19 影法師
やっとこさオークを倒せたが、その光から何かが落ちることはなかった。
ボスは今まで必ず何かしらのドロップをしていたので、確定だと思っていたのだが、今までは運が良かっただけのようだ。
取り敢えず火傷をクズノハに治してもらうと、次はフェルが声を上げ始めた。どうやらフェルは俺を案内したいようで、しきりに背中を鼻でつついてくる。
「わかったから、背中をつかれると服によだれが付くだろ」
軽くフェルをたしなめるが、それを気にせずフェルは少し先まで走っていった。俺もフェルについていくと、そこには墨汁を垂らしたように黒く、しかし鈍い輝きを宿した玉があった。
「魔法使いオークのドロップ品か?」
[解析]
⇒ 種別 ◇遺物 消耗品 Name ◇格の◇珠 Rank E◇
総評 使用者の◇職をより高ミへと至◇セル効果を◇つ
任意で◇◇◇スキルを◇媒トすルことで更なる進◇を得◇
「なんだこれ?」
最初に出てきた感想はそれだけだった。
今まで解析した物の中でこんな風に文字化けしたことは一度もない。しかし、どうしてこうなったのかは心当たりがある。
この玉のランクは文字化けしているが多分EXで、これが俺の解析のスキルのランクよりも高いからこうなったと考えるのが妥当だろう。
「え~っと、使用者の天職をより高みへと至らせる効果を持つ、任意で... スキルを触媒?とすることで更なる進化を得る。って感じかな」
スキルの前の文字化けは読めないが、まあつまりクラスチェンジの宝珠ってところだろう。すさまじい効果を持つアイテムなので、今すぐ使ってみることにした。
早速宝珠を手に取り、「使用する」と頭の中でイメージすると、フェルたちとの繋がりに近いものをこの宝珠にも感じるようになり、そのおかげか使い方もなんとなくわかる。
どうやら説明の中に書いてあった「◇◇◇スキルを触媒に」というのは、EXスキルのことを指しているらしい。
まぁ触媒というからには式神作成が無くなることはないだろうし、式神作成を選択して頭の中で念じると、そのまま黒い宝珠は煙となって消え去った。
[解析]
⇒ 【種族】人間 Lv.348 【Name】 早川 誠
【天職】 影法師(EX) Lv.1 New! 【状態】-
【称号】 隠者New! 探索者(茨城ダンジョン:59階層)
開祖 格上喰い 虐殺者 オークスレイヤー...
HP 2245/2245 MP 1963/2582 SP 2211/2359
筋力 2369 魔力 2665 耐久 1959 敏捷 3176
◇ 耐性
⇒耐性
精神異常耐性(S)Lv.23 状態異常耐性(S) Lv.1 New! 寒暑耐性(B)Lv.20
物理耐性(C)Lv.9 苦痛耐性(D)Lv.7 恐怖耐性(E)Lv.4
◇ 種族スキル
人智の加護(A)Lv.- (Up!)
◇ 職業技能
⇒影法師(EX) Lv.1
影法師(EX) Lv.1 New! 影糸(S) Lv.1 New!
影魔法 Lv.3 - 影眼(S) Lv.1 New! 影這入(B)Lv.2 影鎧(C)Lv.5
暗殺術 Lv.3 - 隠密(C)Lv.7 奇襲(E)Lv.11
糸闘術 Lv.1 - 網糸結界(S) Lv.1 New! 糸切(D) Lv.1 New!
◇ スキル
・武技スキル
⇒ 短剣術
天穿(A)Lv.4 多重連斬(B)Lv.10
五月雨(C)Lv.2 投擲(D)Lv.6
・魔法スキル
⇒ 雷属性
雷霆万鈞(A)Lv.5 過充電(B)Lv.6
雷撃(C)Lv.7 纏雷(C)Lv.5
⇒ 風属性
風翼(B)Lv.2 鎌鼬(C)Lv.17 纏風(C)Lv.5
⇒ 魔闘法
励起(EX) 純化(S) 魔力自在(S)Lv.7 魔力装甲(D)
・特殊スキル
⇒パッシブ
修羅(EX)Lv.1 神感(S)Lv.1 New! 成長加速(A)Lv.3 魔力回復(A)Lv.7
⇒アクティブ
式神作成(EX)Lv.2 神足通(EX)Lv.1 New!
解析(S)Lv.4 伏魔殿(S)Lv.3 覇気(A)Lv.1
形代封印(B)Lv.5 料理(E)Lv.17
「おっと? なんかものすごい変わったというか、少しすっきりしたというか」
よく確認すると、新しいEXランクスキルが増えていたり、感覚系のスキルが全部消えて神感というスキルになっていたり、罠系や糸のスキルはすべて天職に統合されたようだ。
その後、ある程度新スキルを使ってみた結果、突出して強かったのが影法師と神足通のスキルだ。
まず影法師は、なろう系でチートの代表格であるコピースキルだった。フェルやクズノハのスキルを無条件で使用することが出来るという、いわばぶっ壊れスキル。
しかし、試しにオークの持っていたスキルを使おうとしたら、一つずつ、それも接触しなければ種類を変えられないというスキルだったので、実は式神作成がチートなだけなのかもしれないし、もしかしたらこれが式神作成を触媒にした効果なのかもしれない。
次に神足通は入替転移と神出鬼没など、他にも色々なスキルが合わさったスキルであり、今までのように位置の入替や、すさまじい速さでの移動の他にも、目に見える場所への瞬間移動まで可能となっていた。
他にも、影眼は影のある場所を視界として、かなりの範囲を見渡せる感知系スキルで、網糸結界は生み出した糸を周囲に張り巡らせて、自在に操作するスキルだったりと、全体的にスキルがかなり使い勝手がよくなっていた。
「かなりのパワーアップ...」
というか影法師がおかしい。
式神たちのスキルが使い放題っていうのが、もうチートだ。いや、本当にマジでヤバいしか言えなくなるほどヤバい。
「ふぅ... まて、待つんだ俺、いくらチートだからって油断はまずい。どんな世界でも、慢心した奴から負けていくんだ」
自問自答を繰り返しようやく気持ちが落ち着いてきた。
未だにフェルと初めて会った時に死を間近に感じたことで、ダンジョンの中で油断することがどれだけ命取りになるかを知っているからこそ、これらのスキルはもう一度ゆっくり精査して、使い方を考えるべきだろう。
もしも、スキルを封印する敵が出てきたとしても対処できるように、スキルだけに頼った戦いは極力控えて、ちゃんと訓練もしようか...
だが、一旦次の階層に行ってみよう。
「せっかくボスも倒したんだし、早速次の階層にいきますか」
前方には毎度おなじみの黒い門が浮かんでいる。フェルやクズノハが入った後に、俺もそこへ入っていった。