39 犬猿の仲
好評価感謝!!
その声に反応してすぐさま距離を取るが、バロムからは敵意を感じられなかった。
「そう殺気立つな小僧、現世には昨日の敵は今日の友という格言があるだろう? 今の吾輩は召喚された身、そして召喚主は汝、つまりは仲間であろう」
「そこは分かったんだが、さっきのはなんだ」
「吾輩、あれから現世を調べたのだが、あのアニメやゲームとやらは素晴らしい。作品によっては細部まで設定が作り込まれていたり、人物の感情が上手く表現されている。吾輩も既にオタクになってしまったのだよ、今まで戦いにしか喜びを見出せなかった吾輩がな!」
「なんで悪魔がネットサーフィンできるんだよ」
「吾輩は魔界において闘争を続ける憤怒派閥の頂点である七魔公の一柱。空間を繋げて分体にて世界を渡ること程度、魔力が満ちた今の現世であれば朝飯前よ。まぁ... 多少弱体化するが、吾輩クラスならば世界の影響とて押し返せるのだよ」
たしかに今のバロムとは、フェルたちとの間にあるパスのようなものが感じられる。一応解析もしてみるとレベルは585となっており、他にも状態の欄に従属という文言があったので、こちらに危害を加えることはないだろう。
「これからも悪魔召喚はバロム限定なのか?」
「いや、レベルが上がれば召喚枠も増えるだろう」
なるほど..... まぁ、バロムの相手は後にして、最後にあの時拾ったドロップアイテムの残り一つも確認しよう。
[解析]
⇒ 種別 霊物 消耗品 Name 月光の魂石 Rank EX
総評 武器と合成することでスキルを付与することができる、
月光石から作られた武器の欠片。
じゃあこれを俺の刀に使えばこれにスキルを付与できるということだろうか? 試しに刃に月光の魂石を当てると水晶のような美しい輝きが刀身に溶けていく。すると、刀身が直刀を少し長くしたような形にグニャリと変形し、夜を見ているような漆黒の刀身の中に星屑が生まれた。
⇒ 種別 神器 刀剣 Name 星月夜 (Lv.5) Rank EX
材質 青生生魂 月光石 龍骨 魔鉄 耐久度 ∞
補正 攻撃 +5800 魔力 +4000
スキル 剣魂(EX) 不滅(EX) 朔望(EX)
武装破壊(S) 形状変化(A) 帰属(B)
総評 評価規格外
”朔望”、これが今のアイテムで生まれたスキルで、他にもレベル3だった時よりもEXスキルも増えている。そして補正も既におかしなことになっていた。続いてもう一つの新装備、精霊武装になった般若面の方のスキルの方も試してみようと顔に当ててみると、つけた感覚が全くと言っていいほどにない。これなら普段使いにも邪魔にならなそうだ。
試しに一つスキルを使ってみようか。
[大精霊召喚]
すると、こちらは目の前に旋風が巻き起こり、そこからアネモイが現れた。
「あら? そこにいるのは性根の腐った戦闘狂のお子様では?」
「ふんッ 40億歳越えのBBAがよく言うわ」
二人の間に火花が散っているように見えるのは気のせいだろうか?
「まぁ二人とも面識があるようだしそろそろお開きにしようか」
スキルを両方解除すると二人は何かを言いながら消えていった。新スキルの検証も粗方済んだので、影眼で認識した最上階に神足通で瞬間移動する。これもスキルの扱いが上手くなるとできるようになったことで、このようにスキルを完全に使いこなすと、刹那一刀のように新たな技を作ることもできるので、アネモイにもらった権能も含めてこれからも研究が必要だな。
そして目の前にいるのはオークエンペラー。しかし、解析したところそのレベルはたったの360だ。
「スキルの試し打ちにはちょうどいいな」
そういった瞬間にオークエンペラーはこちらに向かって突進してくる。そして、その手の槍を虚影ですり抜け、すれ違いざまに天命殺で切り返す。
しかし、手ごたえが全くない。
あるのは虚影で攻撃を透過した瞬間にMPの半分が吹き飛んだ喪失感と、天命殺でSPまで吹き飛んだダブルパンチだけだ。
「外したか?」
だが、オークエンペラーの方を見ると、その巨体は綺麗な断面で二つに分かれ光となり消えていった。そして、後にはエリクサーが1本残されている。
「天命殺、あんな威力はなかったはず... まさか生命体特攻の攻撃とか?」
名前からしても、なんだかそれっぽい気がする。考察しながら周囲を物色すると、やはり王座の後ろに黒門が残された。
「よし! じゃ、フェルたちと合流するか」