38 本当の60階層
「は? ここは...」
少しの混乱はあったが、ステータスの称号を見ると60階層になっていた。
「なるほど、ここが本当の60階層なのか」
窓を割って外に出ようとしてみたが、窓は微動だにしない。例えるならば迷宮の外周を破壊しようとしたときに似ている。本当に迷宮の壁ならば破壊することは不可能なので、俺はさっそく城内を探索をすることにした。
少し歩いてみて気づいたが、ここの構造は60階層のオーク城と全く同じだった。試しに影眼で周りを確認すると、周囲... というかこの城全体を見ても、最上階のオークエンペラーが一体いるのみでほかのオークの姿は無い。そして、その後ろにはオークの形が取られた氷塊が鎮座していた。
まだ二人との繋がりを感じることからオークエンペラーに負けた訳ではないだろう。だとすると既にフェルたちはオークを殲滅して次の階層に入った可能性が高い。
あとは、フェルの実体化を維持するのに必要な魔力について。始めに気づいた時はぞっとしたが、クズノハが獲得した魔力授受のスキルで供給すれば問題は無いし、最悪魔力が切れたとしても魔石に戻るだけなので、クズノハが回収してくれればすぐに再召喚自体は可能だった。
.....なら心配はいらないか、ということで俺はスキルの確認をすることにした。
バロムとオークエンペラーを倒したおかげで今のレベルは585。また、ドロップアイテムも使ったので今までのスキルには進化している物も多く、精霊武装を手に入れたり愛刀も強化されたりしたため検証が必要だ。
まずは俺のメイン攻撃である天穿。このスキルは何故かオークエンペラーの槍術スキルだった乾坤一擲と合成された。
さっそく試してみると使い勝手自体は少し威力が上がった程度だったが、短剣を投擲すると突きでの攻撃よりも威力が高いこととが分かった。
続いては期待の新スキル、天命殺と剣界。
剣界の方は一度使ったので連撃を放つスキルということはわかっている。だが、改めて使うとその範囲に驚かされた。少なくとも廊下の端から端には余裕で届くほどの射程に、一撃の威力は低いもののそれを補って余りある攻撃回数。コンマ一秒で城の壁が塵と化すほどだ。
だが、対照的に天命殺の方は微妙だった。
一撃の威力は昔持っていた斬撃のスキルと大差ない。性能が斬撃と同程度、EXスキルなのにだ。
そこら辺の壁を切ってみても、スキルを使わない剣撃と比べてすこし傷が深い程度。一昔前であればその剣の振り方補正で強く見えたかもしれないが、長いダンジョン生活で素の剣術も矯正されてきたのでそこまですごくは感じないし、むしろSPをがっつり持っていくので本当に使い道が見えない。
...気を取り直して続いては魔法スキルを見てみる。
新しいスキルの名前は神鳴と風刃で、神鳴は雷霆万鈞の接触というデメリットが解消されて威力も上がっているという純粋な強化。そして風刃は風の刃を飛ばすシンプルなスキルだった。
そして、後は今回手に入れた新しい種類のスキル。法術スキルの怪力乱神と特技の欄にある刹那一刀と魔法武装など。
怪力乱神は倍率で筋力を強化するスキルであり、魔法武装は例の対強敵用スキルコンボの
スキルが纏まって一つのスキルになっており発動すると黒い鎧が出現する。(かっこいい)
他にも、新スキルの中で最も使い勝手のよさそうなスキルが 虚影そして憤怒だ。
虚影は使うと自身が幻影?になるというスキル。壁を通り抜けたり、あとは隠密効果もあって、前の神出鬼没の強化版といった印象だ。そしてバロムの使っていた”憤怒”、これが一番強かった。効果は能力値を半減させると、他の能力値を倍にすることができる。能力値の種類に制限がない分、怪力乱神の上位互換と言える。しかもこのスキルは、なんと三つのステータスを犠牲にして一つのステータスに重ね掛けできた。
そりゃバロムのスピードも二万になるはずだ。こんなスキルを持ってたヤツによく勝てたな、俺。
という事で総評! 超強化された。 めっちゃインフレしてる。
そして最後にオークエンペラーからドロップしたスキルオーブを割って、実際に使ってみた。
[悪魔召喚]
バロムが召喚された時と同じ魔法陣が浮かび上がる。このスキルは文字通り悪魔を召喚するのだろうが、召喚する悪魔はランダムなのだろうか? それとも、何かしらの条件が? 縁で召喚とかだったら....
そんな考えが頭をよぎる中、そいつは黒い霧の中から姿を現した。
「問おうッ 汝が吾輩のマスターか!?」
「チェンジで」
召喚された悪魔は死闘を繰り広げた自称七魔公 バロムだった。