29 死亡フラグ二連続
そして夜になった。
流石に昼の12時からは寝れないかと思っていたが、杞憂だったようで快眠でき、ストレッチもして飯も食って準備は万端といったところだ。
「よし、行くか」
「おう」
闇に紛れて隠密を使い歩を進める。見慣れた白亜の城は、いつもの神秘的な雰囲気とは違い、オークの城らしい不気味さと異様さを醸し出している。
「あそこだ」
指をさしたのは二階の大窓で、いつも通り空いている窓に向かってジャンプし着地する。
グニィ
「あ」
「プギギギぎぎぃぃぃぃ!!!!!!」
着地と同時に、足からグニグニとした感触が伝わってくる。そして、城中に響くオークの声。急いで首を狙い声を殺したが、周囲から足音が聞こえてきた。
「まずい! 早く逃げるぞ」
「どこへ逃げるんだ!」
すぐさま天井に向かい天穿を放って大きな穴を開け、神足通で上へ向かう。
しかし、このままだとボス部屋の前で囲まれてゲームオーバー。それだけは何としてでも阻止しなければならない。
一階を上がるごとに天井をぶち抜いてどんどん上がっていき、30秒足らずで最上階までたどり着いた。最上階は通路とボス部屋の二種類だけで構成されており、ボスは大扉を隔ててすぐそこだ。しかし、下の階段からはオーク達の追いかけてくる音が聞こえる。やはり、ここで倒し切ってからボス戦に挑むべきだろう。
まずは剛糸結界で足止めして....
そう思い手に糸を生み出し始めると、
「いや、その必要はない!」
そこでずいと、キングが一歩踏み出してきた。
「俺ではまだ60階層級のボスと相対することはできないと思う。であれば、ここで挟み撃ちを防ぐためにもここで戦う方がいいだろ?」
ちょっと不安だが、いい感じの雰囲気で話が進んでいる気がするので少し黙っておく。
「日本ではこういうシチュエーションではこういうのが基本なんだろ?」
「まさか...!?」
『ここは俺に任せて先に行け!』
こいつマジで死ぬ気か?
いや、まぁ一本道でタイマンを繰り返せば何とかなる... のか?
「...あとでもっといい言葉を教えるよ」
キングに渡した”血喰”のスキル "吸血"、あれがあればHP回復の効果と一時的な成長能力で、何とか最後まで粘って何とか勝てるだろうとは思う。
ということで俺はこの関門を任せることにした。
「なぁに、すぐ追いつくさ!」
.........不安だ。