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45 人の限界

ダメージは負ったもののアネモイは無事であり、既にリヴァイアサンのMPは底をついたはずだ.... 


そう思っていた時期が俺にもありました。


「マジかよ...」


大瀑布が過ぎ去り凪いでいた海が突如として波立つと、おぞましい気配が漂い始める。


視界に入るのはダンジョンの神秘、その龍鱗は鈍い輝きを放ち体躯は2倍近くに膨れ上がるほど。しかし、それとは比較にならないほどの溢れ出る気配は今まで感じてきたどの気配とも違う。


何が起こったのかはわからない。


なんなんだアイツは。


本能が、第六感が、スキルが、己の全てがあの存在の本質を認識できないでいる。


しかし、俺の思考はその存在を理解していた。存在としての格が違うような、そんな存在。これがアネモイの言った真に世界と同格になった存在。


...神..... カミカミカミ■ミ■■■■カ?■■■■神■■?■■■


















「まさか神化!? 神殺しを成したわけでもなく、幾星霜の時間をかけて悟りを開いたわけでもなく!?」


バロムの言葉が耳に入らないくらいに、俺の全感覚は目の前の存在だけに注がれていた。口からはただひとつの単語が機械のように吐き出され、鼻と目からは血が噴き出る。しかし、そんな事さえも今の俺には認識できてはいない。


「目は覚めましたか?」


頭に響く衝撃とともに聞こえた声に急に意識が浮上する。一気に感覚が元に戻り目の前にはアネモイが立っていた。


「あぁ 何とか...」


「一応精神異常耐性を強化しておきました。ところで、説明は必要ですか?」


「勿論」


「奴は神化、つまりレベル999の壁を越えレベル1000に至りました。今垂れ流されている神威は権能の概念が宿った力で、多分呪い辺りでしょうか... まぁ、ともかく権能としての概念を完全に引き出されたら私の分霊では力不足ですね」


神化、その言葉に引っ掛かりを覚えた。神になる? 神化..... そうだ、見覚えがある。


「アイツは疑似神化というスキルを持っていた」


「疑似? ...なるほど、どのみち神格を持ったことは確定ですか」


しかし、一番心配なことがあり聞こうとするも、一字を意識して口にするだけで恐怖に震えてしまう。


「...神になった存在を...倒せるのか?」


「方法自体はあります」


「ふむ、だがしかしその方法とやらはやはりアレだろう?」


いつの間にかバロムが横に立っている。


「つまり?」


「大精霊召喚です」


成程、確かに10秒で活け造りにできるのなら...


「まあそんな事をしたら十中八九倒す前にお陀仏だろうな」


はい却下


「ですので今回はエネルギー自体の供給量を増やす形で行きたいと思います」


「扱いきれるのか? 吾輩でも権能を真に扱うには長い年月を要した。あの魚と違ってマスターはそのエネルギーで体が強化されるわけでもないのだから、対等に戦えるかも怪しいところだが...」


「ちょっと待った、なんで精霊憑依を使う前提なんだ?」


ここ重要。


なんたって憑依させなければ魂に圧力がかかる?という現象も発生しえないだろう。ならば憑依させずにアネモイに全力戦闘してもらうべきだ。


「我々神格を持つ者、つまり権能を真に発現した者の制約というべきものですね。権能を持つ者は世界に注視されるいわば特異点、世界を渡るには様々な制限があるのです。それを回避する方法が分霊を作ったり契約をして直通の通路を作ることですが、契約という道の外に本体を出してしまうと、その瞬間に世界からはじき出されるでしょう」


俺のオタクIQ53万の頭脳は導き出した。


これはあれだ、Fat〇の固有〇界だ。


世界の抑止力で発動しても消え去る的なやつ。


「なるほど」


「私から流すエネルギーを増やせば、それらを肉体に循環させるだけで権能に抵抗はできます。後の攻撃に転用する場合ですが、こちらはもう出力でどうにか押し切る他に方法はありませんね」


「成程。お粗末だがそれしかない、か.... では吾輩は観戦していよう。さすがにこの体では戦力外だ」


次にクズノハとフェルだが、すでに泡を吹いて気絶している。

....いや、逆に気絶してよかったのかもしれない。あれの影響で頭がおかしくなるかもしれないし。ということで伏魔殿で二人を保護してこれで準備は完了。


一応クズノハのスキルを借りて、バフをマシマシでかけた上で運気調息と各種ポーションで完全回復済みの状態ではある。


それを見届けた後、アネモイは姿を消した。


バロムも近くの小島の岩に腰かけ完全に観戦モードだ。


そうしてアイツがあの状態になってから早3分ほど、リヴァイアサンから漏れるおぞましい覇気は鳴りを潜めその巨体が動く。既に氷塊は消え去り、自由になった尻尾での薙ぎ払い。ただし、その破壊力には今までにないほどの力が宿っていることは誰でもわかるだろう。


[大精霊召喚] [精霊憑依]


リヴァイアサンが神化した時より大きな気配、初めて会った時のアネモイを彷彿とさせる大きなエネルギーを感じる気がする。しかし、それすらも霞む程に体中が痛かった。


内から針の(むしろ)で刺されるような痛みに意識が飛びかけるが、


「俺はまだ、やり残したことがあるんでね!」


我が同志(オタク)よ、よく言った!」


無理やりにでも自分を奮い立たせてバロムの声を聴き流しつつ、膨大なエネルギーの奔流に流れを作っていく。必要なのは精神力、意志の力でエネルギーに干渉し変容させること。やることは励起と同じだが、その規模は比べ物にもならない程に大きい。


脳が焼き切れそうになる所を回復法術でごり押して、ひたすらに流れ込む魂力を掌握する。ただそれだけの単純作業だ。


アネモイが司るのは風と雷、この魂力もそれに類するエネルギー、であれば俺のスキルとして出力すべきは....


[過充電・神鳴]


周りに紫電が走るが、それではまだ足りない。鞭のようにしなり海面を割って迫るあの竜鱗を削り取る以上に、あの尻尾を切り落とし得る威力の攻撃が必要だ。


それほどの攻撃を放つ方法は一つ、スキルを組み合わせること。剣に神鳴を流し込みそこでさらに武技を発動する。今まではMPとSP同士が反発してできなかったことだが、魂力で魔法を発動することでそれは可能となった。


周囲の地面を抉り走る紫電が途切れる一瞬に、力を籠め剣を振るう。暴れ狂う力の本流をただ一方に集中させる、ただこれだけで一苦労だ。


だが、俺自身ここ半年で鍛え上げた魔力操作技術には自信がある。そして、その自信という名の精神力は魂力の操作力に直結する。


[天命殺・一刀両断]


「いけぇぇぇぇぇぇぇ[紫電一閃]んッ!!!!!!」


剣から放たれる極大の紫電は海を割りその巨体を一刀両断した。


◇ side バロム

「技術というにはあまりにも強引、ただ出力に物を言わせて強制的に魂力で魔法を発動するとは、

マスターでなければ肉体がはじけ飛んでいるであろうな」

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