41 大海原
黒門を通って最初に感じたのは、潮の匂いだった。
そして眼前に広がる地平線まで続く大海原。それだけならまだいい、だが最も異質なのはその中にポツンとあいている巨大な穴だ。
「海に... 穴が開いている?」
今いる小島から神足通で飛び上がると、より鮮明にその穴は見えた。しかし、その底は闇が続いているのみで深さも全くわからないほどに暗く、周囲の海水はその穴のふちから流れ込んでいない。
「深いですね.... ということは、階層が繋がっているということでしょうか?」
「まぁ、そうであろうな」
「どういう事だ?」
「ダンジョンという切り取られた一つの世界は非常に不安定なものです。それに対し、この空間の入れ物はただの世界の壁の模造品で、負荷に耐える事が出来なかった。そのせいで綻びが生じてしまい、周囲の階層とくっついたのでしょう」
「へぇ~?」
「深さを見るに20階層分は繋がっているんじゃないか?」
「私の風で見た所深さは100キロといったところですね。」
「....でもそれなら一気に20階層分短縮できるんじゃないのか?」
二人は深刻そうな顔をしているが、俺としてはその方が有難いと思うのだが。
「いえ、それも間違ってはいないのですが、階層が繋がったことにより空間内の魂の許容量が上がっているのでレベル上限も上がっているかもしれません。場合によっては魔力が飽和して迷宮氾濫が起こる可能性もあります」
「それぐらいならまぁ、ギリギリ行けるかな?」
「それとここら一帯を索敵した結果、この階層からあの穴の下まで殆どモンスターがおりません。」
モンスターがいない...
迷宮氾濫が起こるかもしれないのに?
「共食いでもしたかな」
「それに近いでしょうが、しかしもっと最悪です。あの穴の底ですね感知してみてください」
100キロ先まで感知できるスキル... 天眼通でいけるか? たしかに神足通と同系統ならそれくらいできそうな気もするが、
[天眼通]
表現するならば、頭の中に立体的な情景が流れ込んでくるような感じ。流石にこれ以上感知範囲を広げると脳が焼ききれそうだ。
「方向を一つに絞って、自分の眼が飛んでいくような感覚で使うらしいぞ」
バロムのアドバイス通りに自身の眼が飛んでいくように、影眼と同じ要領で使うとかなり情報量が制限され、さらに遠くが見れるようになった。その調子で穴の中に感知範囲を動かしていき、慣れると立体的に空間の情報を読み取れる。
そして遂に天眼通が穴の底を捉えた。しかし、その表面は魚のように鱗が生えている。
? [解析]
⇒ 【種族】リヴァイアサン Lv.999 【Name】アドミラル 【状態】-
【称号】海王 開祖 虐殺者 守護者(茨城ダンジョン - 階層)
◇ 能力値
HP 4306/4306 MP 8002/8002 SP 3896/3896
筋力 4011 魔力 7492 耐久 3893 敏捷 6053
◇ 耐性
⇒無効
水属性無効(EX)Lv.- 氷属性無効(EX)Lv.-
⇒耐性
精神異常耐性(S)Lv.11 状態異常耐性(S) Lv.12 物理耐性(S)Lv.18
◇ 種族能力
海王覇気(EX)Lv.1 龍鱗(S)Lv.11 龍魔力(S)Lv.13
◇ スキル
・武技スキル
⇒移動術
韋駄天走(S)Lv.3 天駆(B)Lv.7
・法術スキル
⇒ 強化
頑健(EX)Lv.2 千毒不侵(A)Lv.5
⇒補助
軍団鼓舞(EX)Lv.5 瞬間加速(A)Lv.18
・魔法スキル
⇒ 水属性
大瀑布(EX)Lv.3 氾濫(EX)Lv.5 死海(EX)Lv.8
水龍舞(S)Lv.11 海流暴走(S)Lv.5
⇒ 氷属性
氷結寒波(S)Lv.5 氷雪地帯(A)Lv.3 猛吹雪(A)Lv.11
⇒ 呪属性
神呪(EX)Lv.4 呪怨喰(EX)Lv.5 呪詛連鎖(S) Lv.8
・特殊スキル
⇒パッシブ
大海の加護(EX)Lv.3 海龍(EX)Lv.5 百戦錬磨(EX)Lv.6
自動回復(S)Lv.7 猛毒血液(S)Lv.5 魚殺し(S)Lv.8
一騎当千(A)Lv.8 基礎強化(A)Lv.24 経口補給(A)Lv.18
⇒アクティブ
疑似神化(EX) 生命胎海(EX)Lv.5 画竜点睛(EX)Lv.3
鑑定眼(S)Lv.11 行雲流水(S)Lv.22 天馬行空(S)Lv.4
身体軟化(A)Lv.3 恐慌伝播(A)Lv.10
・権能
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「.....権能?」
「なるほど、それが階層連結の原因でしたか」
この二人だけは何故かこの状況に納得しているような節がある。
「どういうことだ?」
「本来、ダンジョンには魂の許容量、つまりはレベルの上限があります。しかし、それを無視してレベルを上られる状況を作るには世界を拡張して上限を上げる他無い。であれば、その方法は次元に干渉するか、権能で世界を歪ませるかのどちらかでしょう。今回は後者の方だったようですね」
「だがその方法が問題であろう。なぜレベル1000でもない魚が権能を得ているのか、王位を持つ者がこのダンジョンに巻き込まれるはずもあるまいし...」
王位? 知らない言葉だ、しかし心当たりがある。
「なぁ、あのリヴァイアサンの称号に海王ってのがあるんだが...」
その言葉に二人は同時に目を見開いた。
「まさかそんなことが?!」
「ありえん! まさか海王の座が継承されたのか!?」
「いえ、あり得ることです。この迷宮を作るために天使と悪魔はそれぞれ他世界を侵略していますから。ですが... まさか別次元にある迷宮のモンスターに位が継承されるのは予想外でした」
「.....知らないのだが」
「悪魔の中でも異端者であり爪弾き者の貴方ではそれもしょうがないでしょう」
「.....ついて行けないんですが」
二人は神妙な顔で息ピッタリに顔を上げる。
「少し長い話になりますが、マスターにもお話ししましょうか」
ちなみに.... 階層のレベル上げ上限は階層の二乗÷10です
(インスタントダンジョンや、ユニークモンスターは除く)