きてHPもミリ、息も絶え絶えの癖に存外にとしぶとく、放たれたリヴァイアサンの怒気は権能の影響もあって、魂力の操作が乱れるほどの圧がこもっている。
そして、その直後巨大な水しぶきが起こる。大瀑布かと思ったが、こいつの魔力はもう尽きているはずで、自動回復でもこんな短時間では回復しない。
そんな疑問もお構いなしに迫る津波を見ると、その中には何千何百というような魂が詰まっていた。これが見えるのも森羅万象の効果とアネモイの魂力に慣れた影響だろう。
直ぐに神足通で回避するもそのすぐ真横に魂を鎧のように纏った尻尾が現れる。
「うおっ」
回避自体は容易なものの、先ほどまで立っていた小島はその尻尾に触れた瞬間赤黒く染まり消え去ってしまった。
『呪いですね』
頭の中に急にアネモイの声が響いた
「びっくりするだろ!」
『そんなことは置いておいて、多分ですがリヴァイアサンの権能は呪。それで魂を縛ってそれらを攻撃に転用しているのでしょう』
「触ったら?」
『あの呪いは権能によって煮詰められ強化されています。いくら権能の力を注がれているとはいえ、直接触れれば一瞬であの小島と同じ運命をたどりますよ』
「倒す方法は?」
『あの呪いは魂を支配する力があるのでしょう、その魂を利用して傷を再生させたり攻撃したり、つまり一撃で倒すか魂を使い切らせるかのどちらかです』
「もうSPないんですけど」
『はい』
「どれくらい魂のストックが残ってるんですか?」
『モンスターが蘇らない所を見るに相当量... とだけ』
「無理ってことね」
HPはすでにさっきの紫電一閃でほとんど残っていないので、リヴァイアサンを打ち破るのに必要なのはあの鎧を破る力だけ。
「新スキルを試すのにはちょうどいいのかもな」
幸い、まだ銃弾が残っている銃を懐から取り出し、装填したうえで正眼に構える。弾丸に使われているのは65階層のボスであったゴーレムの物で、そこに魔力を注ぎつつリヴァイアサンを見据えると、案の定自身の力に酔っている様子でこちらを見て、再生された尻尾を振りかざし波をこちらに寄せてきた。
そりゃ俺だって、この痛みがなければ全能感からくる脳汁で理性が吹き飛んでもおかしくないだろうとは思う。
しかしそれは致命的な弱点だ。
「もうMPを温存する必要もないんでね」
天災地変と永久凍土をMPの半分を使って放つが、勿論これだけでは本来は止まるはずもない。しかし、氷が波に届く瞬間に波全体へと権能入りの神鳴をお見舞いし、そのまま凍結することで氷の防壁が出来上がる。
「グギャアァアアアアアアアアアア!」
先ほどとは一転し発狂するリヴァイアサンを尻目に、こちらはやっと魔力の装填が完了した。
使うのは神鳴と超電磁砲、両方とも過充電を使って魂力を注ぎまくったこの一撃をあの呪いの鎧は耐えられるのか。
引き金を引き撃針が魔石にひびを入れると同時に紫電が走り、その熱量は雷属性無効を貫通して掌を焼く。
そして、放たれたミスリルの弾丸は超電磁砲で加速され雷のごとく空を割いた。
氷壁を破壊し飛び出してきたリヴァイアサンの額に、その魔弾はきれいに着弾し、一瞬鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたリヴァイアサンはすぐに絶叫を上げる。
初めの弾丸とは比べ物にならないほどの雷撃がその身を襲い、既にHPが1割を切っていたリヴァイアサンからすればオーバーkillもいいところ。その身は文字通り灰燼に帰し赤黒く染まっていた海は元の青色を取り戻した。
「は~ あぶねー」
「そうだったか?」
後ろにいるのはいつの間にか避難していたバロムで、ちゃっかりと小島から逃げおおせていたらしい。
「本人がそう言っているんだからそうなんだよ」
体が熱くなりレベルアップの感覚が凄い事になっているがもう疲れたので、今日はアイテムだけ拾ったら早く寝よう。
主人公は朝の6時からトレーニングを始めて夜の6時まで探索を毎日しています。(社畜)