2 遭遇
叫び声が上がりそうになるが、閉じた口がその声を嚙み殺す。目の前の狼の威圧感によって、体が硬直しているせいだ。
こんなバカでかい狼をどうすればいいのかと心中で叫ぶ。そして、反射的に鑑定スキルを使ってみると、結果として刷り込まれたのは、俺に逃げ道など無いと言わんばかりの絶望的な情報だった。
[解析]
⇒ 【種族】 ブリザードウルフ Lv.285
【Name】 -
【進化数】 0
【状態】-
【称号】守護者(茨城ダンジョン57階層) 獣王候補
◇ 能力値
HP 1740/1740 MP 1945/1945 SP 1692/1692
筋力 1781 魔力 2010 耐久 1402 敏捷 2395
◇ 耐性
⇒無効
氷属性無効(B)- 風属性無効(B)-
⇒耐性
物理耐性(C)Lv.11 麻痺耐性(D)Lv.7 毒耐性(D)Lv.6
◇ 種族スキル
狼王咆哮(A)Lv.8
◇ スキル
・武技スキル
⇒爪術
硬爪(D)Lv.21 飛斬爪(C) Lv.1
⇒移動術
疾走(D)Lv.19 縮地(B) Lv.1
・魔法スキル
⇒水属性
氷結地獄(S)Lv.3 氷嵐(B)Lv.14
蜃気楼(C)Lv.8 水撃砲(C)Lv.17
氷槍(D)Lv.25 氷鎧(D)Lv.23
⇒風属性
竜巻(A)Lv.5 鎌鼬(C)Lv.16
風槍(D) Lv.20
・特殊スキル
⇒パッシブ
魔力自在(S)Lv.6 魔力強化(C)Lv.15
身体強化(D) Lv.25
⇒アクティブ
覇気(A)Lv.9 魔力収束(B)Lv.13
怒涛のスキル情報によって、一周回って冷静になった自分がいる。まぁ... どうすればいいのかは分かんない。
今のところ選択肢は、戦うor逃げるの二つに一つ。まぁ、戦って勝てないのは明白、逃げるのも不可能なんだけれども。
....そういえば、この狼。なぜか襲ってこないな。狼と目が合ってから15秒は経っているが、俺は未だに食われていない。であれば、逃げるほうが可能性はあるか? と思い動こうとして... 不意に、先ほどの罠の宝箱に目が行った。
思い出されたのは、先ほど鑑定スキルで脳内に刻まれた罠の宝箱の情報だ。この宝箱は攻撃力は3500と書いてあり、狼のHPは1740だったはず。少なくともダメージは与えられるかも...
逃げる時間ぐらいは稼げるはずだ。いや、稼げる。この瞬間だけは、そんな確信めいた何かがあった。その確信に突き動かされて、俺は即座にに足元の宝箱を裏側から持ち、鍵穴を狼に向ける。
「ガアァァァァァッ」
瞬間、狼はいきなり口を大きく開くと、宝箱ごと俺を食い殺す勢いで飛び掛かってきた。
「ひぁえぇぇぇぇぇぁぁぁ!!!」
今までは現実味のない状況にまるでゲームのような感覚に陥っていた。だが、急に自分の死という現実が迫ってきていることに、今まで隠れていた恐怖があふれ出し、情けない声をあげてしまう。
しかし、そんな極限の状態で予想外のことが起こった。
ドウゥゥゥンッ.....
「がアッ!?」
轟音と同時に衝撃が手を襲い、遅れて背中に激痛が走る。
どうやら、宝箱から放たれた土の槍の反動で吹き飛ばされ、後ろの岩壁に叩きつけられたらしい。そして、狼は巨大な土槍で、頭を刺し貫かれていた。
対する俺も、そのまま意識が落ちていく。
まずい... こんな敵がうじゃうじゃと居るなら... 寝たら死....
脳震盪でも起こしたのか、俺の意識はそこで途切れた。




