17 チーターの気分
それから、なんやかんやでやっとボスの近くまでやってきた。
気づけば、ダンジョンに入ってから三ヵ月も経つのだから驚きだ。マジでダンジョンに階層を上がる機能を付けてほしい、それさえあれば、今頃地上に出れているはずだ。
「見えました、ここから一キロほどで、階層主と思われるオークがいます。その周囲にはオークの上位種が15体ほどです」
「了解。じゃあ今回は、ある程度接近した後、フェルが氷結地獄で雑魚を一掃、それからクズノハにバフもらって、デカい方を叩く感じでいこう」
「グオゥ」
そこからは隠密を使いながらオークに近づいていく。フェルの巨体だと音が出てしまうので、接近した後に木の葉から作った式神と入替転移をしてこちらに呼んでおいた。
「フェル、やれ!」
「グオアァァッ」
フェルが凄まじい密度の魔力で包まれていく。
俺の魔闘法と同じような技術なのだが、フェルの場合は水や風の魔法に特化した形で、”天災地変”というスキルになっていた。
その魔力を用いて使われた”氷結地獄”の目に見えるほどの魔力のオーラで、発動前にもかかわらず、オーク達は飛び起きた。
しかし、それももう遅く、フェルの最大威力の魔法が炸裂する。
....今思ったのだがこの火力ならボスも吹き飛ぶんじゃなかろうか?
パキンッ
目の前に端が見えないほどの氷塊が出現し、オーク達はボスも含めて、全員氷塊に飲み込まれ見えなくなった。
それから、魔力でできた氷が溶け始めるまで待ってみたが、一向にボスは出てくる気配はない。
「もう倒してしまったのではないですか?」
「かもしれないな」
とりあえず、近くにあった黒い門を触ってみるが、手が入っていくようなことはなく、透明な壁に阻まれている。
「やっぱりまだ死んではいないのかな」
バキッ パキン 「グバアアアアァァァァァァ!!」
俺がオークに背を向けたタイミングで、オークは氷を粉砕して飛び出してきた。
「やっと起きたのか」
オークが雄たけびを上げながら復活したが、解析してみたらHPはもう7割がた削れている。こちらもこれ以上フェルに回せるMPが残っていないので、ここからは俺の出番だな。