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18 油断大敵(時すでに遅し)

雄叫びの割に、このオークは随分と慎重派のようで、今も自分の背ほどもある大剣をこちらに構えて警戒している。


だが、特に変わったスキルはなし、()いて言うなら、ステータスは敏捷型なので、少し溜めの要る魔法は使いづらそうだ。


「てことは、やっぱり肉弾戦だよな。」


「ボルァ」


オークは半笑いになりながら、こちらの呟きに反応するように声を出した。


どうやらこちらを舐めているらしい。どうも、オークの大半は体格や筋力量で相手を品定めするらしく、多少筋肉はついたとはいえ170cmくらいの俺は、オーク達から見れば雑魚に見えるようで、その視線は既にフェルの方へと向けられていた。


まあそれはそれで好都合なのだが、


[影鎧] [過充電] [纏雷] [纏風] [魔力装甲]


ここで使うのは、例によってこのスキルの組み合わせなのだが、今回は魔力装甲のお陰で一味違う物となっていた。


この魔力装甲、属性のある魔法じゃないからなのか、他の魔法との相性がよく、それぞれのスキルに互換性が生まれ、さらに魔力装甲の変形の応用で自分好みの形に変えられるという機能が付いた。


今の俺の見た目は、全身を黒装束と軽鎧で包んだ、まるで忍者のような感じだ。しかも、防御性能は以前の二倍以上になっている。



だが、オークはまだフェルの方に意識を向けていた、ならば必殺の攻撃を叩きこんでやるまで。


まずは影這入を使って自分の影の中へと入り、オークの方へと近づいていく。オークは俺を見失って少し周囲に意識を割いたものの、逃げたとでも思ったのか改めてフェルへと向き直り、剣を上段に構える。


そして次の瞬間、俺は影からオークの背後へと出ていくと、


[天穿(アマウガチ)]


オークは背後に現れた俺に気づいたものの、時すでに遅し。


天を射抜くような突きの一撃は、オークの右手を根元から吹き飛ばした。


すぐに空蝉で距離を取ると、オークは左手で大剣を持ち直してこちらへと迫ってくる。それを難なく避けるが、その一撃で後ろにあった木々は豆腐のように切り裂かれた。何かしらのスキルを使ったようで、今の俺でも直撃すればHPが3割は持っていかれそうだ。


接近戦は少しためらわれるので、新しい技を使ってみよう。


避けた先の茂みから葉っぱを一枚取り、それにスキルをかける。


[式神作成・擬人式]


すると、葉っぱはたちまち人形になり、オークの方へと飛んでいく。そして、オークの剣が目と鼻の先に来たところで、次のスキルを発動する。


[入替転移]


すると、俺は一瞬でオークの背後に現れ、オークの大剣は人形(ひとがた)の葉っぱがくっついているのみ。


今度の移動は前とは違い、気づく隙もなく一瞬の出来事で、剣で俺を切ったと思っていると錯覚したオークの首は格好の的だ。


[天うッ...あグ


しかし、その一撃はそのオークに届かなかった。


「なんだッ... 熱ッ 火?」


手の先からは、針に刺されたような痛みが襲ってきている。


一瞬何が起きたのか分からなかったが、とにかく剣だけは離すまいと強引に力を入れて、そのまま空蝉で距離を取って、充満する煙の中で体勢を立て直す。


そして、痛みの正体はすぐに分かった。


右手は焼け(ただ)れてしまい、見るとHPが1割ほど減っていた。


最初はオークの攻撃かと思ったが、あのオークのスキルやステータスを見るに、俺の防御を突破して、ここまでの傷を負わせるほどの魔法を放てるとは思えない。


「どこかに仲間が隠れているな」


辺りの煙を鎌鼬(かまいたち)で晴らして周囲に目をやると、いかにも魔法を使いそうな、ローブと杖を持ったオークがいた。


「まいったな、気が付かなかった。俺の隠密みたいな感じのスキルを使っていたのか?」


すぐに剣を式神にして攻撃を放つ。


[投擲]


その一撃で魔法使いオークは喉を貫かれ倒れ、式神化した剣はそのまま召喚し手元に現れる。


「よしお前で本当に最後だ。」


「グボウ?」


オークはニタニタと笑っている。


大方利き手をやられたので、剣が振れないとでも思っているのだろうが、生憎(あいにく)と、俺のステータスは剣よりも魔法を使うのに向いている。


まずは、剣に魔力糸を括り付けて更に風をまとわせて、そのまま左手で投擲。軌道はズレたが、威力はそのままに剣自体が動き、防御もされずオークの足へと突き刺さった。


「グオォ!」


オークは驚いた顔をしているが、そのままとどめの一撃を放つ。


[雷帝万鈞・過充電]


さすがに過充電まで使ったのは威力が強すぎたのか、オークは声を上げる暇もなく光となって消え去った。


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