42 天使と悪魔
「先ずはダンジョンの成り立ちから話しましょう」
「「よろしくお願いします」」
するとアネモイはゆっくりと話し始めた。
「まずダンジョンとは、一言でいうと世界を繋ぐ通路と言うべきものでしょうか。この世界は九つの世界で構成されています。しかしそのうちの一つである現世は他の八つの世界からは干渉できない世界だったのです」
「魔力がないからであるな」
「そうです。現世には魔力がない、しかし広大な空間面積と魂の許容量がある。悪魔族と天使族はそこに目を付けました。そうして八界の中で1、2を争う勢力が協力し、現世を侵略する計画を立てたのです。
しかし、その計画には問題があった。それは肉体を持たない種族、つまり悪魔と天使は現世に侵入できないことなのです。そこで二種族は片や世界を切り取る秘術、もう片方は世界を安定させる要石の欠片を持ち寄り、現世との橋渡し兼魔力供給路として、天界と魔界を除いた世界を素材としたダンジョンを作り出しました」
「その過程で他世界を侵略し、世界の守護者たる海王が殺された結果。その後に作られたダンジョン内の一モンスターであるあの魚に、海王の座が継承されたという訳だな」
「そういう事です」
と、いうことで。
「ということで何か弁明はあるかい?」
目の前には大きく頷いているバロム。こいつは七魔公だ~とか言ってたが、
「んんん? 吾輩は何も知らんぞ? 我ら憤怒の悪魔は闘争を続ける者の集まり、他の七魔公であろうとも容赦なく戦いを吹っ掛けるものしかおらぬ故、誰も領地に近づかずに1000年は他の派閥のものに会ってすらいないからな」
アネモイは大きく頷いているので、一応コイツは無罪のようだ。
「成程ね。ところで、一つ思ったんだがそれだと俺がダンジョンを攻略したら、その他の世界に出てしまうんじゃないか?」
単純な疑問、一階層が現世につながっているので、その反対側の100階層は天使と悪魔のいる世界につながるはずだ。
「いえ、確かに100層は天界か魔界に繋がっているでしょうが、そこには現世からの侵略者を防ぐための安全弁があるので0階層まで飛ばされます」
「なぜそんなに詳しいのだ?」
「私は風、世界を構成する元素を司る者ですので」
「覗き魔が偉そうに...」
悪魔と天使が地球を侵略する? なんかRPGの導入みたいなことが起こってるな、と思いつつ。まぁ聞きたいことはたくさんあるが、今はダンジョンを出ることが至上命題だ。そこら辺の事情は一旦置いておいて、
「話が結構逸れちゃったし、一番大事な話に戻ろう。結局の所”あいつを倒せるのか”それが聞きたい」
だが二人は渋い顔をしている、今までこの二人の助言が間違っていた例はない。
これはキツイ戦いになりそうだ。