26 朝の鍛錬
「はぁッ ふんッ そいッ」
外から聞こえてくる掛け声で目が覚める、どうやらキングが斧の素振りをしているようだ。
「おぉ、起きたか。 鍛錬か?」
「そうだな」
キングの横で、俺も日課の訓練を始める。
最近は運動と魔闘法の鍛錬を同時に行う訓練をしており、これでやっと魔闘法を戦術に組み込める段階に至ったところだ。
そして、30分ほどランニングやスクワットをしたところて、いったん切り上げることにした。
「マコトもいい筋肉をしているな。細いながらもよく鍛えられている、実践向きの上質な筋肉だ」
「確かに、毎日ダンジョン内を探索してて、昔と比べてかなり筋肉はついたきがするよ」
「筋肉とは適切なトレーニングと良質な食事からできるものだ」
(チラッ)
キングはあからさまな言葉と視線を投げかけてきた。
「わかった。朝飯にしよう」
さっきからこっちの訓練をチラチラと見ていたのは、食事を期待していたからのようなので、手早く作れる食事を選ぶことにした。
「今回作るのはしゃぶしゃぶだ」
「しゃぶしゃぶ?」
「見てれば分かるさ」
用意したのは水入りの鍋と牛肉、そして塩や生姜やレモンとだし汁だ。
鍋は焚火にかけて、昆布に切れ込みを入れて鍋に投下。牛肉は薄切りにカットし、白菜っぽい野菜などの具材を一緒に盛り付け、最後にレモンを使ってたれを作って完成だ。
「食べ方は肉をお湯にくぐらせて、たれをつけて食べる。これだけだ」
「なるほど」
キングは箸を使い慣れているようで、器用に肉を取ってお湯にくぐらせている。たれをつけ、キャベツっぽい野菜に巻いて口に入れると、そのまま一心不乱に食べ始めたところを見るに、しゃぶしゃぶはかなり好評だったようだ。
「うん、やっぱりポン酢が欲しくなる味をしているが、おいしいな」
やはりポン酢や焼き肉のたれが欲しくなる味をしているが、企業努力の賜物である調味料がそう簡単に再現できないことは、ここ数か月で身に染みているので、レモンで我慢するしかない。
「サッパリしていてパンにも合う、うまい!!」
他にも、キングにもらったパンに切れ込みを入れて、たれを多めに掛けた肉と野菜を挟むと、普段の食事にはない変わり種として、バケットサンドを作ることもできた。
パン一つあるだけで、かなり料理のレパートリーが増えるので、キングにもっとパンをアイテムと交換してもらえるようお願いしておこう。
パン粉って、凍らせたパンを削るんだっけか? フェルの氷系魔法で行けるかな?
「「ごちそうさまでした」」
いつの間にか700gはあった肉は二人の胃袋に消えていて、腹八分を超えてお腹が重いので、少し休憩してからダンジョン探索するという事になった。
空いた時間はやはり作戦会議をする流れになり、流石に城を攻めるとなると、複数体のオークを相手にする必要性がある。そのためには、キングのレベルが250レベルくらいは必要だろうと結論付けた。
「まずはレベリングをしてからだ。俺らの居たところにオークの小隊がきてただろ? てことは定期的に城から出てくるオークがいるはずだ。そいつを狙ってレベル上げをしていこう」
「それは良いな。このままじゃ俺は戦力外だろうし、足手まといでもいられない。世話になるよ」