10 遭難中
結構うまくいっていると思っていた。このままいけばダンジョン完全攻略できるのでは? とか、どこまで階層が続いているのかもわからないのに、そう思ったりもしていた。しかし...
「広すぎるだろぉぉぉぉぉ!」
声が森中にこだまする。すると、今では見慣れたオークたちがぞろぞろと集まってきた。
「プギアッ」
「グボウ」
「また無職オークだけか、ついてないな」
【鎌鼬】
スキルを発動した瞬間、すべてのオークの首が刎ね飛びそのまま消えた。
「レベルは... 変化なしと」
この階層に来てから約二か月半。オークやほかの魔物の肉などの自然の恵みで生きられはするものの、59階層への黒い門は見つからず、最近はレベルも上がりにくくなってきた。
たまに現れる、名前にジョブが入ったオークを倒せば少しは上がりやすいものの、その出現率もオーク百体に一体ぐらいしかいない。それに、他の魔物もいるにはいるが、基本的にレベル100以下で論外だ。
【解析】
⇒ 【種族】人間 Lv.312
【Name】 早川誠
【天職】 忍者 Lv.17
【状態】-
【称号】 探索者(茨城ダンジョン:58階層)
格上喰い 虐殺者 オークスレイヤー...
◇ 能力値
HP 1933/1933 MP 2223/2187 SP 1982/1982
筋力 2060 魔力 2273 耐久 1771 敏捷 2755
◇ 耐性
⇒耐性
精神異常耐性(S)Lv.22 寒暑耐性(B)Lv.18
物理耐性(C)Lv.7 苦痛耐性(D)Lv.6
◇ 種族スキル
人智の加護(B)Lv.-
◇ 職業技能
⇒忍者(A) Lv.17
神出鬼没(A)Lv.3 超感知(B)Lv.4
影魔法 Lv.2 - 影鎧(C)Lv.3
暗殺術 Lv.3 - 隠密(C)Lv.4 奇襲(E)Lv.11
忍術 Lv.5 - 空蝉(B)Lv.3 遁走(E)Lv.9
◇ スキル
・武技スキル
⇒ 短剣術
多重連斬(B)Lv.7
天穿(A)Lv.3 投擲(D)Lv.5
⇒ 移動術
天駆(B)Lv.3 跳躍(E)Lv.6
・魔法スキル
⇒ 雷属性
雷霆万鈞(A)Lv.4 過充電(B)Lv.5
雷撃(C)Lv.7 纏雷(C)Lv.1
⇒ 風属性
風翼(B)Lv.2 鎌鼬(C)Lv.15 up! 纏風(C)Lv.3
・特殊スキル
⇒パッシブ
修羅(EX)Lv.1 魔力自在(S)Lv.5
魔力回復(A)Lv.7 韋駄天(A)Lv.4
超五感(B)Lv.5 直感(C)Lv.2 罠発見(E)Lv.1
⇒アクティブ
式神作成(EX)Lv.1 解析(S)Lv.3 伏魔殿(S)Lv.2
魔力糸(A)Lv.7 覇気(A)Lv.1 形代封印(B)Lv.4
罠作成(C)Lv.17 罠解除(D)Lv.2 料理(E)Lv.13
かなりスキルは増えたし、レベルも上がった。既に俺の強さはこの階層ではもう負けなしといったレベルにまでなっている。というかむしろ、今の俺が戦っているのは孤独と不安といったメンタル部分だった。
それこそ最初は、夜中に就職オークに襲われて死にかけたり、呪術師オークの呪いによる幻覚で自傷行為に走ったりもしていた。しかし、己の死という現実から目を背け続けて、生き延びるために戦闘に没頭することで、今やすっかりダンジョン暮らしに適応できている。
むしろ最近はモンスター狩りよりも、料理や工作を多くしているくらいだ。というか、そんな人間的な行為をしていないと、自身の人間性が欠落していくような気がしてならない。
変化のない日常は、それだけで人の精神を狂わせる。なので、そろそろこの階層を抜け出したいところだ。
「なあクズノハ、この階層で特別強い魔物っていたりするか?」
「う~ん 一体 オーク将軍という魔物がおります。しかし..」
「何か問題があるのか?」
「はい。一か所にずっととどまっているので、行くことは容易なのです。ですがこの階層には一体しか存在しないので、強いオークを狙い続けたほうが効率はいいかと」
一か所にとどまっている... 一体だけ?
「そいつ、この階層のボスだったりしないか?」
「なるほど! つまりその周辺に出口があると」
「場所はどの辺?」
「小川を上りきった後、西に50キロほど行ったところです」
「わかった。それじゃ二人とも入っててくれ」
【伏魔殿】
このスキルはレベルが300になったときに獲得したスキルであり、本当は敵を誘い込んだ後で式神に襲わせるといったような罠タイプのスキルなのだろう。しかし、ゲームでいうところのハウジングのようなことができるので、今では事実上の拠点となっている。俺の中でのお気に入りのスキルの一つだ。
そして、フェルとクズノハは順番に現れた空間の裂け目の中に入っていく。
【神出鬼没】
このスキルも結構便利なもので、一時的に姿が見えなくなり、敏捷が強化されるという効果がある。
そうして小川に沿って丸石でできた河原を疾走する。今は敏捷 6000ほどのスピードで走っているので、はたから見れば銃弾よりも早いのでは? とか考えていると、次第に小川が細くなり、ついには見えなくなった。
「ここから西に50キロか」
大体の距離は把握しているので、木々の上を認識すら追いつかない速度で駆け抜ける。感覚的には30秒くらい走れば50キロだ。そして、あたりを見回すと微かに息をするような音が聞こえてくる。
【隠密】
スキルで気配を消しながら声のするほうへ向かっていくと、その息の主はすぐに見つかった。
「デカいな」
そのオークはかなり大きく、体躯は5mは超えているだろう。全身を漆黒の鎧で覆っており、血のようにどす黒い斧を腕に抱えて爆睡していた。
...こういう時は、寝込みを襲うに限るよな。
一部スキルの名称と効果を変更しました。




