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【更新再開】朝起きたらダンジョンにいたんだが ~異世界転移?いいえここは現実世界です~  作者: sei10
第三章 学校編

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117 ミリオタ二人

放課後になった。


先生とのリベンジマッチにかなり熱くなってしまったが、今日の俺の主な目的は例の生産部で銃の制作を行っているという人物に会うことだ。そうして廊下を足早に歩くが.... どうも一人、俺をつけている何者かがいるらしい。


【天眼通】


今回は相手の顔を確認するだけなので、天眼通の元となった【影眼】と同じ要領で、一つの眼球を飛ばすように背後に潜んでいる者を見る。すると見えたのは、俺も知っている顔だった。


「....バレたか?」


アレは.... 名前なんだっけ? 取り敢えず、破魔娘としておこう。


尾行にしては随分とお粗末だが、確かな懐疑心と好奇心を背中越しに感じる。要するに、俺に関する何かを探りに来たってことだ。まぁ、直接的に接触してこないので確固たる証拠があるとか、そういう訳ではないだろう。予想だけど。


面倒くさい、こんな時は逃げるに限るね。


「.......あった」


俺が見つけたのはトイレだった。取り敢えず、ココの個室に逃げ込んでおく。よし、あとは彼女が風の精霊によってトイレの中までを感知していないかだが....


【風の報せ】


トイレの便座に腰かけて、風の権能を行使する。とはいっても、相手の精霊にバレないようにだ。


この技術の本質は風の精霊との交信であり、それが結果として遠くの音を聞くことが出来ることに繋がっている。なので、今回はその工程の一部を省いて用い、周囲に居る風の精霊を感知するだけに留めた。


「....よし、いない」


スキルによる感知が行われている感じも無いし、もう大丈夫だな。


確認を終えた俺は、トイレの窓から身を乗り出した。と言っても、ココは一階だから無問題(モーマンタイ)。そのまま芝生に着地し、下駄箱まで走るだけだ。


破魔娘よ、誰も居ないトイレで足止めされておいてくれ。


そうして前も通った渡り廊下を進んでいくと、部室まではすぐにたどり着いた。相変わらずの機械音がけたたましくなっており、俺はその雰囲気にちょっとした高揚感を覚える。なんというか、こういう場所のロマンは、子供のころに作った秘密基地に通ずるものがあるよな。


どんな活動をどこですべきかは分からないので、まず目指すのは先生の所だ。それに、例の人物を紹介してくれるのでは? という期待もあった。


「失礼します」


三度のノックの後にドアを開くと、先生は先週と同じ机に座っていた。


「お、早川君だったかな? こんにちは。さて、さっそく君の作業スペースを割り当てたいところなんだけど... 今日は初日だし、いったん見学してみませんか?」


「分かりました」


この武器製作班だけでもこの棟の一階と二階を使っているようだし、見学しておいて損はないだろう。それに、部員達とのコミニケーションも大切だ。なにせ、俺はここに武器製作のノウハウを学びに来たのだから。武器製作に関しては自己流以外を知らない俺にとって、先人達から学べることは大いにあるはずだ。


そうして部屋を出て行く先生に着いて別の部屋に着くと、一人の男子生徒を紹介された。


「という訳で... 一人の案内を頼んでもいいですか? どうやら少々行き詰ってるみたいですし、彼はかなりの良スキル持ちなので、解決の糸口がつかめるかもしれませんよ?」


「...分かりました。てことで、同じクラスの杉谷。よろしく」


「よろしく?」


「では、私はこの辺で失礼~」


そう言って、先生は部室を後にした。そして、その場には俺と杉谷君が残される。


....ちょっと待って、大丈夫なのか? 俺、結構悪名高いと思うんだけど?


そんな心配が災いして、俺は口を閉ざすことしかできなかった。これは生来の小心者根性も影響している。しかし、対する彼は俺の心配を切って捨てるように話を始めた。


「君、編入生だろ? この前はあることないこと噂が広まってたけど、僕はそんな事ないってわかってるから大丈夫だぜ」


「....どういうこと?」


「僕さ、実技の授業は弓術選択なんだけどさ、今日の早川と御剣先生の試合を見てたんだよ。普通に先生と渡り合ってただろ? そんなやつがレベル30以下とかありえないわ。むしろそうだったら化物かな?」


たしかに... 今日の体育館はネットで仕切られており、反対側には弓を携えた生徒が並んでいた気がする。なるほど、そういう事か。納得。


「そう言ってもらえて助かるよ。改めて、俺は早川。よろしく」


「おう。ところで.... 先生も言っていた良スキル! それの内容を聞いても良いか?」


「ああ。俺のは【錬成】って言うスキルで、いろんな物質を加工できるんだ」


「へぇ.... 見せてもらっても?」


その言葉と共に差し出されたのは、手のひらサイズの金属塊(インゴット)。それを受け取ってスキルを発動すると、その形はぬるりとナイフに変わった。


「マジか、魔鉄を一瞬で!?」


「あ、魔鉄だったのか」


考え込むようなしぐさを見せる杉谷君に魔鉄のナイフを返却すると、彼はハッとしたようにまくし立てる。


「....ッ! 早川! 僕の制作を手伝ってくれないか? もちろん俺も、早川の制作を手伝う。具体的にはCAD(キャド)を使った設計と、僕の天職 ” 刻印術士(ルーンマスター) ” のスキル付与ってところ。どうだ?」


「.....なるほど」


スキル付与に関してはそこそこだが、設計か。彼も銃を作っていると聞くし、その設計を担当してもらえばかなり良いのでは?


「よっし。その話、乗った!」


「助かる! っと、そういえば案内を頼まれてたんだっけか? それを済ませたら話を詰めよう」


そう話を切り上げて、そこからは部室の案内が始まった。


どうやらココの武器製作班はその中でも三つくらいの役割があり、それぞれが ”設計” "制作" "付与" の三部門に分かれているとのこと。杉谷は設計と付与に属しており、俺が所属するなら制作の所がいいのでは? というのが杉谷の言だ。


彼の友達で、刀剣研師の天職を持つ九条君に紹介してくれたりもした。


そうして一通りの案内が済み、時刻は5時半。元のパソコンが立ち並ぶ部屋に戻って来た俺たち二人は、部屋のはしっこにあるテーブルに向かい合って座っていた。


「ということで... 僕は自分で設計した銃の素材として魔鉄を使いたいんだが、それを加工するには高位の加工スキルか、相当な施設と職人の腕が必要だったわけ。そこに現れたのが早川、君だ」


「おう」


「僕はこのユニコーンの角魔石っていう物をバレルの下部に取り付けた、弾丸加速型魔力銃を構想しているところなんだ。そして、そのバレルは通常の炭素鉄やステンレスでは容易に破裂する。だから僕の設計の通りに魔鉄を加工してほしい」


そう言って杉谷は、手元のスマホで細長い巻貝のような形の魔石を見せてくる。そして横にスワイプし、今度は細かくデザインされたショットガンのような物も見せてくれた。


「じゃあ、俺の方からは要望に沿った銃の設計を頼みたい。具体的には、この銃のバレル部分のみを流用した構造を作りたいんだ」


そう言って、こちらからはツインバレルの現物を取り出した。しかし、そこで杉谷は黙ってしまう。


「おい、どうした?」


「こいつは.... どこで?」


「俺の自作だ」


「マジかマジかマジかマジかマジかマジかマジかッ! ....触ってもいい?」


まるで有名な陶芸家の作品を触るような手つきでツインバレルを手に取った杉谷は、うっとりしたような表情で銃を構える。


「どうやって撃つんだ?」


「この(タマ)を細い方の筒に装填して、太い方の筒に叩きつけるんだ」


「リチャードソンM5か!? でもどうやって?」


「あ~ 簡単に説明すると、この弾は火薬の代わりに魔石を仕込んでるんだ」


「.................ハッ! そうかそうかそうか。そういう事か!? 魔杖のように魔石を触媒にするんじゃなく、魔石が破壊された時の爆発現象を利用するのか! それなら低位の研磨スキルで発射が可能に...? 天才か!?」


なんか言ってることが良く分からなくなってきたが、彼自身はその内容を正確に理解しているらしい。そうして自分の世界から帰ってくるのに10分ほどを要した杉谷は、銃を撃ちたくてうずうずしているように見える。


「試射してみる?」


「マジ?」


「大マジ」


そうして俺たち二人は、先ほども見て回った試験室と呼ばれる部屋に足を運んだ。そこは屋外に屋根だけが取り付けられた広い場所で、出入口のある一辺以外は、土嚢(どのう)のように袋が積まれている。


そして、部屋の中央に全身鎧のような物が複数置かれていた。杉谷の説明によると、どこかのダンジョンに出現する首無し騎士(デュラハン)のドロップアイテムだとか。


「一回、撃つところを見せてもらってもいい?」


「了解」


ポケットの中から格納庫に接続し、そこから低ランクモンスターの魔石で作った弾丸を取り出す。ここで主力のを使っても仕方が無いし、さすがにね。慣れた手つきで装填を完了し、照準を鎧の胸部に合わせる。


今回はスキルも発動せず、魔力を込めることもしない。ただ魔石の発破だけによる火力を見せるだけ。押し込むと同時に魔石が割れる音が響き、同時に火花が散る。これは空気が急速に圧縮されたことによる発火にすぎない。そして、その火気を押しのけるように魔鉄の弾丸が飛翔し、分厚い鎧に穴を穿った。


「...........すっげぇ」


「杉谷も」


そう言って差し出したマッチロックを彼は力強く握り、俺が離れたことを確認して銃弾を放った。


杉谷は銃の設計と製作を志すだけはあり、その立ち姿は流石のものだった。放たれた弾丸は鎧の眉間を貫いており、彼はその余韻に浸っているのが伺える。


「どうだった?」


「最高.... だ」


彼がそんな一言を口にしたのも束の間に、校内では下校のチャイムが鳴り響いた。


「そろそろ完全下校時刻だし、戻ろうか」


「そうだな、後のことは明日にでも話そう。来週から夏休みだし、今週中に話を詰めておきたい」


「おっけー」


先ほどまでの執着はどこへやら。潔く銃を返却した杉谷は、明日に顔を出しに来ることを念押しして、名残惜しそうに部屋を後にした。

リアクション 喜び Lv.1

ブックマーク 喜び Lv.2

評価     喜び Lv.3

感想     歓喜

レビュー   狂喜乱舞

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      作者の反応

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― 新着の感想 ―
その立ち姿は流石のものだった…レベルがいくつか判らんけど、高校生でそんな立ち姿になるほど撃ってたのかな? 主人公は隠れたいと口では言うけど、実際は途轍もない目立ちたがり屋なんだろうね? 自分から進んで…
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