37 なんか凄いこと聞いた気がする
初出設定過多
「貴方は料理が得意なのでしょう?」
「まぁ? 一応... 必要に迫られてだけど」
「では私を満足させるお菓子を作ってください、できれば紅茶に合うものがいいですね」
「まぁ、うん 分かった」
「良かったです! 頑張ってくださいね!」
それにしても、紅茶に合うお菓子か... 強いて言うならクッキーとかか? 材料は.... 前に作ったバター、卵黄、あとはここにきて採った果物と小麦粉で作れるだろうか?
またしてもどこからともなく出てきた長机の上に材料を広げていき準備は完了。まずは小麦を水に浸して少し待ち、その小麦を新スキル 剣界でミキサーのように細かくする。
このスキル、連撃を極めたようなスキルで斬撃を無数に発生させることができるのだ。
小さなナイフによって細切れにした小麦から粗方の外皮を取ったら、さらにすり潰しこれで小麦粉は完成。続いてバターと卵黄、そして果物を砕いて濾した果実水を混ぜて、そこからさっきの小麦粉と濾されて残った方の果実をさっくりと混ぜ、
そして大口なポーションの瓶に詰めて、近くに見つけた小川で30分ほど冷やす。
最後に平らな石の上で広げて一口大に切れば、形は殆ど完成品に見える。後は15分くらい中火で焼き、ふちが茶色くなってくると焼き上がりだ。
作りたてが一番だろうし、さっさと持っていこう。
「できたぞ」
「あら、早かったですね!」
すぐさま献上すると一口、また一口と大精霊さんはクッキーを食べる。優雅なその様はとても絵になるが、こちらとしては早く沙汰を下してほしいところだ。が、その思考も読まれていそうなので、うかつに何かを考えることもできない。
「う~ん 甘味がいまいちですが、及第点としておきましょう!」
「砂糖がないんで、そこらへんは目をつぶってください」
「しょうがないです。で、こちらが貴方に渡すものです」
そうして差し出されたのは、さっきひったくられたお面だった。
[解析]
⇒ 種別 精霊武装 仮面 Name 風王の般若面 Rank EX
材質 精霊樹 耐久度 ∞
補正 敏捷 +3500 魔力 +1000
スキル 大精霊召喚(EX) 風の加護(EX) 契約(EX)
精霊憑依(S) 風霊結界(S) 霊装(A) 形状変化(A)
総評 評価規格外
うん! やっぱりヤバいね。 キングのもそうだが全体的にスキルが多いし、ランクもハチャメチャだ。
「まだまだここからですよ?」
? キングは防具を一つしかもらってなかった気がするが....
「いいえ、私たち大精霊が授けるもののメインは権能です」
権能? なんかキングのステータスにもあった気がする。何だったか... 火炎支配? だったかな?
「私から授けるのは風雷支配という権能、力はその名の通りで風と雷。慣れればそれらを自在に操ることができます」
.....キングは権能を手に入れても使えないって言ってたが、
「魔力を自身の力で操ることができるなら権能を扱うまであと一歩ですよ」
なるほど.. だが一つ、気になることもある。
「権能って何なんだ?」
一息置いてアネモイは答えた、
「フフッ よくぞ聞いてくれました! ですが、それを話す前にスキルとレベルについて説明する必要がありますね。まず、スキルというものは魂の器に刻まれるものだということはご存じですね?」
「一応は」
「はい。 で、これが刻まれる理由はレベルが上がることで上がる、MPやSPと言われるエネルギーを消費するためなのです」
ここまでは俺も理解できた。だがここからは新情報の連続で、もうついて行けなくなってしまった。
「レベルとはその存在の持つ魂の格、殺した相手の魂を吸収することで自身の魂の格を上げることがレベルアップであり、MPとSPは魂の持つ本来のエネルギーが精神の力と肉体の力に分かたれたもの。そして、筋力や敏捷などは、魂が持つ世界への干渉力を数値化したものと言えます」
.....?
しかし、そんな俺をよそに大精霊さんは話をつづけた。
「重要なのはここからです。権能はスキルとは次元の違う力、SPやMPの元である魂力そのものを使うのです」
「魂力って言うのを... 魔闘法みたいに使うのか?」
「認識としてはその通りですね、さらに権能とは魂の本質の具現化。生まれ持った無垢の魂が本人の生き様や精神の影響を受けて変質し概念を持つことで、魂が放つ魂力が世界を改変する力となる。権能の発現とは魂が世界と同格になることであり、権能の概念が魂という一つの小世界における絶対の摂理になるのです。そしてこの世界と同格というのがレベル1000ということですね」
あー.... 要点をまとめると、レベル1000になると魂に権能が宿って、使えるようになると?
「概ねその通りです」
「だけど一つ問題がある。 権能っていうのが魂の性質なら、それを俺が使えるようになるのは魂を塗り替えられるということになるのでは?」
「的確な指摘ですね、ですがそれは違います。ただ私から風の概念に染まった魂力が供給されるということでして、自分で扱ってもよし、精霊召喚で召喚した私の分体に任せるもよし、といった具合です」
.....発動したら後は自動的にやってくれるみたいな感じかな? 確かにそれなら大丈夫そうだ。だが、他人の魂力ってものを操れるものなのか?
「慣れればできるようになります。感覚的には魔闘法とやらに近いと思いますよ」
んー... 聞く感じ弊害は無さそうだし、特に嫌な予感もしない。であれば万々歳だな。
「それでは契約を始めましょう」
10秒ほどの沈黙、するといきなりアネモイは自身の胸に手を突き刺した。そして抜いた時、その手には翡翠の色をした美しい宝石が握られていた。そのまま宝石を手渡され握ると、それはするりと体の中へ消えていった。
俺が唖然としていると先にアネモイが口を開く。
「今のは私の分体のような物なので害はありません、貴方とのパスをつないだだけです。これで契約は終了です。現世でまたお会いしましょうね!」
その言葉と同時に周囲の景色は暗転し、次にいた場所は何処か見覚えがある廊下だった。